テラーノベル
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春の夕方、窓の外がオレンジ色に染まっていく。
高梨咲は、制服のままキッチンに立ち、煮込みかけの鍋を木べらでかき混ぜていた。
「ただいまー!」
玄関から兄の声が響く。
「おかえり」
咲は声を返し、慣れた手つきでテーブルに茶碗を並べる。
兄はいつものようにリビングに鞄を置き、テレビをつけながら「ふーっ」と大きなため息をついた。
咲は「今日も疲れてるな」と思いながら、そのまま夕飯の支度に戻る。
――ピンポーン。
突然、玄関のチャイムが鳴った。
兄が呼んだ友達でも来たのかな?と思いつつ、咲はエプロンの裾を握りしめながら扉を開ける。
そこに立っていたのは、背の高い人影。
少し伸びた前髪の隙間から、懐かしい眼差しがのぞく。
「……久しぶりだな、妹ちゃん」
一ノ瀬悠真。兄の友人で、咲の初恋の人。
予想もしていなかった再会に、胸の奥が一瞬で熱くなった。
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