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帰り道。街灯の下、白い息が二人の間に揺れていた。
「……さっきの、夢じゃないよね」
心の中で呟いた咲の頬は、冷たい空気のせいだけではなく、熱で赤く染まっていた。
隣を歩く悠真は、いつも通りの落ち着いた横顔をしている。けれど――
(ほんとは、少し照れてる気がする)
そんな気配を感じて、胸が温かくなった。
家の前に着いたとき、悠真がぽつりと言った。
「……じゃあ、またな」
短い言葉。けれど、今までと違う響きに聞こえた。
咲は小さく会釈をして、玄関へと駆け込む。
扉を閉めた途端、胸の奥が弾けた。
「……クリスマス、悠真さんと……」
その言葉を反芻しながら、咲は頬を両手で覆った。
冬の静けさの中、彼女の心だけが確かに騒いでいた。