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遠い南の島へいる貴方へ
そちらは今、どんな状況ですか
私達の方は空襲で家がやられ、住む所食う所に困っております。
お義母さんが空襲で怪我をおってしまいました。
お国のために闘っている貴方に心配はかけたくないとおっしゃっておりましたよ。
貴方の元へ届くかもわからないこの手紙
きっと海に沈んでしまうでしょう。
貴方の帰りを待っております。
妻 光子より
1941年 太平洋戦争開始
戦地に行く夫を見送るのはきっと、人生で2番目に辛いことだ。
1番はもちろん、夫が帰らぬ人となること。
大きくなったお腹を撫でながら、夫のことを考える。あの人は、食うに困っていないだろうか。怪我をしてないだろうか。まずまず、生きているかもわからないが。考えなければ狂ってしまいそうなこの世界、考えることを辞めればきっと死んでしまうわ。
「あ、蹴った」
お腹にトンっと衝撃が走る
妊娠7ヶ月の私を置いて、夫光圀は戦争へ行ってしまった。私は比較的につわり等は少なく弱い。だからまだ1人でもやっていけるが、身重なゆえ、最近は長距離の移動が辛い。だが、そんな私なんかお構い無しに降ってくる米軍の空襲、それで一体何人死んだのだろう。お義母さんは足に怪我を負ってしまい、義姉と共にいる。お義父さんは随分昔に戦争で無くなった。私の父もだ。母は病気で死んだ。天涯孤独の私に手を差し伸べてくれたのは光圀さんだけだった。
そんな彼にも招集がかかった。お義母さんは喜んでいた。なにせお義父さんの死因を模した手紙にはこう書かれていたらしい
敵の銃弾が無数に飛び交う前線を
勇猛果敢な和田上等兵は
銃剣を持ち、皆を率いながら敵陣へ突撃
見事4人の敵兵を倒し敵塁を突破するが
その際不幸にして心臓に弾丸を受け
天皇陛下万歳三唱と共に
国のために壮絶な最後を遂げる。
光圀さんはこれを信じ、父のように勇敢な兵士になりたいと常々言っていた。
だけど私は知っている
これはきっと嘘だ。
なぜなら同じようなことが父の手紙にも書いてあった。
遺族と、どんな亡くなり方をしたかわからないが本人の名誉のためだろう。
一見すれば国のために戦った優秀な兵士だ。
私は夫にはこんな風になって欲しくない。
生きて帰ってきて欲しい。まあ、そんなの誰でも願っていることだろうが。
夫はきっと生きて帰ってくる気は無いだろう。
「お国のために死ねるのであれば本望だ」
こんなことを言う人だ。
生きて帰ってきてよ
貴方に抱いて欲しいのよ。
私のことを、
貴方と私の子を。
ウウウーーーー
不安を掻き立てるような音、空襲の警報だ。航空機の音もする。
私は重いお腹を抱えるようにしながら、防空壕へと走った