テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
自分の部屋に戻る頃には気持ちは固まっていた。
泣いてばかりもいられない。
勝負は二人の関係が進む前に。
財布を掴んでうちを出る。
目指すはコンビニ横の薬局、の前の自販機。
いつも見てたけどあたしが買うことがあるなんて思ってもみなかった。
次の日。学校から帰るとあれをポケットに押し込んでお隣へ向かう。
玄関を開けると…よし、靴は一足だけね。
階段を上がりいつものようにノック無しでドアを開ける。
「孝介、来たよ」
「あ、あやのちゃん…だから…」
「なによ?別に座間さんもいないし、いいでしょ?」
「そうだけど…」
「今日からは孝介がかわいい彼女と上手くいくようにあたしの協力が始まるんだから」
「きょ、協力…?」
「さて、孝介はどれくらい女の子慣れしてるのかな?」
「そんなの…知ってるでしょ?あやのちゃん以外には全然…」
「でしょ?そんなんじゃすぐに振られちゃうよ?」
「そ、そんなこと…えっ?そうかな…」
よし、とりあえずすぐに断られることはなかった。
「あんたにせっかく出来た初めての…彼女なんだから。せめてすぐ振られることがないようにあたしが、鍛えてあげるわ!」
「えっ…あ、うん…じゃあ何からすればいいの?」
「そうね、あんた座間さんと手をつないだことは?」
「な、ないけど?」
「じゃあどうやって手をつなぐ?」
「それは…え〜と…手を、つないでいい?って」
「だめでしょ!そういうのは雰囲気で察してすっといかなきゃ」
「雰囲気…?そんなのわかんないよ」
「ちょっと立って?」
「あ、うん…」
「いい?じゃあ歩くわよ?」
孝介を促して部屋をゆっくりと一回り。
「こうして並んで歩くでしょ?」
あっという間に元の位置。…狭い。
「…下に行こうか」
ドアを開けて出る。すぐに階段よね。あっ。
「ほら、階段よ。手、つないでみて?」
「うん」
手をつながれる。孝介の手、大きくなってる。
「本当に危ないかはさておき、階段は手をつなぐポイントとしていいんじゃない?」
「なるほど!」
手をつないだまま階段を下りる。
「どう?緊張する?」
「うーん…しない、な」
ん〜!しないの!?
「ふ〜ん、それはよかったじゃない。いざ手をつないだ時に緊張して手汗べっとりとか嫌だもんね」
階段を下りてリビングからキッチンへ。
なによ…全然平気なんだ。
「ごめん、ちょっとお茶、もらうね?」
「あ、うん」
勝手知ったるこのうち。いつもは好きにしていいと言われてる冷蔵庫も一応断る。
はぁ、緊張する。あたしはこのあとの作戦を思ってずっと緊張してる。あたしは手汗、大丈夫だったかな?
「ありがと。じゃあ手はつなげるかもね」
嫌だけど…階段きっかけなら難しくないと思う。
「部屋、戻ろっか」
連れ立ってキッチンをあとにする。
「あっ…」
階段の下、突然手を握られる。
「階段、危ないから、でしょ?(笑)」
孝介…
「こんな狭い階段じゃ、並んで歩く方が危ないけどね(笑)」
「そうだね」
でも孝介の部屋に着くまではこのまま…あぁ着いちゃった…
さ、気持ちを切り換えないと!
コメント
1件
あやのちゃん、健気すぎる……! 自分が好きなのに、「彼女ができるように鍛える」って名目で距離を詰めるところ、切なさと可愛さが同時に来ますね。階段で手を繋ぐ“練習”シーン、「緊張しない」ってあっさり言われた時のあやのの内心の焦りがすごく伝わってきました。手汗ばっかり気にしてるのがもう……孝介の鈍感さにもどかしくなる一方で、二人だけの時間が続くことを願ってる読者の気持ちも分かります。次が気になる!