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こんばんは人類です
前回の話に予想以上のいいねが来ていて
びびり散らかしていました。
19いいねは大量判定です。
昼休みが終わっても、アメリカの頭の中には日本の顔が残っていた。
驚いたように目を丸くして、困ったように眉を寄せて、
それでも丁寧に「お願いします」って言ったあの瞬間の声。
──かわいい。
思わずそう思って、アメリカは自分で自分に笑ってしまった。
たぶん、他の誰が見ても日本は地味で目立たないタイプだ。
けれどアメリカにとっては、教室のど真ん中に立っているよりも、
窓際で静かに弁当を食べているその姿の方が、ずっと強く目に焼きついた。
「アメリカ君~! 放課後、文化祭のポスター描き手伝ってくれない?」
前の席のモブ子が声をかけてくる。
笑顔で手を振って応える。「いいよー!」
教室の誰もが、俺を“優しくて、誰にでも平等なやつ”だと思っている。
実際、そう振る舞ってきた。そうすれば、誰も嫌な思いをしない。
でも、本当は──
日本がいなかったら、こんな世界どうでもいい。
そんな考えが、一瞬だけ頭をよぎる。
自分でも驚くほど自然に、そう思っていた。
日本の小さな仕草や声の調子、指先の動き。
全部が、アメリカにとって魅力的に感じられた。
他の誰かが触れるたび、汚される気がする。
「……やば」
無意識に笑っていたらしい。隣の男子が「どうした?」と聞いてきて、
俺は慌てて「いや、なんでもねーよ!」と誤魔化す。
教室のざわめきが、妙に遠く感じた。
放課後。
モブ子たちが教室で文化祭の話をしている。
アメリカはその中に加わりながら、自然に視線を日本の方へ向けた。
日本は窓際でノートを閉じ、静かに帰り支度をしている。
誰も気づかないように、彼の指が小さく震えていた。
たぶん、昼のあの一件のせいだ。
「あいつ帰るの早くない? ポスター手伝いとか──」
モブ子が軽く声をかける。
その口調は柔らかいけれど、日本の表情がすぐに曇る。
アメリカの中で、何かが音を立てて軋んだ。
「モブ子、今日ポスターは俺が手伝うって言ったじゃん」
「え、でも日本くんも暇そうだし──」
「いいから。日本は帰してやれよ」
少し強い声が出た。
教室が一瞬だけ静かになる。
モブ子は驚いたように目を瞬かせて、それから笑ってごまかした。
「……アメリカ君がそう言うなら、まあいっか」
日本は戸惑いながら、俺の方を見た。
その瞳がほんの少しだけ揺れて、「ありがとうございます」と言った。
その一言が、俺の心に深く沈んだ。
──守ってやりたい。
──もう誰にも触らせたくない。
俺と日本の仲を引き裂こうとする奴がいるのなら、
ほんの少しでも、その輝きを曇らせるものがあるなら、
たとえそれが同じクラスの誰であっても、排除すればいい。
そう思った瞬間、アメリカの中の歯車が更にずれた音がした。