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第30話 何よりも大切な君へ
廊下を走った。
どこへ行くかなんて、考えていなかった。
ただ。
君から離れたかった。
今は、顔を見たくなかった。
涙で前がよく見えない。
何度も袖で拭っても、次から次へと溢れてくる。
どうして。
どうして俺、あんなこと言っちゃったんだろう。
💚「……ばかっ。」
誰に言ったのか、自分でも分からなかった。
君に言ったのか。
それとも、自分自身に言ったのか。
そのまま廊下を曲がったとき。
💜「……あれ?」
後ろから声がした。
俺は足を止める。
振り返ると、そこにはもふくんが立っていた。
💜「じゃぱぱ?」
💚「…………」
慌てて顔を逸らす。
💜「どうした?」
もふくんが近づいてくる。
そして。
俺の顔を見て、少し目を見開いた。
💜「……あれ?」
💜「もしかして……泣いてる?」
💚「泣いてないっ!」
反射的に答えた。
でも。
声が思いっきり震えていた。
💜「……そっか。」
もふくんは、それ以上追及しなかった。
ただ少しだけ考えるように俺を見る。
💜「…生徒会室、今誰もいないんだ。」
💚「……?」
💜「おいで。」
俺は少し迷った。
でも。
今は一人でいるより、誰かと一緒にいたかった。
💚「……うん。」
俺は、もふくんと一緒に生徒会室へ向かった。
*
生徒会室に入る。
誰もいない静かな部屋。
さっきまで走っていたせいか、息が少し乱れていた。
椅子に座る。
しばらく何も話さなかった。
窓の外を見ると、もう夕方になっている。
空が少しずつオレンジ色に染まっていた。
さっきまであんなに冷たかった空気も。
今は、少しだけ落ち着いて感じる。
俺は深く息を吐いた。
💚「…………。」
💚「……ごめんね。」
💜「え?」
💚「急に来ちゃって。」
💜「いや、俺は全然いいけど。」
もふくんは椅子に座りながら、俺を見る。
💜「……それより。」
💜「どうした?」
💚「…………」
答えようとした。
でも。
喉の奥につっかえて、言葉が出てこない。
💜「言いたくなかったら、無理に言わなくてもいいよ。」
💚「……。」
その言葉に、少しだけ肩の力が抜けた。
💚「……たっつんと。」
💜「うん。」
💚「喧嘩した。」
💜「……そっか。」
もふくんは驚いた様子を見せなかった。
ただ、静かに続きを待っている。
💚「俺……。」
💚「たっつんに、ひどいこと言っちゃった。」
💜「何て言ったの?」
💚「…………。」
言いたくない。
思い出したくない。
でも。
自分で口にしないと、前に進めない気がした。
💚「……大嫌いって。」
💜「…………」
💚「本当はそんなこと思ってないのに。」
また、目が熱くなる。
💚「俺……たっつんのこと、大嫌いじゃない。」
💜「うん。」
💚「むしろ……。」
言葉が止まる。
💚「……一番大切な人。」
それだけ言うと、胸の奥が少しだけ軽くなった。
💜「そっか。」
💚「俺、一人でもできるようになったって言われて。」
💜「うん。」
💚「それが……嫌だった。」
💜「どうして?」
💚「…………」
俺は俯いた。
💚「一人でもできるようになったのは、嬉しいよ。」
💚「前よりちゃんとできるようになったって、俺も思う。」
💚「でも……。」
ぎゅっと手を握る。
💚「たっつんがいなくてもいい、って言われたみたいに聞こえた。」
💜「…………」
💚「俺、たっつんがいないの嫌なんだ。」
言葉にすると。
思っていたよりも、ずっとはっきりしていた。
💚「一人でもできる。」
💚「でも、たっつんと一緒がいい。」
もふくんは、しばらく黙っていた。
そして。
💜「……じゃぱぱ。」
💚「ん?」
💜「…たっつんも同じだと思うよ。」
💚「……え?」
💜「きっとたっつんも同じ気持ちだよ。」
💚「それってどういう…」
💜「たっつんも多分、自分を責めてる」
💚「……」
君も自分を責めてる?
君は何も悪くないのに。
俺が全部悪かったのに。
すぐに自分のせいにするところ。
君の、優しいところ。
大好きなところ。
でも、大嫌いなところ。
💜「たっつんは、じゃぱぱに一人でもできるようになってほしかったんだと思う。」
💜「でもそれは、じゃぱぱと離れたいってことじゃない。」
💚「…………」
💜「たっつんがどういうつもりで言ったのかは、俺には分からないけど。」
💜「でも、じゃぱぱが今話してくれたことは……ちゃんと本人に伝えた方がいいと思う。」
💚「…………」
💜「『大嫌い』なんて本当はそんなこと思ってないよ。って。」
分かってる。
そんなこと自分で分かってた。
本当は、最初から分かっていた。
君が、俺のことを嫌いになったわけじゃない。
離れたいわけでもない。
君に悪気があったわけじゃない。
なのに。
君と話すのは、怖かった。
もし、話して。
また傷ついたら。
また、君を傷つけたら。
💚「……怖い。」
小さく呟いた。
💜「うん。」
💚「謝りたい。」
💜「うん。」
💚「でも……怖い。」
💜「……じゃぱぱ。」
もふくんが、ゆっくり口を開く。
💜「俺からなんでも相談部部長の君に相談があります。」
こんなときに、相談?
💚「…なに?」
💜「俺の、相談は。今、目の前にいる人が、一番『大切な人』とちゃんと話しをすること。」
💚「…え…」
思わず。
声が漏れた。
💜「もしかしたら仲直りできないかもしれない。その不安は拭えない。でも。」
💚「…」
💜「大切な人だからこそ、ちゃんと話さないといけないことってあるんじゃないの?」
💚「…………」
💜「言わなかったら、多分ずっと後悔する。」
その言葉が、胸に刺さった。
一番大切な君だから。
ちゃんと話さないと。
俺は、相談部を始めた。
困っている人の話を聞いて。
一緒に考えて。
その人の隣にいるために。
でも。
今、一番話さなきゃいけないのは――。
俺自身なのかもしれない。
💚「…………俺。」
ゆっくり顔を上げる。
💚「たっつんと、ちゃんと話す。」
💜「うん。」
💚「ちゃんと謝る。」
💜「うん。」
💚「それで……。」
一度、息を吸う。
💚「俺が本当に言いたかったことも、ちゃんと伝える。」
怖い。
まだ怖い。
でも。
逃げたままにはしたくなかった。
だって。
大嫌いなんてそんなこと本当は思ってない。
――ずっと隣にいてほしい、大好きな君だから。
💚「……明日、話す。」
💜「そっか。」
もふくんが、少しだけ笑った。
💜「じゃあ、明日だね。」
💚「ありがと。」
💜「絶対、この相談解決してね。」
💚「うん…なんでも相談部は……なんでも解決するからね…へへ。」
💜「ふふ。」
もふくんが小さく笑う。
もふくんが俺に気を遣って、生徒会室に連れてきてくれた。
話を聞いてくれた。
相談してくれた。
なら、絶対に君とちゃんと話さないと。
例え仲直りできなかったとしても。
このまま話さないで後悔するよりも絶対マシだ。
窓の外を見る。
夕暮れの空は、もうほとんど暗くなっていた。
きっと明日。
君と話す。
ちゃんと向き合う。
今度は、逃げない。
俺はそう心に決めた。
『君が、何よりも大切で、大好きだから。』
ここまで読んでくださりありがとうございます!
遅くなってしまいごめんなさい!!
今回はもふくんのお悩みです。めっちゃ優しくないですかもふくん!?でもツンデレなんで一応「相談」という名目にしてますけど笑
次回はついに…!
次回 第31話 ニコイチ ♡100↑
#からぴち
まい
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コメント
6件
もふくんナイスよ、、、(泣)じゃっぴ!行くんだぁぁ〜たっつんが待ってるよ〜
もふくん優しすぎ!じゃっぴもたっつんも頑張って!
こんばんは、寺島あおいです🌷 第30話、読みました。じゃぱぱ君が「大嫌い」って言っちゃった後悔と、「一緒がいい」という本音——その揺れ動きが胸に迫りました。もふくんが無理に聞き出さず、「相談」という形で背中を押す優しさ、すごく好きです。大切な人だからこそ話さないといけないことって確かにある。次話、ちゃんと向き合う決意をしたじゃぱぱ君を応援したい気持ちでいっぱいです。