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#からぴち
まい
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第31話 ニコイチ
一晩、ほとんど眠れなかった。
💚「……」
真っ白で無機質な天井を見つめながら、何度も同じことを考えていた。
明日、君に会ったら。
なんて言おう。
どんな顔で会えばいいんだろう。
もし、許してもらえなかったら。
もし、もう口も聞いてくれなかったら。
考えれば考えるほど、怖くなる。
それでも。
💚「……ちゃんと話す。」
もふくんに言われたことを思い出す。
――言わなかったら、たぶんずっと後悔する。
💚「…覚悟を、決めなきゃ。」
俺は、布団から起き上がった。
*
いつもの通学路。
でも。
いつものように、たっつんの家の前で叫べなかった。
少し離れたところから、家を見る。
すると。
玄関の扉が開いて、たっつんが出てきた。
💛「……あ。」
目が合う。
たっつんは、いつもより顔色が悪かった。
目の下には、うっすらとクマができている。
💛「じ、じゃぱぱ…!…あの。」
たっつんが、こっちに歩いてこようとする。
何かを言おうとしているのが分かった。
でも。
💚「……待って。」
俺は、思わず言葉を遮った。
💛「……え?」
たっつんが、動きを止める。
少し、傷ついたような、寂しそうな顔をした。
たっつんの頬に汗が一粒流れていくのが見えた。
💚「違う、そうじゃなくて。」
俺は慌てて続ける。
💚「今、ここで話すのは……嫌なんだ。」
💛「……」
💚「放課後。」
💚「部室で、話したい。 放課後『なんでも相談部』 の部室で」
💛「……」
たっつんは、少しの間、俺を見つめていた。
その顔には恐怖とも、安堵とも見える表情が浮かんでいた。
そして。
💛「……分かった。」
小さく頷いた。
俺たちは、そのまま並んで歩いた。
たっつんの歩くペースがいつもより少し遅かった。
それ以外はいつもと変わらない。
でも、いつもみたいな会話は、なかった。
ただ、隣にいるだけ。
それだけで、なんとなく分かった。
君も、俺と同じくらい。
ずっと不安だったんだろうな、って。
やっぱり俺らは、全然似てないのに。
なんなら真反対なのに。
――似てるな。
*
休み時間。
俺はもふくんと話していた。
💚「俺、今日の放課後たっつんとちゃんと話す。」
💜「…ちゃんと向き合えて、偉いじゃん。」
もふくんは俺のことを凄く気にかけてくれている。
こんなに気にかけてくれる人、他にいないだろう。
💚「…うん。」
💜「俺は、二人の仲直りを、心から応援してる。……相談者として。」
相談者として…そう後付けをされた。
💚「…へへ、ありがとう。もふくん。お悩み解決できるよう、頑張るね。」
💜「ま、まぁ…相談だしな。頑張れよ。」
――もふくんってツンデレなのかな?
*
一日が、やけに長く感じた。
授業中も、休み時間も。
頭の中は、放課後のことでいっぱいだった。
そして――。
放課後。
俺は、なんでも相談部の部室へ向かった。
扉の前で、一度立ち止まる。
💚「……」
深呼吸をひとつ。
そして、扉を開けた。
中には、もうたっつんがいた。
いつもの席に座って、俺を見る。
💛「……じゃぱぱ。」
💚「……たっつん。」
俺は、いつもの自分の席に座った。
二人で使ってきた、二つの机。
この場所で。
なんでも相談部を始めた。
最初の相談者は、君だった。
この部屋には、たくさんの思い出が詰まっている。
だからこそ。
ここで、ちゃんと話したかった。
💛「……昨日は。」
先に口を開いたのは、たっつんだった。
💛「ごめん。」
予想はしていた。
君はいつも、争い事を極端に避ける。
俺が言わなきゃだったのに。
君に先に言わせてしまった。
だからその一言に、俺は首を振った。
💚「違う。」
俺は、首を横に振った。
💚「謝らないとなのは、俺。」
💛「…え?」
💚「昨日、たっつんにあんなこと言って……。」
言葉にしようとすると、胸が苦しくなる。
💚「勝手に怒って、悲しんで。逃げて。」
💛「……。」
💚「『大嫌い』なんて……言うつもりじゃなかったのに。」
💚「本当は、そんなこと思ってない。ごめん。」
たっつんは、小さく頷いた。
💛「…そんな……そんなの、分かってるよ。」
💚「……え?」
💛「何年一緒やと思ってんねん…アホ。」
君は俺のことを分かってくれてたんだ。
そのことに俺は安堵した。
ただ、同時に罪悪感と不安も押し寄せた。
俺はずっと、君のことを分かってるつもりだったのに。
まだまだ全然君のことを分かってなかった。
なのに君は俺のことを分かってくれている。
💚「……。」
💛「じゃぱぱが、本気で俺のこと嫌いになったなんて……そんなこと思ってへんよ。」
そう言ったたっつんの声は、少し震えていた。
💛「……でも。」
たっつんは、膝の上で手をぎゅっと握る。
💛「正直……めちゃくちゃ、怖かった。」
💚「……。」
💛「俺は、本当にじゃぱぱのかと分かってるのかなって。」
💛「分かったフリしてるだけじゃないのかなって。」
全然。
俺なんかよりもずっと。
君のほうが理解してくれてるよ。
💛「でも、じゃぱぱに『大嫌い』って言われて。」
💛「俺……どうしたらええんか、分からんくなって。寂しくて。」
たっつんが俯く。
声が震えている。
俺のせい。
やっぱり、俺のせいで君が傷ついた。
誰よりも優しい君に不安な思いをさせてしまった。
💛「俺、じゃぱぱにあんなこと言うつもりなかった。」
💛「一人でも大丈夫になったって…成長したって。…ただ、それが嬉しかっただけやった。」
💛「…昔は、俺がおらんかったら何もできへんかったのに。」
💛「今は、自分で立って、自分で考えて、自分で誰かを助けられるようになって。」
💛「…ちょっと寂しかったけど…でもやっぱりそれが、嬉しかった。」
💚「……うん。」
💛「だから……。」
たっつんは、一度言葉を止めた。
💛「もう俺がおらんでも大丈夫なんやって。」
💛「そう思って……。」
💛「……勝手に、安心してもうた。」
💚「……。」
💛「でも。」
たっつんが顔を上げる。
不安そうな、寂しそうな顔。
目が少し潤んでいる。
💛「『もう俺がずっと横におらんでも』なんて……。」
💛「あんな言い方したら、じゃぱぱがどう思うか……。」
💛「ちゃんと考えれば、分かったはずやのに。」
💛「……ごめん。」
また、たっつんが頭を下げた。
俺は、そんな君を見つめた。
昨日まで。
俺はずっと、君を傷つけたと思っていた。
でも。
君も、同じくらい苦しんでいた。
ごめんね。
全部全部…俺の…せいだ。
💚「……俺さ。」
💛「うん。」
💚「たっつんがいなくても大丈夫になったって言われたのが、嫌だったんじゃないんだ。」
💛「……?」
💚「ひとりでもできるようになったことは……嬉しいんだと思う。」
💚「だって俺が成長したってことだし。」
💚「それにもう、たっつんに迷惑かけずに済むし。」
💛「…え?いや…俺そんなこと…思ったことないで?」
💚「え?」
💛「じゃぱぱのこと、一度も迷惑なんて思ったことない。なんならもっと頼ってほしい。もちろん、成長したことも嬉しいけどな!」
あの、暖かい優しい顔で君が言う。
もっと頼ってほしい、か。
それは俺のセリフなんだけどなぁ。
💚「…そっか」
💛「……。」
💚「…確かにひとりでできるようになったことは…嬉しいよ。」
💚「でも。」
俺は、机の上に置いた手を握った。
💚「一人でできることと。」
💚「たっつんがいなくてもいいことは、全く違うんだよ。」
💛「………っ」
たっつんが目を見開いた。
でもすぐにあの表情に戻った。
たっつんの手をぎゅっと握る。
💛「え…?」
💚「俺、一人でも歩けるようになったよ。」
💚「でも……。」
たっつんと目を合わせる。
昨日、言えなかった言葉。
今度こそ。
ちゃんと伝える。
💚「俺は、君と一緒に歩きたい。」
💛「……。」
たっつんは、何も言わなかった。
ただ、目を伏せて。
小さく息を吐いた。
💛「……俺も。」
💚「……え?」
たっつんはちょっと照れたように、目を軽く伏せた。
長いまつ毛の下で、たっつんの顔が赤くなっているのが見えた。
💛「俺も、君と一緒に歩いていたい。」
たっつんがゆっくりと目を開く。
――その言葉を聞いた瞬間。
胸の奥が、少しだけ軽くなった。
なんだ。
やっぱり、君も同じ気持ちだった。
向日葵色に輝く、綺麗な瞳が俺だけを見ている。
なぜか心臓がドクン、と音を立てた。
ずっと握ったままだったたっつんの手が、少し汗ばんでいる。
💚「……たっつん。」
💛「……なんや?」
💚「俺らってさ。」
💛「うん。」
💚「……二人で一つ、でしょ?」
💛「……。」
たっつんがピクッと、少しだけ反応した。
💚「だってさ。俺にないものは、たっつんが持ってて。」
たっつんの目だけを見る。
なのに、たっつんが少しだけ目を逸らした。
💛「……俺にないものは、じゃぱぱが持ってる。」
💚「うん。」
俺は、少し笑った。
💚「俺らって、ほんと凸凹だね。」
💛「……そうやな。」
💚「性格も…頭の良さも…顔も…ほとんどが真反対なのに。」
💛「うん。」
💚「それがパズルみたいに綺麗にハマって……。」
💚「なんか、すごくない?」
💛「……ほんまやな。」
たっつんも、少しだけ笑った。
昔からずっと変わらない。
君のその笑顔がやっぱり大好きだ。
その笑顔を見た瞬間。
ずっと胸の中にあった怖さが、少しずつ消えていく。
もう、大丈夫なのかもしれない。
そう思った。
💚「……たっつん。」
💛「ん?」
💚「昨日、言えなかったけど。」
💚「俺、たっつんが……何よりも大切だよ。」
💛「……。」
💚「これからも、ずっと。」
💛「……うん。」
たっつんは、嬉しそうに、眩しそうに、目を細めた。
💛「俺も。」
短い言葉。
それだけなのに。
十分だった。
しばらく、二人とも何も言わなかった。
でも。
昨日までの沈黙とは違う。
今は、ただ静かなだけだった。
気まずくない。
怖くない。
ちゃんと、隣にいる。
💚「……仲直り、できた?」
💛「……今さら聞くんか?」
💚「だって……。」
💛「…できたんやない?」
💚「……そっか!」
思わず、笑ってしまった。
たっつんも笑った。
昨日まで、あんなに遠く感じたのに。
手を伸ばしても、手が届かなかったのに。
今は。
ちゃんと、いつもの距離だった。
手を、握っている。
*
それから、俺らは部室を出た。
今日は珍しく依頼は来なかった。
いつもならちょっとしょげてたけど、今日に限っては良かったかもしれない。
外は、もうすっかり暗くなっていた。
冬が近づいているせいか、日暮れが少し早く、風が冷たい。
💚「さむー…い…。」
💛「お前、寒いの苦手やったっけ?」
💚「苦手だよ!」
💛「へへ、知っとる。」
💚「じゃあなんで聞いたの!?」
💛「なんとなく。」
💚「なんだそれ!」
久しぶりに、いつものやり取りをした。
💛「しゃーないなぁ。はい!」
たっつんが手を差し出してくる。
指先が赤い、その手を握る。
…冷たい。
💚「たっつんだって寒いの苦手なくせに。」
💛「…バレた?」
たっつんが楽しそうに笑う。
💚「…いや、知ってた。」
くだらない。
だけど。
なんだか、すごく嬉しかった。
校門を出て、いつもの帰り道を歩く。
二人の歩く速度は、いつの間にか揃っていた。
俺はもう、ひとりでも、歩けるようになった。
もう、誰かに手を引いてもらわなくても。
なんなら、俺が誰かの手を引くこともできるようになった。
自分の足で。
自分の力で。
前に進める。
でも。
隣を見る。
そこには、いつものように笑う君がいる。
やっぱり。
一緒がいい。
ひとりでも進める。
でも君と一緒なら。
もっともっと。
ずっと遠くまで行ける気がした。
きっとこれからも。
俺たちは、これから先も、何度だってすれ違う。
もしかしたら喧嘩だってまたするかもしれない。
それでも。
君とちゃんと話して。
君とちゃんと向き合って。
また隣に戻ってくればいい。
だって。
俺たちは――。
凸凹で。
真反対で。
それでも、ぴったりとハマる。
ふたりで一つ。
そんなふたりだから。
――その夜、もふくんから大量のメッセージが来た。
『ちゃんと話せた?』『たっつんのほうどんな感じだった?』『仲直りできた?』『ねぇ返信遅い!』
ちゃんと話して、仲直りできたことを伝えたら、凄く喜んでくれたのは言うまでもなかった。
ここまで読んでくださりありがとうございます!
これでもふくんのお悩み編終了です!
じゃぱたつの喧嘩は絶対書きたかったシーンの一つで、書いてみました!
自分で書いた文書なのに途中感情移入しすぎて大変でした笑
まあ多分ちゃんとかけたのでOKです!
今回も本家様の曲をイメージしてみました!
もふくんのお悩みなんですけど、じゃぱたつメインなので、もふくんのお悩みはもう一回書く予定です!
次回 第32話 部長らしく ♡100↑
コメント
6件
もう泣く😭傑作すぎ感動🥺
言い忘れてました!!一応本家様の配信の内容も参考にさせていただきました!「俺にできないことは〜」の会話のところです!
うぅ、感動(泣)本当に良かったぁ~、途中から薄々曲っぽいとは思ってたら曲だった、、、これからメシ☆にしか聞こえなかった、違かったらすみません