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インプの車内ではお互いしんみりしていたのに、宮本のアパートに入った瞬間から貪り合うように抱きしめ合った。橋本の着ている服を、破りそうな勢いで宮本に脱がされ、浴室に放り込まれて――。
「はぅっ……あっ、あっ」
こんな場所だからこそ、いつも以上に響く声が、橋本自身の羞恥心をここぞとばかりに煽りまくった。
「雅輝っ、おまっ、乱暴だ、ぞっ! んあっ」
水を張ってないバスタブの中へ押し込められ、逃げ場を失った躰を貫くように宮本が容赦なく腰を動かすせいで、どうしても喘ぎ声が出てしまう。
「陽さん、すごく感じてるでしょ? 俺のに絡みつけるように締めてくる」
「そんなに激しく突くなっ、も、もっとゆっくりぃ!」
「そうしたら、陽さんが激しく腰を動かすくせに。最近わかったんだ。ココが気持ちいいでしょ」
宮本に跨る形で抱きしめ合っているところを、橋本の上半身を引き剥がしてバスタブに持たれかけさせるなり、強引に腰の角度をつけた。
「なっ、何を!?」
慌てる橋本を尻目に、宮本は両膝をぐいっと持ち上げて、最奥を狙うように打ちつけはじめた。
「そんな、奥突いちゃぁっあ! だめだっ、壊れっ、やあぁっ…あっ、はあっ」
ヤル気満々だった宮本が浴室に持ち込んだローションの滑りが良すぎて、グチュグチュという卑猥な音が鳴った。
「陽さんの、いつもよりキツい。そんなに締めつけて、俺をイカせたいの? ナマでしてるから、すごく感じさせられてる」
「やめ、んっ、ぁっ! こらやめろ、ばか!」
橋本のモノが、今にも弾けそうになっていた。互いの躰を洗っている最中に、少し触れられただけで、それ以降はまったく触れられず放置されていたのに。
「雅輝っ、もうそれ以上入らないってば、ん、ひっ、動くな! ぁっあ!」
「陽さんを俺のでイカせるまでは、動きを止めない。たくさん感じて、ほらほら」
「あっ、あっ、あぁっ! そんなのっ、ひとりじゃぃ、いや、だっ」
橋本が勢いよく首を横に振って拒否しても、宮本の腰の動きは止まらなかった。目をぎらつかせながら舌なめずりをしている姿は、峠のコーナーを攻めるときに見覚えのある顔で、この状態になっている恋人の止める方法を、橋本は知らない。
「俺もすぐにイクから、我慢しないでイって。陽さんがいっぱいイクところを見せて」
しつこいくらいに中をぐりぐりされたのがきっかけとなり、どうしても我慢できなかった。
「あ……やぁっ、あああ! ぁっ、あっ、いっ、イクぅぅっ!」
突き上げられた衝撃をそのままに、自身から噴水のように白濁を飛び散らせた。表現しようのない快感を感じながら乱れる息をそのままに、だらだらと溢れ出る先端を意味なく眺める。
橋本の意思とは関係なく、呼吸をするようにくぱくぱ動くそれは、絶頂を貪っているように見えた。
「恥ず……」
久しぶりだからといって乱れすぎた自分を思い返しながら、橋本が上目遣いで目の前を見ると、はにかむように微笑む宮本と目が合う。
「はじめて俺のでイったところが見られて、すっごく嬉しい。陽さんの中、さっきからヒクついて、熱くて蕩けそうだよ」
「雅輝、まだイってないんだろ?」
橋本の掠れた声が、浴室に響いた。ずっと喘ぎっぱなしだったことを自分の発した声で改めて知り、余計に恥ずかしくなる。
「まだイキたくないです。陽さんが感じてるのを実感したいから」
「どんだけ感じさせたいんだよ。挿入されてる身にもなれ」
イったばかりなのに、いつもより大きくて硬い宮本のモノがちょっとでも動くだけで、ふたたび躰に火がつく気がした。
「つらいの?」
「……気持ちよすぎてつらい」
直視される視線を避けるべく、橋本は横を向いてやり過ごしながら告げた。同時に開かされっぱなしになっている両膝に力を入れて、ちょっとだけ閉じてみる。
こんなことで、自分の放出した白濁が隠せるわけがないのをわかっているけれど、粗相をしたような恥ずかしさがあって、隠さずにはいられない。
「陽さ、それっ、締まるしまる!」
途端に、宮本が苦しそうな表情を浮かべた。
「は?」
「それに、アングル的にはこうして微妙に隠されたほうが、すごくクるっていうか。俺が腰を引くと、なぜだか陽さんがちょっとだけ腰を押すでしょ。恥じらっているのに、ちゃっかりそういうのをするのが、エロく見えるんです」
普段はわかりにくい説明をするのに、こういうコトに限って誰でもわかる説明をするので、橋本の羞恥心をここぞとばかりに煽る。
「雅輝そういうの、わざわざ克明に解説するなよ」
すりりと膝頭を合わせて、自分なりに恥ずかしさをアピールしたというのに、照れる橋本の姿を目の当たりにするなり、宮本は目じりを下げてでれでれしだした。
「陽さんってば、これだから目が離せない。かわいすぎます」
「うっせぇぞ、クソガキ。可愛いって言うな」
顎を引きながら睨みつけた橋本を、宮本はねずみを襲う猫の目のようにじっと見つめる。その視線で何かされることを察知し、背筋がぞくっとした。
「ちょっ、やっ、変な目で見るなって」
視線を泳がせて慌てふためく恋人を見て、両膝を割るように容赦なく躰を突進させる。寄せられた宮本の顔の近さに、逃がしていた目線を合わさざるを得ない。
「中でイったら、陽さんはどんな顔になる?」
「なっ!?」
「知りたい、もっと深く繋がりたい。貫いて……奥の奥まで貫いてイったら、陽さんのすごく変わりかわいい姿が見られるのかな?」
熱に浮かされた病人のような表情の宮本を前にして、止めろとは言えなかった。だって――。
「おまえが望むのなら、どんな願いだって叶えてやる。中でイってもいいぞ」
腹を下す可能性があっても、好きな男の願いを叶えてやりたいと思った。
「だったら、俺が後始末をしてあげる」
宮本はつらそうな表情を見せながら、どんどん腰を押し進めた。橋本の腰を両手で掴んで固定し、容赦なく突き上げる。
「おまえがやったら後始末にならないだろ、馬鹿だな。んんっ……」
イったばかりなのに、イイトコロを擦られるせいで、感じずにはいられない。突くたびにぬちゃぬちゃというローションの音が鳴ったが、それすらも気にならなくなってきた。
「自分が出したモノの後始末くらいさせて、っうぅっ、くださいよ」
「させるか、よっ! んっ…は…ぁっ」
(もっと感じたい――大好きな雅輝と一緒に感じまくりたい)
「だったら、陽さんが後始末しているところ見ながら、後ろから襲ってあ、げるねっ」
こうやってと言うなり、胸に顔を埋めて乳首を甘噛みする。最初はくすぐったかったのに、うずうずする快感を味わった。
「うっ後ろからココはっ、そうやって責められないだろ。んぁっ!」
感じる橋本を見ながら、宮本はその部分を舌先を使って執拗にペロペロ舐める。
「はぁっ……ああっ、ぁ……」
「陽さんは指でされるよりも、舌で愛撫したほうが感じるでしょ? このあと後ろ向きでここを責められないから、今のうちにやっておこうと思って」
「だからってっ、そんなにぃ…あっ、ん!」
「責めれば責める分だけ、感じた陽さんの中が俺のを締めつける。くうぅっ! 自分の首を絞めてるのがわかってるのに、陽さんを感じさせたくて、責めずにはいられない」
「ん、ふ、あぁ……やっぱりおまえは…うっ、ドМだな」
「っ、んっ! 中で出すよ……陽さんの中でぃっ、いっぱい!」
宮本はギアをトップに入れたエンジンのように腰の動きを加速させてから、弓なりに躰をしならせる。
「熱っ――んっ…は…ぁっ」
宮本自身から勢いよく放たれた熱を、直に感じた。どくどくと吐き出されるモノの熱と量は、想いと比例するかのようで――。
「雅輝っ、気持ちいぃっ!」
「陽さん……」
ぶちまけられる快感をそのまま表現したら『気持ちいい』だけど、本当はそうじゃなかった。好きな男が自分の躰で感じ、イカせることができて幸せだった。愛し合うことの、本当の喜びを知った気がした。
息を切らして脱力している宮本に向かって、橋本は両腕を伸ばした。微笑みながら近づいてきた顔を引き寄せて、触れるだけのキスをする。
「陽さん、どうしよ……。気持ちよすぎて、躰が痺れてる」
「俺が口でしたよりも、気持ちよかっただろ?」
宮本が欲しくて堪らなかったため、躰を洗い終えるなり、橋本はいきなり口淫した。感情の赴くままにしたら、あっけなくイったのだが、こんなに早くイクとは思ってもいなかったせいで、顔射されてしまった経緯がある。
「そんなの、両方気持ちいいに決まってるのに。というか、陽さんエロすぎます。お蔭で、すごく頑張らないといけないですって」
橋本が反論するのがわかったのか、宮本自ら唇を塞ぎにかかる。ひとしきり宮本からのキスを受け続けた後に、反論すべく口を開く。
「雅輝にだけ、このエロい姿を見せてるんだぞ。ありがたく思えよな」
「まったく。それを言われちゃうと、何も言えなくなるでしょ」
苦笑いで告げられた宮本の言葉が嬉しくて、橋本は反射的に微笑んだ。
「このままもう1回、シてくれないか」
「でも寝る時間が……大丈夫なの?」
「寝ちまったら、おまえと一緒にいることがわからなくなる。少しでも長く感じていたいんだ。傍にいることを」
今晩から4日間逢えなくなる寂しさを、橋本なりに言葉にしてみた。
「運転に支障が出ても、助けられないですよ」
憂わしげな表情を浮かべた恋人を見つめながら、首を横に振る。
「あくびは出るかもしれないが、運転くらい完璧にこなすさ」
プロのドライバーの意地を見せたのに、宮本の顔は心配で堪らないという雰囲気を醸した。
「ハイヤーのドライバーシートに座っていられないくらいに、腰を砕かせちゃう勢いで、ヤるかもしれないのに?」
気に病んでいる感じを出しているくせに、大胆なことを言う宮本に内心呆れ果てる。それともこのまま終わらせようと考えた、宮本なりの脅し方なのだろうか。
「それは勘弁だな、ほどほどにしてくれ」
「無理ですよ、手加減できるわけがない。大好きな陽さんを相手にしてるんですから」
宮本お得意の大好き攻撃をしてきたところで、あることが閃いた。
「峠のコーナーと俺、どっちが好きなんだ?」
宮本が困るであろう究極の選択をしてみたら、途端に勝ち誇ったように目をキラキラさせる。
「そんなの、責めごたえのある陽さんに決まってるのに。質問しながら、俺のを締めあげないでください。痛気持ちいい」
「なぁ、それって文句なのか?」
「どっちに聞こえます?」
「質問で返すなよ。答えになってない」
痛いと言いつつも、まんざらでもない感じを、宮本は腰を打ちつけて橋本に知らしめた。
「陽さん、わかってるくせに」
「わかっていても、おまえのことなら何だって知りたいんだけど」
「教えません。ふたりきりのときくらい陽さんには、俺のことだけを考えて欲しいから」
先ほど宮本が出したモノが混ざったせいで、橋本の下半身がぐちゃぐちゃになっていた。自分が出したモノと、下半身周りの気持ち悪さよりも、与えられる快感が勝って、思わず喘ぎ声をあげそうになる。
「んんっ……意地悪しやがって」
「たくさん意地悪して、気を惹こうとしてる俺の気持ちを、少しは知ってくださいよ」
「ホント馬鹿だな。ん、ぁ……っ、そんな無駄なことをする必要ないのに」
内に秘めた想いを見せることができないのは、すごく残念なことなれど、それはそれでいいと思った。見えない分だけ、宮本が自分を求めてくれることがわかっている。
橋本がなかなか告げられない『大好き』という言葉を使って、ここぞとばかりに求めてくれる。
「だって、全然足りないんです」
「うぅっ! いきなりっ!? もはや復活したのかよ……」
中にある宮本自身の質量が、ぐぐっと一気に増したのを直に感じた。お蔭で橋本の感じやすい場所へ、ダイレクトにそれが当たってくる。
「復活するに決まってるでしょ。喋るたびに陽さんってば、ぎゅんぎゅん俺のを締めるから」
「くっ! そ、それは腹に力が入れば、必然的にそこだって締まるだろ」
「俺だけじゃなく、陽さんのだって完勃ちしてる。本当にエロいですよね」
「雅輝にだけは、それを言われたくないっ。んあっ!」
「いっぱい感じてくださいね」
「は、ぅっ残念ながら、蕩けそうなくらいに感じてる」
宮本に感じさせられているせいで、出したくない喘ぎ声をさっきからずっとあげていた。いつもより掠れ気味になっている!橋本の声を聞いた愛しい恋人が、嬉しそうに微笑みかける。
「その声、耳が孕みそう」
「だったら孕ませてやるよ。おまえが好きだ、雅輝……」
「俺も大好き。陽さんが好きで堪らない!」
深く繋がったまま交わされる愛の言葉をきっかけに、顔を寄せ合いキスをした。キスすること自体はじめてじゃないのに、なぜだか痛いくらいに橋本の胸がぎゅっと締めつけられた。
「雅輝っ、まさ、き……」
息継ぎするように、好きな男の名前を呼び続ける。両腕に思いっきり力を入れて、宮本の躰を抱きしめた。触れ合っている部分から熱が伝わり、橋本の体温を更に上げる。
「陽さん……陽さ――」
求めた分だけ、自分の名前を呼んでくれる宮本を、もっと好きになった。コイツだけは絶対に手放したくないと、強く思った夜になったのだった。
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