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10月21日―――名探偵の誕生日
建物の5階、探偵社にて
探偵社員「乱歩さん、誕生日おめでとうございます!」
乱歩「やあやあ皆ぁ!ありがとね!僕もう26歳だ!」
与謝野「一番年上だねぇ」
乱歩「社長を除いたらだけどな!」
福沢「それは…まあ…その通りだが…」
乱歩「いやぁ、素敵帽子くん!来てくれてありがとね」
中也「ああ、まあ、暇だったし」
ホントは来たくなかったけどな。太宰が俺じゃないやつと笑ってる。楽しんでる。其れがたまらなく妬ましい。
太宰「乱歩さん!誕生日プレゼントです!」
乱歩「なんだ?お菓子か?ラムネか?」
太宰「両方です!あと…」
太宰「これ…あの…乱歩さん何が欲しいかわからなくて…その、、」
乱歩「ハンカチ?お!猫とラムネが描いてある!可愛い!」
太宰は満面の笑みを浮かべる。それは決して、俺に向けられたものではなかった。まあ、知ってはいたけどな。
太宰「そうでしょう!もうずっと悩んで選んだんですから!」
乱歩「そうなのか!でも…何でそこまで?」
太宰「それは…えっと…」
この先は聞きたくない…もう帰ってしまおうか…
太宰「乱歩さんの事、す……すごく尊敬しているからです!」
乱歩「そんなの知ってるけど?」
太宰「だからですよ!改めて言うのが恥ずかしいから、こういう機会に…」
嗚呼…太宰は嘘をついている…恥ずかしがってんのか?まあ、今太宰の口から聞かなくて良かった…と思おう…
太宰は俺の気持ちに気付いていない。何にも知らないで、俺の前で幸せそうに笑う。其の横顔を黙ってみている。
これが、今の俺の最大に許される最大の’’幸せ’’
誕生日会が終わった。皆はしゃぎ疲れ、当の乱歩は寝ていた。
中也「じゃ、俺、このあと仕事あるから帰るな。」
太宰「あぁ、送るよぉ」
中也「本当か?なら…ま、来てくれてもいいけどな」
太宰「何それ、別にいかなくても善いのだけれど」
中也「厭!き、来てくれても…あ、厭、送って…呉れ」
太宰「なんか今日の蛞蝓気持ち悪ぅい」
中也「う、煩ぇな…」
太宰「ま、いいや。早く行こ」
太宰「〜〜〜〜でね、その時乱歩さんがなんて云ったと思う?」
中也「……知らねぇ」
太宰「『僕が悩んでいたのは夕飯のことさ。この事件は退屈だからね、すぐに解けてしまったよ』って!皮肉が聞いてて、そのうえかっこよくて!私も云ってみたいなぁそんな事…」
こいつが今しているのは、俺の話ではない。俺が1番聞きたくない話。
でも遮らない。この会話が終わる。それ即ち、太宰の声が聞けなくなるということ。そんなの厭だから、適当に相槌をして聞いている。と云っても、聞いているのは太宰の声で、名探偵の話ではないのだが。
太宰「でさぁ、…ん?中也、どうしたの?」
中也「太宰、お前…俺になんか云うことねぇか?」
太宰「ん?(なんか中也に謝らなきゃいけないことしたっけ…心当たりありすぎて分からない…)」
太宰「な、ないかな…?」
中也「そーかよ…」
太宰「???」
やっぱ気付かねえか。まあ…帽子被ってて仕方ねぇこともあるけど。
折角今日のために…髪…切ったのになぁ…駄目か…『似合ってるよ、蛞蝓♡』って、云ってほしかった。
太宰「じゃあ、ここで。またね」
中也「おう…」
太宰は俺に背中を向け、歩き出した。太宰が離れていく。どんどん小さくなって、もう見えなくなりそうだ。
まるで心の距離の様になっていく。太宰は幸せに向かって歩いていく。
俺は、幸せに背を向け、真っ直ぐ歩き始めた。
―――――――――
そういえば云ってなかったけど、これは本誌の一年前(つまり敦くん、鏡花ちゃん、賢治くん、谷崎くんは探偵社員ではありません)です。そしてこの3話で乱歩か26歳になった10月21日なので、太宰、中也は22歳、与謝野さんは24歳、福沢さんは恐らく44歳です。(本誌の現時点の日付を存じ上げないので曖昧です)
そんな感じ。