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キルアと入れ替わってる⁉︎🩷
(途中ゴン登場)
朝の光で、×××は目を覚ました。
「……ん」
いつもより視界が少し高い。
手を動かすと、なんだか感覚が違う。
「……?」
起き上がって、目に入った手を見て――固まる。
「……え?」
それは、明らかに自分の手じゃない。
慌てて鏡を見ると、
そこに映っていたのは――キルア。
「ちょ、ちょっと待って……!?」
声を出した瞬間、
それもキルアの声で。
パニックになりかけたところで、
背後から声がする。
「……うるさい」
振り返ると、
ベッドの上に×××の姿をしたキルアが座っていた。
「……落ち着け。
たぶん、入れ替わってる」
「た、たぶんって何!?」
「俺も今起きたとこだから」
そう言いながら、
×××の姿をしたキルアは自分の手を見つめている。
しばらく沈黙。
「……鏡、貸して」
×××(中身キルア)が鏡を見ると、
少し気まずそうに目を逸らす。
「……なるほどな」
「なるほどじゃないよ!」
×××は自分の(キルアの)頬を押さえて、
そわそわする。
「ど、どうしよう……」
キルアは少し考えてから、
×××の姿のまま、ため息をつく。
「とりあえず、深呼吸」
「……」
「その体、俺のだから。
無茶すんなよ」
その言い方があまりに“キルア”で、
×××は少し落ち着く。
「……キルア」
「ん?」
「その……
変なことしないでね、私の体で」
キルアは一瞬きょとんとしてから、
すぐに顔を赤くする。
「当たり前だろ!
誰だと思ってんだ!」
「……よかった」
少し安心して笑うと、
キルアは照れたまま視線を逸らす。
「……それに」
小さな声で続ける。
「お前の体、
思ってたより落ち着かない」
「え?」
「……近いし」
意味深だけど、
それ以上は言わない。
二人はしばらく向かい合って、
同時にため息。
「……今日一日、協力な」
「う、うん……」
こうして、
ちょっと不思議で、
ちょっと距離が縮まる一日が始まった。
「……時間、やばい」
時計を見て、×××(中身キルア)が言う。
「学校、行かないとだよね……」
「行かない選択肢はないな」
そう言いながらも、
二人とも動けずに固まっていた。
問題は一つ。
「……着替え」
その言葉を出した瞬間、
二人同時に視線を逸らす。
「み、見ないからな!」
「こっちこそ!」
キルア(中身×××)は、
クローゼットから制服を引っ張り出しながら、
全力で壁のほうを向く。
「えっと……
これ、どうやって着るの……?」
「順番!順番あるから!」
×××(中身キルア)が、
声だけで必死に説明する。
「いいか、
焦ると逆に時間かかるからな」
「キルア落ち着いて!
それ今の私の体だから!」
「わかってる!!」
着替え中は、
やたらと物音だけが大きい。
ガサッ。
ドン。
……静止。
「……今、見てないよね?」
「見てない!!
天井しか見てない!!」
「……よし」
やっと制服を着終わって、
二人は同時にため息をつく。
「……朝から疲れた」
「まだ何も始まってないのに」
鏡の前に立つと、
そこには
**制服姿のキルア(中身×××)**と
制服姿の×××(中身キルア)。
二人同時に、目を逸らす。
「……変な感じ」
「……でも」
×××(中身キルア)は、
少しだけ真面目な声で言う。
「一日だけだ。
学校では、俺が俺っぽく振る舞う」
「じゃあ私は……
キルアっぽく?」
「無理すんな。
バレなきゃいい」
そう言って、
少しだけ近づいて小声になる。
「……お互い、
相手の体は大事に使おうな」
×××は少し笑って、
小さく頷いた。
「うん。
今日だけ、共同戦線」
こうして、
いつもより緊張感マシマシな登校準備が終わった。
玄関を出る前、
二人は同時に言う。
「……絶対バレないようにしよ」
通学路を並んで歩きながら、
×××(中身キルア)はやけに落ち着かない様子だった。
「……なあ」
「なに?」
キルア(中身×××)が聞くと、
×××は少し真剣な顔で言う。
「これさ……
歩くたびにスースーするんだけど」
「……あ」
一瞬で察して、
キルアは吹き出しそうになるのを必死でこらえる。
「それ、スカートだから」
「いや、頭では分かってるんだけどさ!」
×××は小声で続ける。
「風の感覚がいつもと違いすぎて……
落ち着かない」
「慣れて。
普通に歩いてれば大丈夫だから」
そう言いながら、
今度はキルア(中身×××)が周りを見渡して言う。
「……ていうか」
「ん?」
「目線、高い」
×××(中身キルア)が一瞬止まる。
「……あ」
「いつもより、
遠くまで見える」
信号も、標識も、
ちょっと違って見える。
「それ、俺の視界な」
「不思議……
世界変わって見える」
二人は同時に少し笑う。
「お互い、違和感だらけだね」
「だな。
一日もつかな……」
そう言いつつ、
歩くスピードを自然に合わせる。
「……あ」
×××(中身キルア)が小声で言う。
「転ばないようにしろよ。
その体」
キルア(中身×××)も、
同じトーンで返す。
「そっちもね。
スースーしてるからって
変な歩き方しないで」
「……努力する」
朝の道、
ちょっと違う体、
でも並んで歩く感じだけは、
いつもと同じだった。
体育の時間。
チャイムが鳴った瞬間、
二人は同時に顔を見合わせた。
「……更衣室」
「……無理だな」
中身が入れ替わったまま、
それぞれ本来の更衣室に入るのはさすがに危険すぎる。
周りに気づかれないように、
二人は先生に理由をつけて、
使われていない空き教室に向かった。
ドアを閉めた瞬間、
二人とも一気に緊張する。
「……朝と同じな」
×××(中身キルア)が先に言う。
「絶対、見ない」
「声だけで指示する」
「触るときも、
必要最低限」
「……了解」
二人は背中合わせになる。
「じゃ、まず上からな」
「うん。
えっと……それ、引っかかりやすいから気をつけて」
ガサッ、という音だけが響く。
「……今、どこ向いてる?」
「壁。
黒板しか見てない」
「よし」
着替えは思った以上に時間がかかる。
「そのひも、
ちょっとねじれてる」
「え、これ?」
「……違う、反対側」
声だけでやり取りしながら、
なんとか体操服に着替えていく。
一瞬、距離が近づく場面があって、
二人とも同時に息を止める。
「……大丈夫?」
「大丈夫。
今の、不可抗力」
「……だよね」
やっと着替え終わって、
二人はほぼ同時にため息をついた。
「朝より疲れた……」
「体育まだ始まってないのに」
キルア(中身×××)が小さく笑う。
「でもさ」
「ん?」
「……ちゃんと信頼してないと、
これできないよね」
×××(中身キルア)は少し間を置いてから答える。
「……ああ」
短いけど、
それだけで十分だった。
ドアの外から聞こえる足音に、
二人はすぐに切り替える。
「行くぞ。
絶対バレるなよ」
「キルアもね」
秘密を共有したまま、
二人は何事もなかった顔で教室を出た。
――入れ替わった一日は、
まだまだ続く。
体育がなんとか終わって、
朝と同じようにこっそり着替えも済ませて。
昼休み。
人の少ない場所を選んで、
二人は屋上に上がった。
風が少し強くて、
空がやけに高い。
「……生き返った」
×××(中身キルア)がフェンスにもたれて言う。
「体育、
体が覚えてる動きと中身がズレてて
変な感じだった」
「こっちもだよ」
キルア(中身×××)は苦笑しながら、
お弁当を広げる。
「力の入れ方とか、
一瞬遅れる」
二人は並んで座って、
それぞれのお弁当を開けた。
「……これ、俺の?」
「うん。
朝、冷蔵庫から取った」
「へぇ……」
一口食べて、
×××は少し目を見開く。
「……意外とちゃんとしてる」
「なにそれ」
「いや、
もっと適当かと」
「失礼だな」
そんなやり取りをしながら、
少しずつ落ち着いてくる。
「……で」
キルア(中身×××)が真面目な声になる。
「原因、心当たりある?」
×××は箸を止めて考える。
「昨日の夜までは普通だったよな」
「うん。
寝る前も特に変なことしてない」
「……一緒に泊まったくらい?」
「それは毎回じゃないけど、
前にもあったし」
しばらく沈黙。
風の音と、
屋上の静けさ。
「……朝起きた瞬間、
同時だったよね」
×××が言う。
「同時に目、覚ました」
「それだ」
キルアは少し考え込む。
「もしかして、
寝てる間に何か条件が揃ったとか」
「条件……」
「例えば、
同じ場所で、
同じ時間に起きる、とか」
×××はうーんと唸る。
「じゃあ……
戻るときも?」
「同じような状況を作る」
二人は顔を見合わせる。
「……今夜?」
「たぶん」
少し緊張した空気になるけど、
すぐに×××が笑う。
「でもさ」
「ん?」
「こうやって
屋上で二人っきりでお弁当食べるの、
ちょっと特別だね」
キルアは一瞬照れて、
視線を逸らす。
「……今だけだ」
「うん。
今だけ」
そう言いながら、
二人はまたお弁当に戻る。
入れ替わったままでも、
一緒に考えて、
一緒に笑える。
屋上の昼休みは、
少しだけ穏やかだった。
夕方、家に帰ってからは
二人で手分けしてご飯の準備をして、
無事に食べ終わって。
「……で」
キルア(中身×××)が、
お風呂の前で腕を組む。
「避けて通れないよね、これ」
「……だな」
×××(中身キルア)は視線を逸らしながら答える。
入れ替わったまま一日過ごして、
もうクタクタ。
「順番に入る、は無理だし……」
「一人じゃ洗いにくい」
しばらく沈黙してから、
×××(中身キルア)が小さく言う。
「……最低限でいこう」
「うん。
目、合わせない」
「声だけ」
「変なこと言わない」
確認事項がやけに多い。
浴室に入ると、
二人とも必要以上に壁とか天井を見ている。
「……じゃ、俺が先な」
キルア(中身×××)は、
深呼吸してから言う。
「髪だけ。
それだけでいいから」
「了解」
×××(中身キルア)は、
距離を保ちながら、
本当に必要なところだけ手伝う。
「……力、強すぎない?」
「え、
これでも抑えてる」
「今の体、
それで正解」
ちょっとした会話だけで、
お互いの緊張が少しずつ解けていく。
入れ替わり。
「次、俺な」
今度は×××(中身キルア)が、
どこを見ていいかわからずに固まる。
「……緊張してる?」
「……するに決まってるだろ」
キルア(中身×××)は、
少しだけ優しい声になる。
「大丈夫。
ゆっくりでいいよ」
必要最低限、
本当にそれだけ。
終わった瞬間、
二人同時に大きく息を吐いた。
「……今日一番疲れた」
「同感」
脱衣所でタオルに包まりながら、
二人は顔を見合わせて、
同時に小さく笑う。
「……でもさ」
×××(中身キルア)が言う。
「気まずいけど、
ちゃんと信頼してないと
できないよな、これ」
キルア(中身×××)は少し照れて、
でもはっきり頷く。
「うん。
一人じゃ無理だった」
その一言で、
変な緊張は全部ほどけた。
「……早く戻ろうな」
「うん。
でもそれまでは、
ちゃんと協力」
入れ替わったままの夜は、
静かで、
でも少しだけ距離が近づいていた。
翌朝。
カーテン越しの光で、
×××はゆっくり目を開けた。
「……ん……」
起き上がろうとして、
違和感。
視界が高い。
声を出そうとして――
「……あ」
キルアの声。
「……治ってない」
しばらく、そのまま固まる。
少しして、
隣の布団からも動く気配。
「……おはよ」
×××の声で、
キルア(中身×××)が体を起こす。
二人は顔を見合わせて、
同時にため息。
「一晩寝たら戻ると思ったのに」
「甘かったな……」
枕元のスマホを確認して、
日付を見る。
「完全に次の日だよ」
「学校、どうする?」
一瞬、沈黙。
×××(中身キルア)が言う。
「……昨日よりは慣れた」
「それ言うの、
なんか複雑」
「事実だろ」
そう言って、
キルアは小さく笑う。
「でもさ」
「ん?」
「昨日一日、
一緒に乗り切れたんだし」
少しだけ、声が柔らかくなる。
「今日もなんとかなる」
×××は少し考えてから、
うなずいた。
「……うん」
布団から出て、
朝の準備。
昨日よりスムーズに動ける自分に、
またちょっと驚く。
「慣れるの、
早すぎない?」
「褒めてる?」
「……半分」
顔を洗って、
朝ごはんの準備。
昨日より会話が自然で、
目を合わせるのも少し楽。
「なあ」
×××(中身キルア)が言う。
「今日こそ、
ちゃんと原因探そう」
「うん。
このままじゃ困るし」
「でも」
一拍おいて、
少し照れた声で続ける。
「……二人なら、
大丈夫だろ」
×××は一瞬驚いて、
でもすぐに笑った。
「うん。
一緒なら」
治ってない朝。
でも、
不安よりも先に
「一人じゃない」って気持ちがあった。
時間割を見た瞬間、
二人は同時に固まった。
「……プール」
「……詰んだ」
昨日の体育どころじゃない。
更衣室は完全アウト、
しかもクラス全員一斉行動。
「これは……無理だろ」
×××(中身キルア)が小声で言う。
「昨日みたいに空き教室も使えないし」
廊下を歩きながら、
二人は必死に作戦会議。
「仮病?」
「2人同時は怪しい」
「忘れ物?」
「昨日普通に元気だった」
沈黙。
チャイムが近づく。
「……正直に言う?」
キルア(中身×××)が言うと、
×××は首を振る。
「信じてもらえない」
一瞬考えてから、
×××(中身キルア)が言った。
「……俺が先生に行く」
「え?」
「理由はぼかす。
体調と事情」
「大丈夫?」
「こういうの、
俺のほうが向いてる」
職員室前。
キルア(中身キルアっぽい話し方)で、
冷静に説明する。
数分後。
戻ってきた×××は、
小さく親指を立てた。
「……別課題」
「ほんと!?」
「保健室待機。
レポート提出でOK」
二人は同時に深く息を吐いた。
「助かった……」
プールの時間、
校舎の静かな一角で並んで座る。
窓の外からは、
楽しそうな声が遠く聞こえる。
「正直さ」
キルア(中身×××)が言う。
「これ、
一人だったら無理だった」
×××(中身キルア)は少し照れて答える。
「……だろうな」
「判断、早かった」
「経験値の差」
「なにそれ」
小さく笑い合う。
「でもさ」
×××が続ける。
「プール回避できても、
ずっとは無理だよね」
「ああ。
今日中に何か掴まないと」
二人は窓の外を見ながら、
同じ方向を向く。
入れ替わった体、
難易度の上がる日常。
でも――
一緒に考えて、
一緒に切り抜けてる。
それだけで、
少し心が軽かった。
保健室は静かで、
プールの時間だけあって人も少ない。
ベッドに並んで座りながら、
二人は昨日からの違和感を整理していた。
「同じ場所で寝て、
同じ時間に起きて、
同時に入れ替わった」
×××(中身キルア)が指を折りながら言う。
「しかも、
お互い強く意識してた日だ」
「……それ」
キルア(中身×××)が反応する。
「“条件”って、
物理的なものだけじゃないかも」
そのとき、
保健の先生がカルテを見ながら何気なく言った。
「最近、
不思議な体調の子多いのよ」
「え?」
「強いストレスとか、
感情が一気に動いたあとに
“感覚がズレる”って言う子」
二人は同時に固まる。
先生は続ける。
「まあ、
ほとんどは一時的だけどね。
環境が戻ると自然に治ることが多いわ」
「……環境」
「元の“距離感”に戻すと、
落ち着く場合もあるわよ」
それ以上は深掘りされず、
先生は席を外した。
静寂。
「……感情、か」
×××が小さく呟く。
「昨日からずっと一緒だし」
「距離、近すぎたかもな」
少し気まずい沈黙。
――そのとき。
「おーい、キルア!」
突然、
保健室のドアが開いた。
「ゴン!?」
入ってきたのはゴン。
「先生に呼ばれたって聞いたけど、
二人とも元気そうじゃん」
ゴンはキルア(中身×××)をじっと見る。
「……ねえ」
「な、なに」
「今日のキルア、
変じゃない?」
一瞬、空気が止まる。
「歩き方も、
話すタイミングも」
ゴンは首をかしげる。
「あとさ」
今度は×××(中身キルア)を見る。
「×××も、
いつもより落ち着きすぎ」
二人は視線を交わす。
――まずい。
「気のせいだろ」
×××(中身キルア)が
キルアらしいトーンで言う。
「昨日から疲れてるだけ」
「ふーん……」
ゴンは納得しきれていない顔。
「でもさ」
にっと笑って、
一歩近づく。
「二人とも、
“お互いの真似”してるみたいだよ」
核心。
「……まあ、いいや」
ゴンは一旦引き下がる。
「でも、
何かあったら言えよ?」
そう言って去っていくが、
振り返り際に一言。
「オーラ、
ズレてるからさ」
ドアが閉まる。
二人は同時に息を吐いた。
「……勘、鋭すぎ」
「ゴンだもんな」
でも、
さっきの先生の言葉が頭に残る。
距離感。感情。環境。
「……もしかして」
キルア(中身×××)が静かに言う。
「戻るには、
一回ちゃんと向き合わないと
ダメなのかも」
×××は小さくうなずいた。
ヒントは手に入った。
でも――
もう、周りは気づき始めている。
放課後。
結局――
ゴンに呼び止められた。
「ねえ、キルア」
いつもより真剣な声。
「今日、
一緒に帰らない?」
一瞬、×××と視線を交わす。
「……×××の家なら、いい」
ゴンはそれだけで察したように笑った。
⸻
×××の家。
部屋に入った瞬間、
ゴンは腕を組んで言う。
「で?」
「いつから?」
「どんなときに?」
「どっちがどっち?」
質問が止まらない。
キルア(中身×××)は観念したように息を吐く。
「……昨日の朝」
「一緒に泊まって、
起きたら入れ替わってた」
ゴンは目を丸くする。
「へぇ……
本当にあったんだ、そういうの」
×××(中身キルア)が続ける。
「条件はまだ分からない。
同じ場所、同じ時間、
あと……気持ちの問題っぽい」
ゴンはうんうんと頷きながら聞いていたが、
ふと、にやっとする。
「じゃあさ」
「着替えとか、
どうしてるの?」
――空気が一気に固まる。
「……っ」
「ちょ、ゴン!」
「いや、
純粋に気になるじゃん」
ゴンは悪気ゼロで言う。
「まさか普通に更衣室とか
入ってないよね?」
「それは……」
キルアと×××は同時に視線を逸らす。
「……工夫してる」
「最低限で」
「目、合わせない」
ゴンは一瞬きょとんとしてから、
吹き出した。
「あー、なるほど」
「めっちゃ気まずいやつだ」
「笑うな!」
さらにゴンは続ける。
「お風呂とかは?」
「ゴン!!」
二人同時に声を上げる。
ゴンは両手を上げて笑う。
「はいはい、
聞かない聞かない」
でも次の一言。
「……ていうかさ」
「昨日、
一緒のベッドで寝てたでしょ?」
「「!!?」」
二人は同時に固まる。
「なんで知って……!」
ゴンは肩をすくめる。
「だってさ、
今朝の距離感」
「完全に
“一晩一緒にいた人たち”だもん」
「オーラで分かるよ」
キルアは頭を抱える。
「……最悪」
×××も顔を赤くしてうつむく。
「言ってないのに……」
ゴンは急に真面目な顔になった。
「でもさ」
「二人とも、
ちゃんと信頼してるのは分かる」
「だから言うけど」
一歩近づいて、
はっきりと言う。
「一人で抱えないで」
「戻る方法、
一緒に考えよう」
少し間があって、
キルアが小さく笑った。
「……バレたら、
隠す意味ないな」
×××も頷く。
「ゴンだけだからね」
「もちろん」
ゴンはにっと笑う。
「秘密共有、
一名追加」
こうして――
入れ替わりの秘密は、
三人だけのものになった。
結局――
ゴンも泊まることになった。
「検証には第三者が必要でしょ?」
とか、もっともらしいことを言いながら、
顔は完全に楽しそう。
夜。
三人でリビングに集まっているだけなのに、
ゴンの視線がやたらと鋭い。
「……ねえ」
ゴンが言う。
「二人、
さっきから動き一緒すぎない?」
「え?」
×××(中身キルア)が立ち上がると、
ほぼ同時にキルア(中身×××)も立つ。
「……ほんとだ」
ゴンはにやにや。
「ほら、もうシンクロしてる」
それからの夜は、
何をするにも二人一緒だった。
飲み物を取りに行くのも、
歯磨きのタイミングも、
次何するか決めるのも。
ゴンは腕を組んで観察。
「お風呂の時間も?」
「……一応」
「一応ってなに」
二人は顔を見合わせて、
小さくうなずく。
「……離れられない」
「必要だから」
ゴンは完全に察した顔になる。
「なるほどね」
「距離も、
行動も、
意識も」
「全部“一緒”になってる」
そのあとも、
トイレに行くタイミングまで被って、
二人で同時に止まる。
「……今、思った」
×××(中身キルア)が小声で言う。
「これ、
かなりおかしい」
キルア(中身×××)も、
じわじわ顔が赤くなる。
「……ゴンに見られて
初めて気づいた」
ゴンは完全にニヤニヤ。
「うん」
「これは入れ替わるかも」
「というか、
入れ替わる条件、
ほぼ完成してる気がする」
「やめろ……」
キルアは頭を抱える。
「改めて見ると、
恥ずかしすぎる」
×××も同意する。
「なんで昨日まで
平気だったんだろ……」
ゴンはソファに寝転びながら言う。
「平気だったんじゃなくて」
「必死すぎて
気づかなかっただけでしょ」
静かになる部屋。
その言葉が、
二人にじわっと刺さる。
「……確かに」
「一日中、
一緒に乗り切ることで精一杯だった」
ゴンは目を閉じたまま、
穏やかに続ける。
「ねえ」
「戻るために必要なのってさ」
「“離れる”か
“ちゃんと向き合う”か」
「どっちかだと思うよ」
その夜、
布団に入ってからも、
キルアと×××はなかなか眠れなかった。
近すぎる距離。
当たり前になってた存在。
それを
第三者に見られて、
初めて意識してしまった夜だった。
夜中。
部屋は暗くて、
小さな寝息だけが聞こえる。
ゴンは完全に爆睡していた。
微動だにしない。
「……起きないな」
×××(中身キルア)が小声で言う。
「起きないね」
キルア(中身×××)も、
声を落として答える。
しばらく沈黙。
でも、不思議と気まずくはない。
「……さ」
キルアが先に口を開く。
「正直、
最初は怖かった」
「自分の体じゃないし、
何してもズレてて」
「でも……」
言葉を探す間。
「×××がいたから、
どうにかなった」
×××は一瞬驚いて、
でもすぐに小さく笑う。
「……同じ」
「一人だったら、
学校も無理だったと思う」
「ゴンにバレたときも、
正直ちょっと安心したけど」
「それでも」
×××は視線を落とす。
「キルアが隣にいると、
変に落ち着く」
少し間が空く。
夜の静けさが、
言葉を後押しする。
「……距離、近すぎたかな」
キルアがぽつりと言う。
「でもさ」
すぐに続ける。
「離れたいわけじゃない」
「ただ、
ちゃんと“意識”したら」
「余計に、
大事だって分かった」
×××の胸が、
少しだけあたたかくなる。
「……私も」
「当たり前みたいに一緒にいてたけど」
「入れ替わって、
キルアの立場で一日過ごして」
「……キルアって、
すごく周り見てるんだなって」
キルアは照れたように視線を逸らす。
「それ、
褒めてる?」
「うん。
ちゃんと」
また沈黙。
でも今度は、
心地いい沈黙。
「……もし」
×××が小さく言う。
「元に戻ったらさ」
「今みたいに、
ちゃんと話そう」
「気づいたこととか」
「無理してることとか」
キルアはすぐに頷いた。
「……約束な」
「入れ替わらなくても、
分かり合えるように」
二人は、
同時に小さく息を吐く。
その瞬間。
胸の奥が、
すっと軽くなった。
まるで――
何かが整ったみたいに。
「……なあ」
キルアが囁く。
「これ、
条件そろってないか?」
×××は少し目を見開いて、
そして気づく。
同じ場所。
同じ時間。
同じ気持ち。
「……うん」
部屋は静かで、
ゴンはまだ眠っている。
二人だけが、
“今”を共有していた。
――その次の瞬間。
世界が、
そっと揺れた。
朝。
「……おはよ」
やけに近いところから声がして、
キルアと×××は同時に目を開けた。
視界いっぱいに――
ゴンの顔。
にっこにこ。
というか、ニヤニヤ。
「おはよー。
二人とも、同時に起きたね」
「……っ!?」
状況を理解するより先に、
身体の感覚が追いつく。
近い。
近すぎる。
ほぼ密着。
気づけば、抱き合うみたいな体勢で寝ていた。
「ちょ、ちょっと待て!!」
「え、なに、え!?」
二人は一気に飛び起きて、
慌てて距離を取る。
「な、なんでこんな……!」
「いつの間に……!?」
ゴンは布団に座ったまま、
楽しそうに言う。
「いやー、
夜中ちょっと目覚めたら
もうこの状態だったよ?」
「声かけるのも悪いかなって」
「やめろよ!!」
キルアは顔を真っ赤にして叫ぶ。
×××も同じく、
手で顔を覆っている。
「……はずかしすぎる……」
その瞬間。
ふっと、
何かが“元に戻った”感覚。
「……あれ?」
キルアが自分の手を見る。
「……これ」
×××も、
声の高さに気づく。
「……戻ってる?」
二人は顔を見合わせる。
「……戻ってる!」
「ほんとだ!」
完全に、
元の体。
入れ替わりは終わっていた。
一気に力が抜けて、
二人とも座り込む。
「……よかった……」
「ほんとに……」
ゴンは満足そうにうなずく。
「やっぱりね」
「同じ気持ちで、
同じ距離で、
同じタイミング」
「最後は“素直”だったもん」
キルアは少し黙ってから、
ぽつっと言う。
「……全部、
見られてたんだよな」
「うん」
ゴンは即答。
「甘々だった」
「言うな!!」
×××はまだ照れたままだけど、
そっと笑う。
「……でも」
「戻れたの、
ちゃんと話したからだよね」
キルアは一瞬視線を逸らして、
小さく頷く。
「……ああ」
ゴンは立ち上がって、
伸びをする。
「じゃ、
俺はそろそろ帰るよ」
ドアに向かいながら振り返る。
「二人とも」
「入れ替わらなくても、
もう大丈夫そうだね」
玄関のドアが閉まって、
部屋には二人だけ。
少し気まずくて、
でも不思議と落ち着く空気。
「……なあ」
キルアが言う。
「今日、
一緒に帰る?」
×××は、
少し照れながら答える。
「……うん」
朝の光の中で、
二人はちゃんと“元の自分”のまま、
同じ気持ちを共有していた。
昼休み。
キルアと×××が並んで歩いていると、
後ろからやたら元気な声。
「ねえねえ〜」
振り向く前から分かる。
「おはよ、
“同時に起きる二人”」
「……ゴン」
キルアは一瞬で嫌な予感しかしなかった。
ゴンは二人の顔を交互に見て、
にやにやが止まらない。
「最近さ」
「二人、
距離近くない?」
「気のせいだろ」
キルアが即答。
同時に。
「気のせいだよ」
×××も言う。
――タイミング、完全一致。
ゴンは吹き出した。
「ほら!!
今の見た!?」
「息ぴったりすぎ!」
「ちが……!」
「わざとじゃない!」
また同時。
二人は顔を見合わせて、
はっとしてから同時に視線を逸らす。
「……」
「……」
ゴン、満足そう。
「入れ替わり治っても、
癖残ってるんだ」
「一緒に動いて、
一緒に否定して」
「たまに顔赤くして」
「うるさい」
キルアは腕を組むが、
耳まで赤い。
×××も同じく、
ちょっと照れながら反論する。
「ゴンの勘違いだってば」
「へー?」
ゴンはわざと二人の間に手を入れる。
「じゃあさ」
「ここ、
離れて歩いてみなよ」
一瞬。
二人とも、
ほぼ無意識に一歩近づく。
「……」
「……あ」
沈黙。
ゴンはもう大笑い。
「無理じゃん!!」
「完全に
“隣が定位置”になってるよ!」
キルアは観念したようにため息。
「……悪いかよ」
×××は小さく頷く。
「一緒にいると、
落ち着くし」
ゴンは一瞬だけ、
からかうのをやめて言った。
「うん」
「いいと思うよ」
「前より、
ちゃんと顔見て話してるし」
「無理もしてない」
すぐに、
またにやっと笑う。
「まあでも」
「朝、
抱き合って起きた件は
一生いじるけどね!」
「それは忘れろ!!」
二人同時に叫ぶ。
また同時で、
また赤面。
ゴンは手を振りながら先に行く。
「じゃーね、
仲良しさんたち」
残された二人。
少し気まずくて、
でもどこか嬉しい空気。
「……ゴン、
絶対楽しんでるよな」
「うん……」
でも、
並んで歩く距離は
自然と近いまま。
キルアが小さく言う。
「……前より、
話しやすくなったよな」
×××は少し照れながら、
でも素直に答える。
「うん」
入れ替わりは終わった。
でも――
二人の関係は、
ちゃんと“次の段階”に進んでいた。
甘くて、
少し恥ずかしくて、
でも心地いい日常。
to be continued….