「お兄ちゃん、どうしたの?」
「木葉梟(このはずく)くん、顔色が悪いよ?」
「いや、その…俺」
世間に見放された自分の唯一の拠り所である妹と、
秘かに思慕していた少女が不安そうな表情を浮かべている。
累(るい)はどうにか言葉を紡ごうとするが、
犯罪者となった少年に現実から目をそらす時間的な猶予は、
もはや残されていなかった。
「容疑者発見!少年は人質を取る可能性あり!慎重に対応せよ!」
漂白剤爆弾が撒き散らした毒ガスを回避した警官隊が、
のじこや凜(りん)ごと累を取り囲む。
その一種異様な光景は渋谷の時間を止め、
通りを行く人々の足を地面に縫いつけた。
「えっ…お巡りさん?」
「お兄ちゃん、容疑ってなんのこと?」
「違う!これは違うんだ!」
口を衝いて出た言葉は、
自分でも呆れるぐらい陳腐なものだった。
だが、累は既に強盗襲撃時の冷静さを、
すっかり使*******************
*********************
****************************
****************************
**********
*******************
*******************
**********
コメント
1件