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2 - 冬の話

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2026年01月11日

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朝6時半、布団から這い出して残りが減ったカレンダーをまた一枚めくる。

今日から冬休みだ。




…朝の早い父さんはもう早速仕事でいない。


どこに行くというアテもないまま、コートまで着込んで外に出た。


シャリ…シャリ…


地面に降りた霜が、足を踏み込むたびに静かに音を立てる。


また足を進める。どこに行くというわけでもないが、少し忙しい運びで。


ごく普通の、ブランコと滑り台だけが置かれた公園。


昔はもっとたくさん遊具やら砂場のある公園があったものだったが、最近はあまり見ない。




隅っこにある小さな池は凍っていた。


ベンチに軽く腰掛けて、まだ日の登り切らない空を見上げ、ぽう、と息を吐くたびに息が白く染まる。


それで面白がっていた幼い頃が懐かしくて、ずっとそうやって遊んでいれば、時間はすぐに過ぎていく。


結局、俺は9時ごろまで公園にいた。


ーー


あれから1週間。


日めくりカレンダーも、最後の一枚。


また同じ公園に散歩へ行く。やる事のない、かと言ってお金も潤沢でない高校生にはちょうどいい暇つぶし。




いつも1人で座るベンチも、今日は先客がいた。


『こんにちは〜』


軽くあいさつすると、自分より小さい頭と身体が頷くように会釈を返してくれた。




それからまた、何かするわけでもなく座っている。


…隣の奴も…同じ。


しまいにはどっちが最後まで残るのかみたいな、意地の張り合いにすら感じてきた。




『あ、日暮れ始めちまった…どうしよ』


なんだかんだ…空を眺めたり隣の奴に目をやったりで時間が過ぎて、もう年が変わるまでわずかになった。


隣の奴は中学生とかか?


ずいぶん小柄で、細い。寒いとかはないだろうか?




『…な、腹とか減ってない…か?』


そんなこと考えてたら、うっかり話しかけてしまった。




いやいや…相手が仮に中学生だとしてもな…


名前も知らん、顔も知らんような初対面の奴に声かけられても困るだろうしな。




第一…腹減ってるならどこかしら買いに行くだろうし!うん!


「…減って、ます。」


あー!ちっちゃい声で言った!


『そうかー…その…変なこと言うけど…』


『一緒になんか買いに行くか?』




もうどうにでもなれ。言ったぞ!




こくり。


頷いたー…。




『じゃ…行こっか…?』




とりあえず最寄りのコンビニ。先に歩いていったら、ゆっくり後ろ着いてきた。


これで…いいのかなー…?


のんびり歩いていくと、コンビニはすぐに見えてきた。


さっきの子は後ろをちょこちょこと付いてきて、少し可愛いと感じてしまった。


いや、俺は断じてそっちの気はない!と己を律し、温かい飲み物…といってももうお茶くらいしか残ってなかったが。


しぶしぶお茶を選んで、ボトルを手に取った。


『肉まん2つお願いします』


1分もしないうちに温められた肉まん2つ。片手に袋を下げて、コンビニを出た。


『先、食べてていいよ』


肉まんを手渡すと、最初食べ方が分からないような戸惑い方をしていた。


分からない…?


肉まん知らないのかな…?


そんなわけない、と食べ方を軽く説明した。


「はふっ…はふはふ……もぐ…」


口で冷ましながら食べるのを、俺は歩きながらもじーっと見つめていた。


冷えて白かった頬が、うっすらピンクに染まっていた。


来た道を辿るようにして


さっきの公園。さっきのベンチ。


俺もまだ熱いままの肉まんを食べ始めた。


うん…うまい。市販品って感じでも、ここまで寒いと温かいだけで身体にしみる!


『ん…うまい?』


「…ん…おいしいです、食べたことない味…」


『そっか、熱くない?』


「…大丈夫、です」


初めて、か…なんか嬉しい気がする。はじめて会ったような子だけど。


絆創膏だらけの指で、肉まんつかんで食べてる。さっきまで手を隠してる感じだったから気づかなかった。


『手、大丈夫?しみない?風呂とか』


かぶりついたまま、こくこくと頷いてる。


そうは見えないけどなー。絶対お湯とか石鹸しみる奴だ!これ!


そんなことを考えていると、もうお互い食べ終わっていたらしい。


『ん、ごちそうさま!』


「…ごちそうさま、でした」




『ここから家、帰れるか?』


「はい」




それなら安心…だな。


名前を聞いてなかったその子に手を振って、先に帰ることにした。


後ろを振り向いたら、小さく振り返してくれていた。


ーーー

(??目線)


あの人は、先に帰っちゃった。


優しい人だったな…声も、なんだか落ち着く人。


うっすらとしか覚えてない、あの人によく似てる。


…また、ここにいたら会えるかな?


あの人が置き忘れた、お茶のボトル開けて口をつけた。




まだ、冷め切ってはいなかった。

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