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「柚葉が大変な時に、私達のことなんて心配しなくていいよ。まあ、柚葉はそういう奴だからね。だけど、柚葉だって幸せにならないとダメだよ。社長がダメでも、もっと素敵な人が必ず見つかるから。柚葉だったら絶対に見つかる! 私が保証するよ。だから元気出しな」
私は、泣きながら……笑った。
真奈と一緒にいて、気持ちがすごく落ち着いた。
確かにまだ全然立ち直れてないけど、それでも、前に向かなきゃって思えた。
私は真奈と別れて、マンションに戻った。
いっぱい泣いたから、ちょっと頭が痛い。
昨日は全く眠れなかったし、今日は早く眠ろうと、シャワーを浴びて着替えてから、温かいミルクティーを入れ、スマートフォンを見た。
2回、着信があったみたい。
この番号、誰だろう……
仕事の関係だろうか、私はすぐにその番号に折り返した。
「柚葉?」
「えっ? その声……」
聞き馴染みのある声――
当たり前だ、いっつも聞いてた声だから。
大好きな柊君の、大好きな声。
でも、ほんの少しだけ違う、これは……
「俺、樹」
やっぱり、樹さんの声だ。
「こんな時間にどうしたんですか? 私の番号……どうして知ってるんですか?」
「会社の名簿見た。悪いな勝手に。ちょっと気になったから電話してみた」
普通なら嫌な行為だと思うのに、なぜか声が聞けてホッとした。
「いえ。わざわざ電話くれたんですね。心配かけて本当にすみません。私、樹さんにお礼を言わないといけなかったですね」
「お礼?」
「はい。樹さんが昨日一緒にいてくれたから、私、あまり取り乱さないでいられました。もし、樹さんがいてくれなかったら……どうなってたかわかりません」
「普通なら……きっと取り乱す。あの状況なら誰でも。なのに、柚葉は我慢したんだなって……そう思ってた」
何だか、樹さん、優しい……
意地悪で怖いはずの樹さんが、今は私にとってすごく頼れる人になってる。
真奈と同じくらいに。
「我慢できました、樹さんのおかげです。本当にいろいろありがとうございました」
「いや……柊のこと……本当にごめん。あいつは、昔から本当に良い奴で、優しい奴なんだ」
「もちろん、それはよくわかってます」
本当に……よくわかってる。
私、これでもかっていうくらい、いっぱい優しくしてもらったから。
「柊は昔から女の子によくモテて。いつも誰かが側にいて……。それが、気づいたら1人じゃなく何人も。それでも、柊はたぶん、心が満たされてなかったんだと思う。あいつはどうしようもなく寂しがり屋で……」
樹さんの言葉を聞いてたら、また泣けてきた。
「でも、柊は柚葉に出会った。初めて心から愛せる女性に」
樹さんの声が、耳元ですごく優しく聞こえる。