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「柊は柚葉を結婚相手に選んで、本気で守ろうとした。それは、本当の気持ちだと思う」
「……私も、そう信じてました」
「ただやっぱり……あいつの恋愛観は、もうずっと長い間ねじ曲がったままで、元には戻せなくなってる。柊には……全く悪気がないんだ」
「どうしようもないんですよね。そうやって生きてきたんなら。今更、1人だけを愛することはできないんですね。でも……やっぱり私には到底理解できないです、すみません」
理解なんて、できるわけない。
「本当にすまない。柊との結婚、楽しみにしてたんだろう……」
「もちろんです。すごく楽しみにしてました。将来のことも、いっぱい考えてたから。今は、柊君を許せない気持ちが消せないです。でも、樹さんが柊君を守りたい気持ちはわかってるつもりです」
2人は、お互いを思い合う大切な兄弟だから。
「いろいろ悪かった。柚葉、もし、これから何かあったら……」
樹さんが、口ごもった。
「樹さん?」
「いつでも連絡してこい。待ってるから」
「あ、ありがとうございます。はい、わかりました」
何だろう、樹さんの言葉、すごく男らしくて、今、一瞬ドキッとした。
柊君に似てる声だけど、柊君にじゃない、私は……樹さんにキュンとしたんだ――
「おやすみ、ちゃんと寝ろよ」
「はい、ありがとうございます。おやすみなさい」
スマートフォンをテーブルに置いて、私は冷めたミルクティーを1口飲んだ。
そして、息を深く吸ってから、ゆっくりと吐いた。
樹さん……
今日は、どうしてあんなに優しかったの?
柊君にフラれた私が、あまりにも可哀想だったから?
きっと同情してくれたんだ。
怖そうだし、私のことを美人じゃないって言ったし、いろいろ意地悪な樹さんだけど、でも本当はものすごく優しい人なのかも知れない。
何かあったら連絡してこいって、その言葉があるだけで、私は大きな安心感に包まれた。
柊君の双子の弟、樹さん。
まだまだよくわからない人だけど、それでも、今、私が樹さんに救われてることに間違いはなかった。