kr視点
頭の中で絞り込んだ地点でスマイルを発見してからはあっという間だった。
知らない男に体を触られる彼を見て、一気に頭に血が上る感覚がした。
気がつけば俺の足は、あのクソ野郎にクリティカルヒットを決めていた。
今思い返しても中々綺麗な一発だった。
、、、まぁ、怒られたけど。
犯人は警察に無事捕えられ一件落着。
って思えたら良かったんだけどね。
見つけた時、いつもは無表情で感情を出さないあいつの目は涙を溜めていた。
怯え切った顔で、縋るように俺を見た彼の顔が
頭に焼き付く。
ーーもっと早く来れてたら、
そう思わずにはいられなかった。
それでも、そう言っていても仕方ないから、疲れているであろう彼を早く家へ帰してあげるのが最優先事項だ。
襲われた割にはやけに落ち着いていた彼も、恐怖は体に出るようで。腰が抜けてしまったスマイルを背負って家へ帰ることになった。
きっと話す元気なんて無いだろうから、
ただ静かに帰路に就いて行く。
マンションに着いて俺たちの部屋の前で彼を背中から下ろす。
立てるぐらいには落ち着いたようだけど、暗い顔で俯いたままのスマイルに大丈夫かと尋ねる。
コクリと頷きはしたが小さく震える体を隠そうとしているのか、ぎゅっと自分の腕を掴んでいる。
そんな様子は、とても1人になんてさせてはいけないと直感で感じさせられる。
それでも1人になりたいかもしれないという考えも浮かんだ。だけど恐る恐る顔を上げたスマイルの顔を見て、そんな考えは全て無かったことになる。
kr 「スマイル、…うち、来る?」
そんな言葉が自分の口から紡がれる。
ぇ、と小さく溢れた彼の声。
少しの間固まった後、スマイルは再び俯いてしまう。
kr 「…あー、嫌だったら全然良いんだけど。その、…何となく、1人は思い出しちゃうんじゃ無いかなって思って、」
歯切れ悪くも言い訳みたいなことを付け足す。
別に俺と一緒に居たからって思い出さないって保証になる訳じゃ無いけど、提案するだけはタダだし。
なんて、頭の中で自分にさえも言い訳を並べ出す。
そんなことを考えている間もずっと下を向いたまま固まってしまったスマイル。
kr 「あのー、スマイルさん…?」
あまりに長い間そうしているから耐えきれず名前を呼ぶ。
すると顔は下げたまま彼の手が動く。
それは微かに震えながら、キュッと弱々しく俺の服の裾を掴んだ。
そして聞こえるか聞こえないかという声量で、
sm 「……いきます」
そう答えた。
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