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家の鍵を開けスマイルを手招く。
ぼーっとしていたようでこちらに気がつくと一瞬の躊躇いを見せた後、弱々しい足取りで近づいてくる。どうせ間取りは同じだろうから、お手洗いなどの案内は不要だろうとすぐにリビングへ案内する。
部屋に入った途端、ひんやりとした空気が肌を撫でた。そこでエアコンを切らずに家を出たことを思い出す。走った後の体にはちょうど良いが、流石につけっぱなしにするのは電気代が気になるからと消しておくことにする。
リモコンを操作しながらスマイルをソファーに座るように促せば、端の方にちょこんと小さく腰を下ろした。
kr 「もっと楽にして良いんだよ?」
そう言えば一瞬、何に対しての言葉か分からなかったようで視線を落とした。ゆっくりと考えた後、ぁ、と声を漏らす。意図が伝わったようで控えめにだが、先程よりかは楽な姿勢になってくれたようだ。
それを横目に見ながら俺はキッチンへ向かった。
グラスを2つ取り出せば冷蔵庫に入っていた麦茶を注ぐ。それを持って再びリビングの方へ戻っていく。
出ていった時と変わらずスマイルは俯いたまま、ぼんやりとしているようだった。
持ってきたコップを渡せば大人しく受け取ってくれて、変に緊張していた気持ちがふっと緩んだ気がした。
自分もスマイルの隣に座り、コップに注がれたお茶を喉へ流し込む。冷たく冷やされたそれは徐々に喉を潤していく。
その様子を見ていたスマイルも恐る恐るコップを口に運んでいた。いろんなことがあって忘れていた様だったが、汗もかいていたし相当喉は乾いていたはずだ。控えめだったが段々、ゴクゴクと喉を鳴らしながら飲む様に変わっていった。
夢中に飲んでいたそれが無くなったのを確認すると、ゆっくりと息を吐いた。
一息ついたのを見て、手に持っていたコップをスマイルから取り上げる。ぇ、と小さく聞こえたが気にせず2つのコップを前のローテーブルに置いた。ぽっかりと空いた両手を見つめてまた無言になってしまった彼をじっと見る。
kr 「…俺に、連絡してくれてありがとね。」
sm 「…ぇ、?」
俺の声に反応して顔を上げたスマイルと目が合う。
kr 「いや、ありがとうって言うのもおかしいか。スマイルは嫌な目に遭ってるのに。ごめんな…。」
sm 「ぃゃ…、」
kr 「それでも、助けてほしいって思った時にスマイルの頭に浮かんだのが俺だったことが嬉しかった。……だからさ、迷惑かけたって顔すんなよ笑」
sm 「…っ!」
俺がそう言って表情を緩ませれば、顔に出ていないとでも思っていたのだろうか。少し目を見開いて何で、なんて言いたそうな顔をしていた。
kr 「w…だってお前、怖かったはずなのに自分の気持ち後回しにして、俺に迷惑かけない様にって思ってただろ。」
sm 「そ、そんなこと…」
kr 「はい、嘘。バレバレな、顔出過ぎ。」
sm 「なっ…⁉︎」
kr 「ふはw…うん、俺の前でまで強がんなくて良いよ。怖かったなら怖かったって、言えば良いんだよ。…な?」
sm 「っ…、」
そう言ってやればスマイルの瞳が段々と潤んでいくのが分かる。溜まっていったそれは容易く決壊し、あっという間に次から次へと溢れ出した。
ぎゅっと握り込んだ拳にポタポタと落ちる涙。小さな抵抗からか、俯いて俺から見られない様にしていた。
そんな彼を、そっと抱き寄せる。
背中をポンポンと優しく叩いてあげれば、殺していた声が段々大きくなってくる。
kr 「…よしよし、怖かったなぁ。頑張ったよ、スマイルは。大丈夫、大丈夫。」
ぎゅっと俺の服を握る彼は、いつもの仏頂面とはかけ離れていて。まるで小さな子供みたいに声を出して泣く姿に、自然と宥める自分の声も優しくなるのが分かる。
そうやって暫くスマイルの背中を優しく叩き、頭を撫でて時間が過ぎていった。