テラーノベル
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プロローグ
白い場所が存在した。白以外に何もなく、一声を発したらどこまでも響いてしまうのではないかと思えるくらいに静かで果てがなかった。そんな白い空間に女性が立っていた。黒い短髪を携え、黒のニットに白衣を身につけておりどうみても科学者のようにしか見えないが、一つだけ科学者らしからぬところがあった。それは背丈だ。小学4年生位にしか見えない。その女性、いや少女は目を瞑り難しい顔をしている。少女はとても美しい顔立ちをしており、このまま育てば絶世の美女になるだろうと一目でわかる美しさ、いや可愛さだった。
少女は唐突に目を開けた。
紺碧の瞳に光が反射して輝きが際立つ。その美しさは、晴天の青空にも引けを取らない鮮やかさに深海よりも深い闇がそこにあった。その少女の目から一筋の涙が溢れる。哀しみながら、嘆きながら、そして楽しみながら。口角が上がり自然と笑みができる。自分が狂っているなんて微塵も思っていない顔。その笑みが何よりの証拠だというのに。口が裂けるほどに歪んだ笑みを携え彼女は手を掲げた。
「神よ、無知で哀れなこの私にどうかお導きを」
少女は何かを待っている。それは言葉尻で分かった。彼女は数秒天を仰ぐ。瞬間、少女の顔が強張る。
「わかり、ました。それが神の御意志なのであれば遂行するだけ」
少女は俯く。神の御意志を理解し、整理するために。今までもそうしてきたように。
「……今も見えているということですね」
少女は辺りを見回す。だが当然誰もいない、何もない。ただ少女はそうしなければならなかっただけで。
「こんにちは、皆さん。私の声が聴こえていますか?私は赤嶺シズク。神の使徒として神の御意志に従う者です。はい、あなたたちの気持ちもわかります。混乱しているでしょう。私もそうです。突然こんな状況になって何もわからない状態で私が喋っている。まあ、説明は後々していきます。安心してください。そうですね今のやりとりを見ていたと思いますが今からあなたたちは私を通してある世界を見てもらいます。そこである人間たちがある決断を下す。それを見届けてほしいというのが神の御意志です。こんな長々と話していたら飽きてしまいますね、さっそく見ていきましょうか。破目ルルという人間の決断を」
少女は作り物の笑顔を浮かべある一点を見つめる。そして少女は覚悟を決めたように、決意を決めたように。
赤嶺シズクはゆっくりと目をつぶった。
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