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吉沢亮(短編)

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吉沢亮(短編)

12 - フラれて落ち込んでたら

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2025年08月14日

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【フラれて落ち込んでたら】



雨上がりの夜。

駅前のカフェで温かいココアを手にしても、心の中はまだ冷えたままだった。


向かいに座る吉沢さんが、じっとこちらを見ている。

「……で、その人にはフラれたってわけ?」

「……はい」

笑って答えようとしたけれど、声が震えて情けなかった。


「そっか」

それだけ言って、彼は紙コップを口元に運ぶ。

長い沈黙が流れたあと、ふいにテーブル越しに私の目を捉えた。


「なぁ、○○」

名前を呼ぶ声が、いつもより低く響く。

「泣くなよ」

「泣いてません」

「嘘つけ」


口元だけで笑いながらも、その瞳はやけに真剣だった。


「……じゃあさ」

一拍置いて、彼は少し身を乗り出した。

「俺にしろよ」


一瞬、言葉の意味が頭に届かず瞬きをする。

「え……」

「その人じゃなくて、俺。ずっと見てきたからわかる。お前のことなら、絶対泣かせねぇ」


冗談のような軽さで言うには、あまりにも真っ直ぐな声。

息が詰まりそうになり、視線を逸らした。


すると、彼の指先がそっと私の手に触れた。

「……まだ返事はしなくていい。でも覚えとけよ。お前が泣いてる間は、ずっと俺が隣にいる」


雨上がりの夜道を歩く帰り道、頭の中ではさっきの言葉が何度も繰り返されていた。



あの日から数日。

仕事中、ふとした瞬間に思い出すのは、あの夜の「俺にしろよ」という声だった。

不思議と、その言葉を思い出すたびに胸が温かくなる。


夕方、オフィスの窓から差し込む夕日がオレンジ色に机を染める頃、吉沢さんが私のデスクにやってきた。

「○○、今日このあと時間あるか?」

「……あります」

自分でも驚くほど、即答だった。


向かったのは、会社近くの小さな公園。

秋の風が少し冷たくて、落ち葉が足元でかさりと音を立てる。


ベンチに腰を下ろすと、吉沢さんはポケットから缶コーヒーを取り出して渡してきた。

「甘いやつだ。お前、苦いの飲めないだろ」

「……覚えててくれたんですね」

「そりゃな」


缶を手で温めながら、私はゆっくりと言葉を探した。

「あの……この前のことなんですけど」

「ん?」

「“俺にしろよ”って、あれ……本気で言ってました?」


彼は缶を口に運ぶ手を止め、私をじっと見つめた。

「……当たり前だろ」


その真っ直ぐな視線に、鼓動が早くなる。

私は缶を膝に置き、深く息を吸った。


「じゃあ……お願いします」

「……え?」

「亮さんに、します」


一瞬だけ驚いたように瞬きをしたあと、彼は小さく笑った。

「……やっと、言ったな」


次の瞬間、温かい手が私の手を包み込む。

指先が触れ合うたびに、胸の奥まで熱が広がった。


「じゃあ、これからは俺が全部守るからな。○○」

名前を呼ぶ声が、夕日の中でやけに優しく響いた。



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