赤 × 桃 : 《 バレンタインの思い 》
俺は、死ぬまで幸せだ。
二月 十一日 14:36 浅野 赤
今日はバレンタインの三日前
俺にはチョコを渡したい人がいる
友チョコでも義理チョコでも無い
本命チョコ。
だからその仕込みをしている
作るチョコは甘さ控えめの生チョコ
俺の好きは人は
甘いものがあまり好きじゃないから
赤「 …こんなもんかな、 」
試しに作ってみて味見する
今日は祝日で、
大学はもう春休みに入ってる
でも相手は社会人だから
春休みとか、まだ先の話
けど春休みになったら満開の桜の下で
デートする予定をもう立ててる
彼の髪の色は綺麗な桜色
青空のような深い青色の目
本当に満開の桜を彷彿とさせる人で
本当はお家デートだって構わない
けれど、彼は桜が好きだから
一緒に桜を見に行く
お花見前のバレンタインとホワイトデーは
俺達からしたらビッグイベント
包装の練習もしようと
包装紙を出して色々と準備をする
赤「 っと、黄くん呼ぶか 」
その前に親友の黄くんを呼ぶ
黄くんは俺の幼馴染で
物凄く頼りになる親友であり、
家族以上の仲だ
桃くんとは違う意味で、本当に大好き
漢字は少し苦手だったりするけど
ゲームが得意だったり、
音楽全般出来たりするし
センスもあって、
バレンタインの時は毎回お世話になっている
桃くんの舌と、黄くんの舌はよく似ていて
桃くんが好きなものは大体黄くんも好きだ
その逆で、
黄くんが好きなものは桃くんも大体好きだ
だから料理を桃くんに振る舞う前は
黄くんに味見してもらってジャッジ頼む
赤「 黄く〜ん 」
黄『 はいはい、チョコの味見ですよね? 』
『 すぐに行きますから 』
そう言って電話を切る黄くんは
本当に俺の相手に慣れている感がある
黄くんが来る前に洗い物片付けなきゃな
黄くんは桃くんと同じくらい綺麗好きだから
キッチン汚いと怒られちゃう
怒ったらめんどくさいんだよな
二月 十一日 14:57 浅野 赤
ピンポーン、と家のチャイムが鳴る
インターホンを見れば
帽子とマスクをつけた黄くんの姿
いつも黒マスクで細身だから分かりやすい
玄関に行って鍵とドアチェーンを開ける
赤「 黄くんいらっしゃーい 」
「 待ってたよ 」
俺は そう言って少し笑う
黄「 今年も楽しみです 」
黄くんも そう言って微笑んだ。
黄くんを先に上がらせ、
鍵を閉めてドアチェーンを閉めて
俺もリビングへと向かう
リビングの机の上には
すでにチョコを置いておいたから
黄くんは早速手を伸ばして食べようとしたけど
赤「 我が家のルール忘れた? 」
俺が後ろから声をかける。
俺が少しだけ圧をかけるように言うと黄くんは
足早に洗面台に行き、手を洗って消毒をする
そして再度、俺が作った、
甘さ控えめ生チョコに手を伸ばす
そして口に含んで、
頬に手を当てて美味しそうに食べる
昔から、美味しいものを
食べた時の反応は変わっていない
分かりやすいし、可愛いからOKです
黄「 赤!今年の今までで一番美味しい!!」
そう言ってニッコニコの顔を
こちらに向けてきて、また一
手を伸ばしパクっ、と口に入れて食べる
その姿は大学生より、
小学生に見えるほどだった
無邪気に食べる黄くんの反応から
今年は本当に美味しいのが出来たらしい
俺は苦いのより甘い方が好きだから
味見しても美味しいのか分かんない
黄「 …赤、食べないんですか? 」
そう言って自分の口に
チョコを入れる寸前に訊いてきた
赤「 俺が苦いもの苦手なの忘れた? 」
そう言って俺は微笑むように笑う
黄「 あ、そっか 」
「 …この生チョコ、全部食べていいの? 」
一度、食べる手を止めて訊いてくる
でも手が宙に浮いているということは
食べたくてたまらないのだろう
赤「 その生チョコは黄くん専用だったから別にいいよ 」
俺はまた笑う。
だって俺がああ言った途端、
すぐにチョコに手を伸ばして
またパクパク食べ始めたから
いつもはカッコイイのに
こういう時は可愛いし、面白い
本当に大好きな親友。
二月 十三日 17:30 浅野 赤
本当のバレンタインは明日だけど
明日は桃くんの予定が合わないから今日渡す
いつもの駅前で桃くんを待っている時間は
俺だけの時間が止まったように
目の前の景色は目まぐるしく人が流れていく
ふと、息を はぁ〜っ と吐いてみた
息が白く、分散していく
一秒後にはもう見えなくなっている息は
綺麗で子供の頃を思い出す
わりとモテていた学生時代、
俺はチョコをもらう側だったのに
桃くんに会ってからは渡してばっかりだ
でもホワイトデーのお返しはしっかり貰う
バレンタインはただの平日だったのに
そんな俺に桃くんは楽しさを教えてくれた
初めてチョコを作った日のこと、
まだ覚えてる
初めて作ったのは、チョコチップクッキー
渡した時、
初めて桃くんが甘いの苦手だって
分かったんだっけ
けど美味しそうに食べてくれて
本当に嬉しくて、次の年も次の年も作って
今年も作った
喜んでくれるかな。
二月 十三日 17:35 葵 桃
電車に揺られながら、世界一大切な人を想う
俺の仕事が忙しくて、なかなか
会えない日が続いても変わらず連絡をくれて
毎年チョコをくれる人
俺もなるべく連絡を返して、電話して
ホワイトデーで頑張ってチョコとか作って
本当に人生変わったし楽しくなった
《 毎年恒例 》が俺には無かったから
赤に会ってなかったら
正直、つまらない人生送ってたと思う
つか、会う前までつまらん人生だった。
毎日出社して、取引先に頭下げて回って
椅子に座ってひたすら事務作業
家に帰ったら飯食って風呂入って寝る
そんな夢も希望も無いような
つまらない人生送ってたのに、
ここ数年は毎日が楽しくて楽しくてたまらない
早く駅に着かねぇかな
そしたら赤に会えるのに、
抱きしめられるのに、声が聞けるのに。
大切な人を思うと
心が締め付けられると同時に
会えないもどかしさや温かさが分かる
同棲だってしてないし、婚約だってしてない
本当にただの恋人、と
言ってもいいのか分からない関係
けど春休みは お花見に行ける
夏休みは 海に行ったり旅行する
秋休みは 紅葉やイチョウを眺める
冬休みは 雪が降ったら雪合戦をする
長い時間、一緒にいられるのにな
早く長期休みになってくれ。
二月 十三日 17:48 葵 桃
ようやく最寄り駅に着いた。
数十分前に『 駅前に着いた 』って
赤からのメッセージが来てる
改札をぬけて階段を降りれば
そこには赤がいる
だから急いで電車を降りて、
改札口に自分の交通マネーをタッチする
改札口を過ぎて少ししたら
右に曲がる場所があって、曲がったあと
5mもしたら階段がある
その階段を急いで駆け下りて外に出る。
少し辺りを見渡すと、少し小柄で
俺が去年あげた、赤と桃色のチェック柄の
マフラーをしている人がいる
その人が赤だ。
赤は壁にもたれかかりながら
上を見ていたから少し遅く歩きながら
俺も空を見上げる
そこには都会で見れるようなものとは
思えない星空が広がっていて
よく見ると雪が降り始めた
赤が見蕩れているわけだ
二月 十三日 17:46 浅野 赤
あと二分後が桃くんが乗っている
電車の到着時刻。
あと少し、あと少しで桃くんに会える
あと数分なのに待ち遠しくて
少し空を見上げたら綺麗な星空が広がっていて
思わず言葉を失って見とれていた
だから、電車が到着した音さえ聞こえずに
ただただ空を見ていた
二月 十三日 17:49 葵 桃
かなり近づいても赤はずっと空を見上げていて
少しだけ腹が立ったので驚かすことにした
そ〜っと近づいて、
桃「 わぁ゛!! 」
赤「 ぴぎゃあ゛ッッ゛!! 」
ここが人通りの多い駅前なことも忘れて
大声を出して赤を驚かす
赤は俺が思っていた通りの反応をして
俺は大爆笑をする。
赤「 桃くんのバカっ!! 」
少しだけ俺を叩いてそっぽ向く
そんな赤もとても愛おしくて
俺は後ろから抱きしめて、こう囁く
桃「 ごめん、遅くなって 」
俺が囁いたあと、赤は耳まで真っ赤にしたのに
俺の方は一向に向いてくれない
驚かしたのは悪いと思ってるけど
久しぶりに会えてこの反応はさすがに悲しい
桃「 …ごめん、って… 」
聞こえるか聞こえないか程度の声量で呟く
そしたら赤は振り向いて、俺の方を見た
赤「 俺も意地悪しすぎたね 」
赤はニコッ、と微笑んで
覗き込むように少し体を曲げる
その姿も愛おし過ぎて、時々鼻血が出そうに
なったり気絶しそうになったりする
嘘だけど。
年下なのに、たまに俺より意地悪だ
そんな小悪魔的なところが
俺は大好きなんだけどね
赤「 あ、これ今年のチョコね 」
そう言って紙袋を俺の前に突き出す
俺は「 ありがとう 」って言って受け取る
二月 十三日 18:01 浅野 赤
さっきチョコを渡した時、
桃くんはいつものように笑った見せた
その顔は本当に久しぶりで
嬉し泣きしそうになったのは秘密だよ
赤「 …ねぇ、桃くん 」
俺は街灯がついた道で口を開き、
立ち止まり、桃くんの方を見上げる
桃くんは不思議そうな顔をしていた
赤「 …結婚、したい 」
結婚、という風に口にしたけど
結婚にこだわってる訳じゃない
桃くんと傍にいれる空間が欲しい。
一緒に寝たいし、一緒にご飯食べたいし、
一緒にテレビ見たいし、
桃くんが得意な対戦ゲームだってしたい
けど、それをできる空間がない。
桃「 …っ、… 」
だからといって、桃くん困らせちゃダメだな
こんなめんどくさい人間と一緒になんて
暮らせないよね
赤「 …ごめん、困らせた 」
少しばかりの苦笑いで誤魔化す
桃くんは未だに困った顔をして
まだまだ冬の夜空を見上げている
夜空を見上げる桃くんは
とてもカッコよくてどこか儚く美しかった
桃「 …わかった、… 」
桃くんは目線を俺に戻し、
何かを決意したような顔で
俺の方を真っ直ぐと見ている
俺に穴が空きそうなほどに
桃「 結婚しよう 」
桃くんは笑っていたけど、
真剣な目をしていて俺の方が戸惑った
赤「 ごめん、冗談だよ 」
俺はすかさず笑って誤魔化したけど、
桃くんの目は変わらなかった
俺の方を見て、俺の顔に
手を伸ばしてきて俺の頬をふと触った
その姿はとてもイケメンで、
俺は少女漫画のヒロインにでもなった気分だ
このまま、二人で
何処か逃げるんじゃないか、なんてね
そんなことは絶対にありえない
けど、
桃「 俺は、結婚したい 」
よく嘘をついてからかってくるけど
あの顔は本当の顔だ
二月 十三日 18:10 葵 桃
『 結婚したい 』そう、彼は言った
俺の手を少しだけ引っ張った状態なのに、
目線は俺の足元だった
自信が無い時の赤の隠し方
だから、俺は言ったんだ
『 結婚しよう 』って
赤は遠慮するように『 冗談 』と言った
何が冗談なもんかよ
お前がもし、からかいのつもりで言っても
本気だったとしても俺は本気で受け取って
全力で返したい
俺だって、赤と結婚したいから
男同士で入籍が出来なくたっていい
ただ、傍にいれるような
生涯のパートナーってだけでいい
それ以上は何も望まない
桃「 …待っててくれ 」
俺は決意を固めた上で赤にそう言って、
赤はそれに頷いてくれた
本当に可愛い、俺の彼氏だ
どうも、友チョコ貰えた人です。
美味かった!!!!
コメント
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いつもと書き方が違う気がします🤔変わってなかったらごめんなさい!!🙇♂️ めちゃくちゃ最高でした!!✨