テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
#一次創作
つが
転校してきた殺し屋君第3章:復讐の鎮魂歌
第21話:氷下の死神 その2
雨の激しさは増し、辺りは氷河が放つ冷気によって白く凍てついていた。黒咲の肺は冷気で焼け、砕けたナイフを握る手は感覚を失いかけている。
氷河が冷酷なまでに静かな一歩を踏み出す。 「終わりだ。その若すぎる命、雪の中に埋めてやろう」
古刀が月光を反射し、黒咲の首筋へ向けて吸い込まれるように加速する。死の予感。だが、その白銀の軌道を、真横から飛び込んできた「熱」が強引に弾き飛ばした。
「――キンッ!!」
火花が闇を散らし、氷河の冷気が一瞬だけ霧散する。
「……私の獲物を、勝手に氷漬けにしないでくれる?」
そこに立っていたのは、包帯姿も痛々しいが、その瞳に烈火のような闘志を宿した藤堂騎士華だった。彼女の手には、組織から新たに支給された紅い刀身の特殊合金刀が握られている。
「藤堂……!? 怪我はどうした」 「あんな地味な包帯、私の熱で焼き切ってやったわよ。凪……黒咲、あんたは少し休んでなさい。この氷のおじさんは、私が『解かして』あげる」
氷河は眉一つ動かさず、静かに刀を構え直した。 「……紅蓮の剣士か。熱いな。だが、熱はいつか冷めるものだ」 「やってみなさいよ。あんたの氷が勝つか、私の情熱が勝つか!」
藤堂が地を蹴る。彼女が通った後の地面は、雨水が蒸発し白煙が上がるほどの熱を帯びていた。 「紅蓮・一閃!!」
激突。氷河の「静」の剣術に対し、藤堂は「動」の極致――超高速の連撃で挑む。 冷気と熱気がぶつかり合い、周囲には激しい水蒸気が立ち込め、視界は完全な白銀の世界へと変わった。
「無駄だ。私の間合いに入れば、全ての熱は凍結する」 氷河が円を描くように古刀を振るうと、藤堂の足元が瞬時に氷結し、彼女の動きを封じにかかる。 「はっ、そんな子供騙し!!」 藤堂は刀身を自らの脚に接触させ、摩擦熱で氷を爆砕。そのまま下段から氷河の懐を突き上げる。
二人の剣士が奏でる、氷と炎の二重奏。 黒咲はその光景を、竹内(安藤)から学んだ超感覚で見つめていた。氷河の剣が完璧であればあるほど、その「冷却」には一瞬の溜めが生じる。そして藤堂の熱がそれをこじ開ける瞬間がある。
「藤堂! 左だ! 左の三寸、冷気が薄い!!」
黒咲の叫びに、藤堂が応える。 「言われなくても分かってるわよ!!」
藤堂の紅い刀が、氷河の絶対防御である「氷の壁」を突き破り、その胸元へと肉薄する。氷河の瞳に、初めて驚愕の色が走った。
「……ほう。孤独な氷を、二人の絆が溶かすというのか」
氷河の古刀と藤堂の紅刀が、互いの喉元数センチで止まる。極限の均衡。 だが、その時。
崩落した学校の校内放送から、ノイズまじりの「あの声」が再び響き渡った。教頭が死んでもなお動き続ける、自動化された「悪意」の残滓。
『……素晴らしいデータです。氷河。そろそろ、彼らに「本当の絶望」を見せてあげなさい』
氷河は静かに刀を引いた。その表情には、戦いを楽しんでいたような、わずかな名残惜しさが浮かんでいる。
「……興が削がれた。黒咲、藤堂。この先の『旧校舎・最下層』へ来い。黒鷹が、君たちの愛した少女の『成れの果て』と共に待っている」
氷河は霧の中に溶けるように姿を消した。後に残ったのは、激しい戦闘の痕跡と、再び降り始めた冷たい雨だけだった。
「……成れの果て、だと?」 浩一の拳が、血が滲むほどに握りしめられる。
(つづく)
コメント
1件
わあ、第21話読みました……! 氷河と藤堂の激突、めちゃくちゃ熱かったです🔥 氷と炎の対比が本当に綺麗で、特に黒咲が超感覚で氷河の“冷気の薄い箇所”を見抜いて叫ぶシーン、鳥肌立ちました。二人の連携がようやく形になってきた感じがして胸が熱くなります。でも最後の「成れの果て」って言葉がすごく気になる……。続きが待ちきれないです!