pe「え…き、きょーさん、今、なんて…」
俺は震えながら、クロノアさんの
スマホを見つめる。
クロノアさんも混乱しているようで、
その声を聞いて唖然としている。
俺らが呆然としていると、電話越しから
きょーさん以外の声が聞こえてくる。
re「きょーさん!1回落ち着いてってば!そんないきなり言ってもあっちが混乱するだけだって!!」
この声は、レウクラウドさんだろうか。
レウさんもきょーさんと同じ、
運営国の幹部の1人だ。
どうやらあちら側でも、
きょーさんを落ち着かせようとしているらしい。
kyo「ちょ、離せレウ!日常国に連絡を…!」
re「だーかーらー、一回落ち着けって言ってんの!一人で暴れないでよもう!!」
kyo「っるっせぇ!…っておい!スマホ奪うな!!」
re「よしっ!スマホ奪取完了!」
そのレウさんの声とともに、
プツッと音がして、通話が切れた。
急に訪れた静寂。
しばらくして、 しにがみ君がその静寂を破った。
sn「…あ、嵐みたいな電話、でしたね…」
tr「ほんと、びっくりしたよ…」
しかし、その二言でまた黙りこくってしまう。
数分間、俺たちはただ呆然としていた。
しばらくすると、
またクロノアさんに電話がかかってきた。
掛けてきたのは、コンタミさん。
コンタミさんもまたもや運営国の幹部で、
運営国では珍しいタイプの、
落ち着きがある大人びた人だ。
クロノアさんは素早く通話ボタンを押し、
スピーカーモードに切り替える。
するとスマホから、
コンタミさんの音声が流れてきた。
cn「…もしもし?先程はいきなりすいません…」
さっきの電話とは打って変わって、
落ち着いた声が会議室に響く。
kr「いえ、お構いなく…それで、さっきの話ですが……」
クロノアさんも、落ち着いた声で
コンタミさんに問う。
cn「…しっかり、説明させて頂きます。」
そのコンタミさんの声を聞いた時、
俺は我慢の限界が来てしまった。
クロノアさんのスマホに近づき、
スマホに向かって質問を被せる。
pe「なぁ、なにがあったんだよ!らっだぁが…らっだぁが、行方不明って!どうして、そんな……なぁ、なぁ?!」
tr「ちょ、落ち着けぺいんと!質問はコンタミさんの話を聞いた後!いいな?!」
pe「…っ!でも、らっだぁ………!!」
sn「らっだぁさんが心配なことは分かりますが、一度話を聞きましょう。慌ててもなにも始まりませんよ?」
pe「…………っ、…はい……」
cn「…大丈夫そう、ですか?」
kr「はい、大丈夫です。すいません、騒がしくして…」
cn「いえ…こちらも、掻き乱してしまってすいません。」
コンタミさんはそう返事をした後、
声色を変え、話題を切り替えた。
cn「…実は先程の電話の通り、我が国の統領…らっだぁが、行方不明になってしまったんです。」
cn「痕跡、GPS、どれも全く見つけられず、場所の目星も付けられないため、困窮している状態です。」
cn「もしかしたら、そちらの国にいるかもしれないという微かな希望の元、お電話させて頂いたのですが…その反応を見ると、そちらにも居ないようですね。」
コンタミさんは、はぁ、と、
小さくため息を付く。
kr「…その話は、他国や運営国の民にも話されたんですか?」
cn「いえ…統領が居なくなるなんて問題、そう簡単には世に言えませんよ。運営国幹部、そして今電話の向こう側にいる日常国の方々にしか、この情報は出回っておりません。」
kr「…なるほど、ありがとうございます。」
そこまで話すと、
コンタミさんは少し間を置いてから、
改まった姿勢で俺たちに語りかける。
cn「そこで、なのですが…どうか、協力して私達の統領を探してくれませんか?」
cn「統領がいなくなったことで幹部のまとまりも取れず、おまけに統領の仕事まで回ってきてしまい、私達だけでは手が回りきらず…すいません。」
kr「もちろん、我々も協力させて頂きます。運営国の皆様には、いつも助けて貰ってますから。」
cn「あぁ、ありがとうございます、本当に…」
そのクロノアさんの返答に安堵したようで、
コンタミさんの声が
少し明るいものとなった。
cn「電話越しで話し続けるのも大変ですし、よかったらこちらにいらして下さい。歓迎します。」
kr「分かりました。しかし、こちらも仕事があるので…一通り終わらせてから、そちらに向かわせて頂きますね。」
cn「全然大丈夫です、こちらもある程度書類を片付けますので。仕事中にすいません…」
kr「いえ、ありがとうございます。…では、また後ほど。」
cn「はい、後ほど。」
その言葉を最後に、通話が切れる。
電話が切れた瞬間、
俺は震えながら声を発した。
pe「…らっだぁ、らっだぁ……」
sn「…ぺいんとさん?」
俺はしにがみ君の声を無視して、
混乱しながら頭を抱える。
pe「…き、昨日…昨日の夜から、嫌な予感はしてたんだ…なんか、電話で、らっだぁが……」
tr「…昨日、らっだぁさんから電話来たのか?」
pe「あぁ、そうなんだよ…昨日の夜中に、急に掛けてきて…」
pe「『俺、もう耐えられない』って、『みんなに、ありがとうって伝えといて』って…意味わかんない言葉残して…」
pe「その時、ほんとに 混乱して、もう夢だとも思ったのに…なんで…なんで、らっだぁ……っ!」
その時、急にトラゾーが俺の両頬を、
パンッ、と両手で挟むように叩いた。
tr「ぺいんと、混乱する気持ちも分かるけど!まずは冷静に、らっだぁさんの形跡を探そう!!」
kr「そうだぞ、ぺいんと?そのためにも早く書類を終わらせて、運営国に向かおう。」
sn「そうですね。パパッと終わらせちゃいましょう!」
pe「……………」
sn「ほら、ぺいんとさんも急ぎますよ!」
しにがみはそう言って、
力強く俺に手を差し伸べた。
俺の仲間はいつもこうだ。
誰かが弱気になったら、
他のやつらがそいつに手を差し伸べる。
そして、そいつは勝手に引っ張られていく。
でも、それが楽しい。それがいい。
こんな仲間だからこそ、俺はやって行ける。
俺は、しにがみのその手を握った。
pe「…そうだな、そうだよなぁ…早く見つけてやらねぇとだよな…」
tr「よし!その意気だぞぺいんと!」
sn「ほんとぺいんとさん、いつもいきなりグズりだすんですから!」
pe「ご、ごめん…焦っちゃって…」
そう言いつつ、俺は自身の涙を拭った。
その時、クロノアさんが咳払いをする。
俺らは、一斉に席に着いた。
kr「よし…では、改めて……」
kr「超高速書類まとめ兼、朝の会議を始めよう!」
pe&sn&tr「おーーーーーーーーー!」
こうして、俺たちの波乱な一日は
幕を開けたのだ。
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とりあえず仕事パーティーが始まったわけだ()