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「い、いえ、なっ、なんにも抱いていたなんてことは……あ、あはは」
まるで取ってつけたような渇いた笑いに、
「そうなのか?」と、蓮水さんが不思議そうに首を傾げる。
「ええ、はい、それならきっと毛布でも抱いて寝られていたんじゃ……きっと、そうですから」
昨日の夜のことが頭に浮かぶと、それだけで顔が熱っぽくなるようで、うつむいて必死で照れを隠す。
「毛布か……。もっと感触が違ったようにも……」
感触だなんて言われて、照れくささが一気に全身を覆う。
「よ、よっぽど、ホテルの毛布と相性がよかったのでは……」
しどろもどろで苦しい切り返しをして、
「あっ…と、そうだ、シャワーを浴びてこられたらどうですか? 酔いも覚めると思いますので」
なんとか話題をそらそうと、うつむき加減のままでバスルームを指差した。
「ああ、そうだな」と、彼が頷いて、「酔ってあまり記憶もはっきりしないなど、酔い覚ましにシャワーでもした方がいいな」と、ベッドから立ち上がった。
危なかった──……。私を抱いて寝ていたなんてことは、このままどうか記憶の奥底に封じ込めて忘れていてもらえたらと──。
そう思う反面で、やっぱり忘れないでいてほしいという気持ちもあって、やや複雑な心境にもなるようだった……。