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#限界メンバー
翠♪(不定期投稿)
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何かがおかしい気がした。勘と言うやつだろうか、目の前の男に対する違和感が凄まじい。ぬるま湯が口いっぱいに詰め込まれているような、そんなちっぽけな違和感だった。
目の前でへらへら笑っている、青井らだお。周りにいる署員たちからの人気も高く、なんだかんだ常に騒ぎの中心にいるような男だ。ほんの少しの違和感を覆い隠せてしまう男だ。
そんな男のおかしなところを、すぐに見つけてしまうのが成瀬力二だった。
「らだおー、どしたん。飯?」
「…お、成瀬じゃん。なにが?」
「質問に質問で返すなよ。なんかそわそわしてんじゃん」
「えぇ…、そわそわ?してたっけな」
「エ、無自覚マジか。少女漫画の主人公みたいな動きしてたって」
事実である。まさにうわの空、心ここにあらずとはよく言ったものだ。被っている鬼の隙間から見える目は泳ぎまくっていたし、反応が遅い。ワンテンポ毎回遅れている。しかもその遅れを笑いで誤魔化す。悪循環にもほどがある会話を繰り返すのだから、原因を探ってやろうという気概は決して悪意によるものではない。きっと。
ついでとして青井に手錠をかけて、署員たちから逃げるようにして連れ去った。いつものことなので青井も何も言わなくなってきた。あまり慣れてはいけない気はするが、それを口に出すのは負けた気分になるので成瀬も何も言わない。男二人で無言の逃避行だ。虚しさが勝つ。
「…なに、つぼ浦さんでも気にしてんの?」
「は、いーや?んなわけない。つぼ浦とか知らんわ」
「薄情だなコイツ。まぁまぁ、そういうの良いから。話してみなって」
「えー、マジでなんもないよ?」
「いいからいいから、ほら。はよせんと俺が闇落ちする」
「自分を人質にすんの?えー、成瀬が闇落ちすんのもおもろいな」
「やっぱ薄情だわ。らだおサイテー」
心がないと言われる所以はこういうところじゃないだろうか。うー、だとかあー、とか唸っているのを黙ってみておく。成瀬としては既に結論は出ているのだが、青井がどう捉えるかは聞くまでわからないので待つしかない。さっさと諦めてくれねえかなとか思いながら手錠を準備。青井が逃げるようならすぐ捕まえられるように。
「…つぼ浦ってさ、いつも無茶苦茶じゃん。ドタバタしてるし」
「あー、目が離せないんだな?」
「声デカいし」
「それはそう」
「しかもあいつってなんか眩しくない?目に悪いんだよ」
「瞳孔開いてんじゃん」
成瀬の結論は間違っていなかったらしい。青井はプライドに障るのか首を横に振りながら愚痴を呟く。もはやそれを愚痴と認識しているのは誰一人としていなかった。
「つぼ浦に話しかけようとすると脈早くなるし」
「恋だろ、もう無理だよ。諦めな」
「……つーか俺のこと避けるし」
「気になってんじゃねえか」
丁寧に解いていけば、なんてことない一人の人間の嘆きにしかならなかった。惚気を聞くのは途中で飽きる。荷物を圧迫する飲み物を適当に飲みつつ話を聞けば、ボロボロと愚痴という名の恋バナが捗っていく。
ふと、青井が諦めた。
「あー…そっ、か。しくじったなぁ、惚れちゃった」
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感化されました。太宰治の「斜陽」に感化されました。