それはある夏
「ゆき!はやく!!」
「、はぁっ、、まって、、」
「ゆきってほんと体力ないよな」
「、仕方ないじゃん、、」
「ほら、掴まって」
そう言って京介は手を差し伸べた。その手を取ると、ぎゅっと握られた。
「お前ら遅いぞ!」
前を走っていたハルが喚きだす。
「ハルが速すぎるんだよ!」
「はぁ?お前が遅すぎんの!!」
「お前ら何回目だよ、。いいから早く行くぞ」
京介はそう言い歩きだした。僕とハルは京介の隣に並んだ。
目的地、そこは家の近くにある森の中の秘密基地だった。森の中にポツンと建っている、今にも崩れそうな小屋。3人で探検をしている時に偶然ハルが見つけたのだ。
僕らは、ときどき秘密基地に集まっては、家から持って来たお菓子を食べたり、おもちゃで遊んだり、虫取りをしたりした。
「ゆき!お前お菓子ばっか食うなよ!」
「んむ?」
「まあまあ」
「京介はコイツが太ってもいいのかよ!」
「俺は別に。むしろゆきは痩せてるから太った方がいいと思う」
「はあぁ?てかなんでコイツこんな食ってんのに痩せてんの」
「小食なんだろ」
「もう知らね」
中学に上がると、京介は剣道部に、ハルは塾に入った。だから自然と秘密基地には行かなくなった。でも僕は放課後、ハルの家に通うようになった。ハルのお母さんは優しく穏やかで、綺麗な人だった。専業主婦らしく、ずっと家にいて僕が来るのを楽しみにしてくれた。
僕にはお父さんがいない。僕のお父さんは僕が生まれる前に亡くなったらしい。だからお母さんは朝から晩まで働いていた。朝早くに出て行き、夜遅くに帰ってくる。
家では、いつも1人だった。家と言っても、古くてボロいアパートだ。ゲームやおもちゃは持っていなかった。生活が苦しいのを知っていたから、欲しいとも言えなかった。それに対しハルはなんでも持っていた。ハルは広い庭がある、二階建ての綺麗で可愛らしい一軒家に住んでいて、ゲームやおもちゃも沢山持っていた。
そしていつも、お母さんがいて、。
正直、羨ましかった。
僕は自分の家が嫌いだった。だから放課後はハルの家に居座り続けていた。ハルの家族はそんな僕を受け入れてくれていた。ハルの家に着くと、ハルの妹、美月ちゃんと一緒におやつを食べて、その後はゲームをしたり、2人とおしゃべりをした。
ハルが塾から帰ってくると一緒にゲームをした。それからしばらくするとハルのお父さんが帰って来て、5人で晩ご飯を食べて、その後僕は自分の家に帰る、そんな生活を1年ほど続けていた。ハルの家は、僕にとってかけがえのない存在だった。
その日は突然にやって来た。
その日、僕らは僕の家でお泊まり会を開いていた。なんかお化け屋敷っぽくて良くね?っての事で開くのを決定した。電気を消し、懐中電灯の灯りの下で話をした。
「…で、後ろから白い服をきた髪の長い女が…」
「もうやめようってば!」
「え、ゆき怖いの?」
「こ、怖くないけど」
「wそろそろ辞めた方が良いって」
「そんな笑うなよ。京介、オバケよりお前のが怖い」
「いいから、もう寝よ」
「はいはい」
僕達は布団に入った。
部屋はしんと静まりかえっていて、いつも1人でいる時とは違ってなんだか不気味に感じた。
「改めて思ったけど、ゆきって凄いな。ここでいつも1人で寝てるんだろ?」
ハルが話はじめた。
「まあ、一応ずっと住んでるし」
「俺だったら1人で眠れないわ」
「え、やっぱりハル怖いの?」
「は?怖くねーし!」
「お前らうるさい!」
「京介は何ともないのかよ!」
「別に。布団があれば寝れる」
「京介って以外と精神図太いんだな、、」
ハルがそう言った時だった。
プルルルルル
突然、家の電話がなった。
今は12時を過ぎていた。
「こんな時間に誰だ?」
「ゆきのお母さんとか」
「多分違う。お母さん今仕事中だし、」
「え、じゃあ、?」
「誰か取りに行けよ」
「えぇ?」
「もしかたらゆきのお母さんかもだし」
「誰が行く?」
と僕が聞くのと同時に京介が電話を取った。
「もしもし、」
僕とハルは耳をすませた。
「え、」
「今、代わります」
「誰?」
京介はその問いには答えず、
「ハル、代われって」
そう言った。ハルが受話器を取ると京介は神妙な顔つきで黙り込んでいた。
「…え、おばさん?」
「…嘘、だろ?は?…」
「…分かった。待ってる、、。」
電話が切れたらしい。
ハルの手から受話器が滑り落ちた。
「…?」
「どうしたの?」
僕は受話器を拾い上げると元の位置に戻した。
ハルの様子がおかしい。京介もだ。
「何かあったの?」
「家に、、火が、」
ハルの声は震えていた。
「え?」
「火事だって、」
「…え」
「遅いから、おばさんが迎えに来てくれるって」
「…まって、火事って」
「ハルの家で火事が起きているらしい」
ハッキリと、京介が言った。
コメント
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スミマセン、めちゃくちゃ長くなりました、、ハル君集もう少し?続きます!