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「羅紫ー!行こ!!」
「はいはーい。」
結局飴と鞭大会は乱歩さんが制し、願い事は私の1日を差し出す、という物だった。
久しぶりの休みだ、行く所はもう乱歩さんが決めているみたいだし楽しもう。
偶には、と思いいつもの和服ではなくルーシーちゃんのようなひらひらとした洋服を着て化粧も薄く施した。髪型も三つ編みで一つにまとめ、竜胆をモチーフにした髪飾りを結び目につけ、いつもよりは凝った服装にした。
…なんだか、デヱトみたいだ。
「お待たせしました!乱歩さん!」
社員寮から顔を出し、目の前の桜の木の下にパーカー姿の乱歩さんを見つける。
いつものThe!名探偵!の服ではなく、ちょっと新鮮。
「待ちましたか?慣れない服で時間かかっちゃいました…」
「いや、それより洋服の羅紫って珍しいね。いつもよりも可愛いじゃ無いか。」
「かわっ?!…いやいや!乱歩さんもかっこいいです!あ、いつもは可愛いって感じなんですけど、今日はなんだかカッコよく見えちゃいます…」
「ッッ!ああもう!ほら、さっさと歩く!」
突然顔を赤くし、回れ右をしてズンズンと進む。
照れた?矢張り可愛い。 然し、何処へ行くのだろう?
「待ってくださーい!乱歩さーん、今日は何処に行くんですかー?」
「おお!良い質問だ。今日は駄菓子カフヱという所に行くのだよ!」
「ああ!最近できたあのカフヱ!丁度行ってみたかったんですよ!」
「ふふん、そんなこと僕にはお見通しさ!!!」
流石乱歩さん、行ってみたかった所に連れて行ってくれるとは。
これまでにないくらいテンションを上げ、るんるん気分で着いて行く。
「電車で二駅目のところにあるらしいから、羅紫!連れてって!」
「ああ…やっぱりそれは私の役目なのね…」
しばらく電車に揺られ、二駅目で下車をする。週末だからか、人で混み合っていた。
「わあ…人が多いですね…酔いそう…」
「そうだな、早く出よう。ホラ、いこう!」
そう言い、ぎゅっと私の手を握って小走りで駅の外へと行く。
子供っぽいと思っていた彼の手は意外と大きくて暖かかった。
「これじゃ本当に恋人みたいですね。お出かけに、手を繋いだり…」
「僕としてはそうでも良いんだけどね!」
「え?」
聞き捨てならない言葉が聞こえてしまった気がする。もう一度聞きたいが、聞く前に駅の外へ出てしまった。
「…(まあ勘違いかもしれないし。駄菓子を楽しもう!)じゃ、じゃあ!行きましょ!」
「うん!あ、こっちこっち〜」
なぜか手を繋いだまま歩いている。んー?あれか、母を求めているのか?
「僕別に母なんて求めてないよ。」
「心の中推理しないでください!」
母は求められていなかった。…まあ手繋いだところで減るもんじゃないし、いっか!
しばらく歩いていると可愛い造りのお店が目に入った。
「わあ…ここですよね!早く入りましょ!」
あまりにもドキドキしすぎて急かしてしまう。
店内は若い人たちでごった返しており、ちょうど私達と入れ違いで二人組が出ていったのでスムーズに座ることができた。
「ん…あ!私、駄菓子いちごパフェにします!乱歩さんは?」
「僕は駄菓子プレート!」
「駄菓子プレート…?なんだか美味しそうですね!」
「ふふん、羅紫なら一緒に食べてもいいよ!」
「ありがとうございます!あ、じゃあ私のも一緒にたべましょ!」
ゆるい会話をして、店員さんに注文をする。
待っている間に他愛もない話で盛り上がった。
「あ、乱歩さん、きましたよ!」
「おお、美味しそうだ。」
乱歩さんのプレートは一面駄菓子で埋め尽くされていた。しかも所々アレンジもくわわっているようで、現物よりも美味しそうなのもある。
「羅紫も届いたよ。ハイ。」
「おおおお…」
私のパフェはいちご味の駄菓子で作られていた。ねるねるねるねるやゼリー、ポッキー、ウエハース、そのほかいろいろな駄菓子でできていた。
「いただきまーす!」
口に運ぶと甘さが一気に広がる。非常に甘くて美味しい。
思わず顔が綻んでいると、乱歩さんもおんなじ表情をしていた。
「あ、乱歩さん!少し上げる約束でしたよね。どうぞ!」
容器を差し出すとなぜか不服な顔をされた。
「僕今両手が塞がってるから羅紫が食べさせて!」
「ええええ…んじゃ、はいどうぞ。」
容器から一部をすくい、口元まで持っていって食べさせる。
なんだか鳥の雛に餌付けをしている感覚だ。
「あ、じゃあ乱歩さんのもください!」
「ん、いいよ!口あけて?」
「?あー…んむっ?!」
指示通り口を開けるとラムネ味の綿飴が口の中で溶けた。
「これ、乱歩さんの好物じゃないですか。よかったんですか?」
「羅紫だからいーの!」
んんんんん謎理論。
食事を終えた頃には、夕方の一歩手前というような中途半端な時間になっていた。
「さて、帰りますか?」
「いーや!後一つ行くところがあるんだ。」
「?行きましょー!」
食後の運動にはちょうど良い。心なしか真剣な表情の乱歩さんについていくと、海へとついた。
「海?…」
「そう!僕あまり海っていったことがないんだけど、この場所だけはきたことがあるんだ。」
歩いているうちに日が傾いたのか、昼間は真っ青な海がマグマのように赤くなっていた。
「綺麗ですね…」
「だろう?……ねえ、羅紫。手出して。」
「?はい。」
「……………………………」
言われた通りに手を出すと手首にそっとキスを落とした乱歩さん。
最初は硬直してしまい、何が起きたのかよくわからなかったが、その後じわじわと顔が熱くなる。
「え?!ちょ、え?!い、今、キス…?!」
「ん、じゃあ帰ろ!羅紫!」
「えっ…えっ…ええええ?!」
乱歩さんの顔が夕日によって赤く照らされていた。
とりあえず帰るらしいので顔を手で仰いで冷ましながら急いで着いて行ったのだった。