テラーノベル
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お祭りが最高潮に盛り上がってきた、その時だった。
「あの…えとさん…」
どぬが、小さくえとさんの服の裾を引っ張った。えとさんがしゃがみ込むと、どぬは耳元で小声で囁いた。
「トイレ…」
えとさんは一瞬顔を青くしたが、今日は事前にトイレの場所や時間を決めて、全員がどぬのペースに合わせていた。えとさんが「よく言えたね!」と頭を撫でながら、すぐにトイレへ連れて行く。今回はギリギリセーフだったようだ。えとさんはホッと胸を撫で下ろした。
しかし、一方で異変は静かに進行していた。射的を楽しんでいたヒロくんが、急に座り込んだのだ。
「ヒロくん、どうしたの?」
るなちゃんが駆け寄ると、ヒロくんは小さな体でブルブルと震えていた。顔は真っ赤で、額にはじんわりと汗がにじんでいる。るなちゃんが触れると、信じられないほどの熱さだった。
「るなちゃん…さむい…」
その言葉に、るなちゃんの顔から血の気が引いた。まだ本調子ではなかったヒロくんの体が、夏祭りの興奮と疲れで、無理をしてしまったのかもしれない。急いで体温計を取り出すと、表示された数字は39.5℃。
「ヒロくん!?」
るなちゃんの悲鳴のような声に、楽しいお祭り騒ぎは一瞬で静まり返った。じゃっぴやなお兄、もふくんが慌てて駆け寄る。せっかくの夏祭りだったのに、またしても体調不良の波が押し寄せてきた。
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