クスシキのりょさんの胸元を見てからずっと考えてたこと。
公式様の言及があるかもですが、妄想ですので許してください。
前半りょさん視点、後半ぱ視点。💛さん愛され、三人お付き合い。
「え……?」
新曲のミュージックビデオ撮影初日、誂えてもらった衣装を着るために更衣室でアンダーシャツを脱いで絶句する。
全身鏡に映る自分の胸元に残っている、覚えのないふたつ横並びの痕。
いや、正確には心当たりはあるけれど、今日が撮影日と分かっているからまさか痕をつけられるなんて思っていなくて。昨晩のシャワー浴びたときにはなかったはずだから、着けたとしたら深夜か今朝ということになるわけで。
朝着替えるときになんで気づかなかったんだろ……。みんなでちょっと寝坊して慌てたからだろうか。間に合ったからよかったけど……。
どーすんのこれ。
僕の衣装は何枚も着物を重ねてはいくものの、首元、襟の部分は開いていて素肌が見えるようになっている。他でもなく元貴がイメージした世界なのだから、一番よくわかっているはずなのに。
絆創膏か湿布でも貼って隠して、CGで誤魔化す? ファンデーションの方が自然かな……。
「着替えたー?」
ノックと同時に聞こえたのんきな声にハッとなって振り返る。
「え、なんでまだ着替えてないの?」
「も……元貴でしょこれ!」
胸元を指して叫ぶと、きょとんとしていた元貴がぱちくりと瞬きをして、ああ、と頷いてにこっと笑う。
「いっこは俺。もういっこは若井。……って、うそ、今まで気づいてなかったの?」
「ぜ、ぜんぜん気付いてなかった……。いつつけたの?」
「朝? 深夜? 涼ちゃんが寝たあとすぐ。一応付けていいか訊いたよ? そしたらいいよーって言うから」
全然覚えてない……。そもそも寝たあとに取った許可なんて意味なくない? え、若井の寝言並みに意味ないよね? というか若井も一緒になって何やってんのよほんと。どっちか止めてよ。
「どーすんのこれぇ!」
「なにが?」
「な、なにが……? え、今日撮影だよね?」
「そうだよ、早く着替えなよ」
「や、は? これ、見えちゃうよね?」
「ああ、そう言うこと? 大丈夫だから早く着替えなって。ヘアメイクも待ってるんだから」
なんか僕だけ慌てて、元貴はいつも通り、いや、いつも以上に楽しそうで。
他でもなく元貴が大丈夫だって言うんだから大丈夫なんだろう。自分にそう言い聞かせて、衣装を羽織った。
煌びやかな羽織はヘアメイクの後らしいので、最低限の衣装を纏っていく。最低限と言っても今回はやたら装飾が多くて、元貴の手も借りてどうにか着込んでいく。ふわふわ、ひらひらと裾や袖が揺れる。
「……うん、似合う」
細かいところはヘアメイクさんや衣装さんに調整してもらうけれど、取り敢えず形となった僕を見て、満足そうに鼻を鳴らして元貴が笑った。
きれいだね、と頬を撫でられてふふ、と笑う。元貴と若井に褒められるのが一番嬉しい。
自分の姿を鏡で確認すると、日本では馴染みのある韓国とか中国のオリエンタルな感じの衣装の胸元にふたつの痕が隠れることなく見えた。衣装が白い分、そして隙間になったことによって強調されて余計に目立ってしまっている。
「……どうするの、これ」
ちょっと泣きそうになりながら訊くと、元貴はすっと手を僕に差し出した。
「おいで」
その手を取ってエスコートされるまま椅子に腰掛ける。
元貴は自分の荷物からメイクブラシと小さな容器を取り出し、僕の前に座った。
「元貴がメイクするの?」
「しないよ、顔はプロに任せる。これはボディペイント」
じっとしててね、と言うと、容器の蓋を取ってオレンジ色の絵の具をブラシに乗せた。
「……ッ」
「こぉら、動かない」
そっと触れた筆先がくすぐったい。指先よりもやわらかに肌をすべる感触は慣れないけど、言われた通り息を止めるようにじっとしているよう努める。
「……ん、乾くまでそのままね」
動いてもいいよ、と許しを得て身体を捻って鏡で見る。痕があった場所に、オレンジ色の花が咲いていた。
「わ、かわいい!」
僕の反応を見て元貴が笑う。
「これはね、蓮の花」
「はす?」
「そう、モチーフにしたってくらいだけど。オレンジなのは、涼ちゃんに似合うからって言うのと、まぁ、ちょっとした自己主張、かな」
自己主張? と首を傾げる。
元貴はにこにこと笑ったまま、何も言わなかった。
とにかく無事に痕は隠れたし、ペイントは可愛いし、ペイントの下には元貴と若井から愛された証があるし、なんだか嬉しくなって笑顔になる。
「さ、メイクしてもらおっか。涼ちゃんが一番大変だと思うけど、絶対いいやつになるから」
「うん、信じてるから大丈夫」
元貴の判断なら、何があってもついていくって決めてるから。
よどみなくそう告げると、元貴が顔をむぎゅっとした。表情筋豊かな彼の、照れ隠しのときによくやるやつ。
「メイクする前でよかった」
元貴の指が僕の顎をすくう。触れるだけのキスだったけど、とろけそうに甘かった。
二人並んで控え室に向かうと、青いカラコンを入れた若井がすぐに僕のペイントに気づいた。
「え、なにそれ可愛いじゃん」
「でしょ! 元貴が描いてくれたんだよ、蓮の花なんだってー」
「ふーん……黄色じゃないんだ?」
その問い掛けは元貴に向けられていたけど、元貴は薄く笑うだけだった。そのあと僕はメイクさんに呼ばれて、元貴が考案したアイメイクやリップを塗ってもらっていた。
「オレンジねぇ」
「……なに」
「別に? まぁそのくらいは譲るよ、緑はイメージに合わないし? 黒にするのも違うしね」
俺の言葉に、元貴は眉間にしわを寄せて溜息を吐いた。
「……おまえはすぐ気づくのに」
どうやら涼ちゃんは気づかなかったようだ。小さく笑う。
「そこはまぁ涼ちゃんだし。で、あの蓮は? どうせなんかの意味あるんでしょ」
「うーん、ま、ね」
そのまま黙った元貴が教えてくれることはないだろうと判断して、涼ちゃんのメイクの確認のためにそばを離れた隙にスマホで検索をかける。
『蓮――恋(れん)と音を同じくする恋人の象徴。美しい花・君子の象徴・純粋の象徴・物事の連続・成長や再生の象徴』
「……へぇ」
赤と黄色を混ぜた色で描かれた恋人の象徴が、涼ちゃんの胸元でうつくしく咲いていた。
その下に息づくのは、俺と元貴からの愛の証だ。
終。
あの胸元、たまらなく好き。
コメント
6件
あっ...最高です😆😆 藤澤さんなら付けていいか聞いた時に絶対適当に返事してそうですね、、笑
私も昨日動画見て、被りものを脱いだ💛ちゃんがまた可愛くてキャーキャーなりました🤭💕 そして、あの胸元もめちゃくちゃ良いですよね〜🧡 このお話も最高です✨
最高すぎる