コメント
3件
あああ愛激重大森サン!! 好みすぎる...、、どんなストーリーでもかけるの天才すぎです😆
多忙と気圧のせいで回らない頭でふと浮かんだ話。
激重感情を拗らせた二人(❤️💛)がだいすき。ちょっと暗い(?)ので苦手な人はご注意を。
すぴすぴと眠る涼ちゃんをベッドに腰掛けて眺める。
数時間前まで扇情的な表情を浮かべていたとは思えないほどあどけなく、幼ささえ感じてしまう寝顔。十数年の付き合いになるけれど、この顔だけは変わらない。
体重の増減でフェイスラインが変わったとしても、これだけはずっと一緒で、大好きな表情だった。
ほんわかした雰囲気が好きで、どうにかして捕まえなくちゃと焦って伸ばした手を、驚くほどあっさりと握った涼ちゃん。
名前さえ知らないガキだった俺の手を引いて、先に行くでも後をついてくるでもなく、ただ隣にいてくれた優しい人。
幼馴染ゆえの傲慢さで、若井は俺のことをよく理解していた。その理解は時に俺を孤独にしたし、傷つけたし、癒してもくれた。
涼ちゃんはそんな俺たちを外側から見つめて、決して俺を独りにしなかった。
「……涼ちゃん」
ちいさく、ひそやかに名前を呼ぶ。
すぅすぅと聞こえる寝息と静かに上下する肩。闇の中にぼんやりと浮かぶ肢体はしなやかで、艶かしさもなかったけれど、ただうつくしかった。神聖な生き物を眺めている気分だ。
「涼ちゃん」
何度でも名前を呼びたくなる。そこに彼が確かに存在していることを実感したくて、頬にかかる伸び始めた髪をやさしく払う。
「ん……」
小さくむずがるように声を漏らし、それでも起きることなく眠りこけている。
ああ、可愛い。
およそ三十路を超えた成人男性に使う表現ではないにせよ、恋人フィルターが働いているにせよ、とにかく涼ちゃんが可愛くて愛しくて仕方がなかった。
眠りこける涼ちゃんは静かだ。普段の独り言が多くて明るく元気な印象があるせいか、静かだと消えてしまいそうな儚さを感じさせる。
深夜であることと静かな空間で寝たいから防音設備の行き届いた部屋を寝室にしていることで、狭い寝室という世界の広いベッドの上で揺蕩っているような不安定なのに安心できる感覚。
楽曲を制作するたび、自分の中にある不足して枯渇しているものを並べて、自分の中のイマジネーションを高めて表出するけれど、誰かにいてもらわないと壊れてしまいそうになることが多々あった。
その“誰か”はいつも涼ちゃんだった。
誰かにいてほしいと願ったとき、誰かを渇望したとき、希望とぬくもりをくれるのは、いつも涼ちゃんだった。
「涼、ちゃん」
彼がここにいてくれるだけで幸せだった。彼にいて欲しいと希っていた。
どこにも行かないでほしい。ただ傍にいてほしい。俺だけを見ていてほしい。手を取って、抱き締めて、キスをして、肌を重ねて、名前を呼んでほしい。
俺だけを求めてほしい。彼の中の世界が、俺だけで埋め尽くされてほしい。
誰にも見せたくない。俺のことだけを考えて、俺のためだけに生きて、俺のために死んでほしい。
俺だけを愛して、俺だけに愛されて、俺がいなければ息ができなくなればいい。
俺はあなたがいないと、呼吸の仕方さえ忘れてしまうんだから。
あなたがいないと、生きている意味さえ見失ってしまうんだから。
「……もとき?」
掠れたやわらかな声が俺の名を紡ぐ。
だから俺も、やわらかく愛を紡ぐ。
「りょうちゃん」
ぼんやりと開けられた二つの目が、俺をしっかりと捉えた。
無言でじっと俺を見ていたと思ったら、緩慢に両腕を開いた。
引き寄せられるように涼ちゃんの腕に飛び込んだ。
とくとくと聞こえる心音。彼の生の息吹だ。
「……りょうちゃん」
「うん」
「おね、がい」
「うん?」
「ずっと、俺だけのものでいて」
神に祈るように呟く。よしよしと俺の背中を撫でる涼ちゃんの手が止まる。
「……ふふ」
直後に聞こえた、吐息のような笑い声。視線を上げると甘くて恍惚とした瞳とかち合う。
「初めて会ったときから、俺は元貴のものだよ。手を取ったあの瞬間から、俺は元貴のために生きて、元貴のために死ぬって決めたの」
だから、元貴が要らないって思ったら、その時は、元貴の手で俺を殺してね。
終。