テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
超人気グループ『splash』のセンターとして、今日もバキバキに踊り狂ってきた。
でも、俺にとっての「本番」は、家に帰ってからだ。
自室のベランダ。薄暗い中、隣の部屋から聞こえてくるスニーカーの摩擦音。
パーティションの隙間から覗くと、そこには冴(さえ)がいた。
前髪なしのロングヘアを振り乱して、イヤホンをしながらダンスの練習をしている。
今日の彼女は、丈の短いキャミソールにダボっとしたスウェット。……へそ出し、最高。でも、風邪ひくから今すぐ上着を貸してやりたい。
「……はぁ、マジで尊い。全細胞が浄化される……」
パーカーのフードを被り、マスクをしたまま、俺は思わず声が漏れた。
その瞬間。
冴の動きが止まり、鋭いつり目がこっちを射抜いた。
「……ねえ。隣のあんた、さっきから何ジロジロ見てんの? キモいんだけど」
そんなある日、仕事から帰って、splashの衣装のままソファに倒れ込んだ。
「はぁ……今日のライブも疲れた。でも、冴のSNSチェックしなきゃ……」
スマホを開こうとしたその時。
ピンポーン!ピンポーン!!
狂ったようにインターホンが鳴り響いた。
(えっ、ストーカー!?……いや、俺がストーカーみたいなもんだけど、誰!?)
モニターを覗くと、そこには――。
ロングヘアをなびかせ、つり目で画面を睨みつける、冴(さえ)が立っていた。
「……ちょっと、隣のキモいあんた。今すぐ出てきなさいよ」
……終わった。
今、俺はばっちりメイクにキラキラのステージ衣装。
このままドアを開けたら、『splashの凪』だって秒でバレる。
心臓がバクバクいってる。衣装のスパンコールが、室内のライトに反射してキラキラ光る。
ドアの外では、冴(さえ)が「ちょっと、無視すんなし!」って怒鳴ってる。
(……逃げられない。なら、いっそ――)
俺は深く息を吸い込んで、鏡の前で培った『splash』のセンター、凪としての完璧な笑顔を作った。
ガチャリ。
ドアを開けた瞬間、廊下の冷たい空気が流れ込む。
そこには、つり目をさらに鋭くして、驚きで固まった冴がいた。
「……お待たせ。そんなに俺に会いたかった?」
あざとく首をかしげて、カメラの向こうのファンにするみたいに目を細める。
「……え、あ……」
「テレビの通りでしょ? 隣のキモい奴が、君の推しの凪くんでしたー、なんて。……びっくりした?」
余裕ぶってるけど、実は背中には冷や汗。
だって、ここからが本番だから。
「……で。正体バラす代わりに、一つ条件があるんだけど。――いいよね?」
コメント
5件
いやいやいや!めっちゃ最高の展開じゃん!推しが隣のキモオタだったとか、しかもそれがセンターの凪とか…ギャップがえぐすぎる!つり目で睨んでくる冴も、完璧な笑顔かます凪も、めっちゃキャラ立ってて一気に世界観に引き込まれたわ。ここからの条件…なにを出すのか超気になる!続き待ってます🔥
747
39
1,271
#コメント待ってます!