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ドアを開けて、驚きで固まっている冴(さえ)の顔を覗き込む。
「……びっくりした? そう、隣のキモいのが、君がテレビで見てた凪くんでしたー」
あざとい笑顔を作りながら、俺は一歩、彼女との距離を詰めた。
冴が「……っ、ちょ、近……っ」って後ずさりする。
「正体、バラさないでいてくれるよね? その代わり……一つだけ、俺のわがまま聞いて」
俺は、冴の肩にかかっている細いキャミソールのストラップを指先でトントン、と叩いた。
さっきまでのキラキラしたアイドルの声じゃなく、少しだけ低くて、本気のトーンで。
「……その、露出多めの服。俺の前以外で着るの、禁止ね。」
「……はぁ!? なんであんたに……っ」
「だって、俺以外の男に、そんな可愛い冴を見てほしくないんだもん。……いいでしょ?」
上目遣いで、ずるい笑顔を作る。
でも、握りしめた手のひらは、汗でびっしょりだった。
「え?なにこれ」
自然と声が漏れた
仕事の合間、必死にマンションに帰ってきた。
理由は一つ。冴(さえ)のSNSに上がった、見慣れない男の影が気になって死にそうだったから。
エントランスで、俺は見てしまった。
露出多めのオフショルニットを着た冴が、背の高いイケメンと親しげに笑い合っているのを。
しかも、その男が冴の頭をポンポンって……。
(……は? 誰、あの男。……彼氏? 嘘だろ、聞いてない……っ)
俺は気づいたら、二人の前に飛び出していた。
「……ちょっと、待ちなよ。冴」
いつもなら作るはずの、アイドル『splash』の完璧な笑顔なんて、どこにもない。
パーカーのフードも被らず、マスクもズレたまま。
「……俺以外の男と、そんな格好で会わないでって……言ったじゃん」
声が震えてる。あざとい俺はどこに行ったんだ。
「ねえ、その男、誰。……俺より、そいつがいいの?」
つり目を丸くして固まる冴。
その隣で、そのイケメンが「……え、お前、誰?」ってポカンとしてる。
「凪、お兄ちゃんだよ」
「……お、お兄ちゃん? ……はぁ? 何、お兄様ってこと?」
冴(さえ)の冷ややかな一言で、俺の時が止まった。
隣のイケメンが「……あ、俺、冴の兄貴だけど。お前、なんか冴に用?」って、不思議そうに俺を見ている。
(……やらかした。俺、今、全速力で勘違いして、アイドル失格レベルのメンヘラ発動した……)
一瞬で、頭の先から足の先まで沸騰したみたいに熱くなった。
顔が、多分これまでにないくらい真っ赤。スパンコールの衣装よりも、俺の顔の方が輝いてる自信がある。
「……っ、も、もう! 紛らわしいんだよバカぁ!!」
俺は、自分でも引くくらいの裏声で叫んで、そのまま自分の部屋に向かって猛ダッシュした。
背後で冴が「ちょっと、凪! 待ち……っ、あははは! どんだけ赤くなってんのよ!」って、あんなに爆笑してる声が聞こえる。
(……無理。もう死ぬ。明日から、どんな顔して『splash』のセンター立てばいいんだよ……!!)
バタン!とドアを閉めて、俺は玄関に座り込んだ。
心臓がうるさすぎる。……でも。
「……あー、お兄ちゃんで良かった……マジで良かった……」
コメント
3件
うわああ第2話読み終わったよ〜!!😭💕 凪くんの嫉妬深いヤキモチシーン、めっちゃキュンときた…!!「俺以外の前でその服禁止ね」って上目遣いで言ってくるの反則すぎるでしょ!!笑 でも最後の兄登場からの全力ダッシュ&真っ赤になるギャップが尊すぎて悶えた…「死ぬ」「マジで良かった」の心情の揺れ、リアルでしかない🥺✨和奏さんの書くカップル、もっと見たい〜!!次の話も楽しみにしてるよ🌸