テラーノベル
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天文部に入部してから、一か月ほどが経った。
五月の風は心地よく、放課後になるとこさめと捺は当たり前のように屋上へ向かうようになっていた。
こさめ「ただいまー!」
屋上の扉を開けながら、こさめが声を上げる。
尊琴「おかえり~」
真っ先に返事をしたのは尊琴だった。
望遠鏡の横に座りながら、のんびりと手を振っている。
こさめ「みこちゃん、今日も早いね」
尊琴「今日は授業が早く終わったからね」
すると隣から声が飛んできた。
蘭「こさー!」
蘭だった。
なぜか双眼鏡を逆さにして覗いている。
こさめ「らんくん何してるの…」
蘭「小さく見える!」
こさめ「そりゃそう」
蘭「発見した」
こさめ「昔からあるよ」
そのやり取りを聞いていた捺が吹き出した。
捺「らんちゃん今日も絶好調やな」
蘭「当然です」
捺「胸張ることじゃないだろ」
蘭「え、違うの?」
いるま「違う」
いるまが即答した。
どうやら今日はバスケ部の練習が休みらしい。
屋上のフェンスにもたれながらジュースを飲んでいる。
こさめ「まにき!」
いるま「なんだ」
こさめ「らんくんがアホ!!!」
いるま「知ってる」
蘭「いるませんせー!?」
捺「事実だろ」
蘭「ひどくない!?」
屋上に笑い声が広がる。
入部する前は、天文部という名前から静かな部活を想像していた。
けれど現実は違う。
むしろ騒がしい。
特に蘭と捺とこさめが揃うと大変だった。
「そういえば」
尊琴がふと思い出したように顔を上げる。
尊琴「今度流星群あるんだって」
いるま「マジ?」
いるまが反応する。
いるま「いつ?」
尊琴「来週くらいかなぁ」
こさめ「見たい!」
こさめが目を輝かせた。
宇宙の話になると自然とテンションが上がる。
捺「流星群かぁ」
捺は空を見上げる。
尊琴「願い事三回言わなきゃいけへんな」
蘭「そんなに早く言える?」
捺「無理だな」
こさめ「じゃあ意味ないじゃん!」
尊琴「確かに」
そんな何気ない会話が楽しかった。
すると蘭が急に立ち上がった。
蘭「よし!」
いるま「何」
蘭「今から天体クイズ大会します!!!」
捺「なんで」
蘭「楽しそうだから」
いるま「部長、そればっかだな」
いるまが呆れたように言う。
しかし蘭は気にしない。
蘭「第一問!」
蘭「地球から一番近い恒星は?」
こさめ「太陽!」
こさめが即答した。
蘭「正解!」
こさめ「やった!」
蘭「第二問!」
いるま「早いな」
蘭「土星の環は何でできているでしょう!」
尊琴「氷と岩」
今度は尊琴が答える。
蘭「正解!」
こさめ「みこちゃん強い」
尊琴「副部長だからね」
こさめ「関係ある?」
尊琴「ないかもぉ」
ふわふわした返答にまた笑いが起きた。
気づけば夕日が沈み始めていた。
空が少しずつ橙色に染まっていく。
全員が空を見上げた。
屋上に静寂が訪れる。
ほんの数秒だけ。
すると――
捺「らん」
蘭「ん?」
捺「頭に葉っぱついてる」
蘭「え?」
いるま「朝からな」
蘭「なんで早く言わないの!?」
再び大爆笑。
静かな時間は長く続かなかった。
でも、それでよかった。
笑って、
騒いで、
星を見上げる。
それが今の天文部だった。
放課後の空には、一番星が静かに輝き始めていた。
コメント
1件
わあ、すごくいい雰囲気の日常話でしたね!1話で天文部に入ってからのひと月、もうすっかり居場所になってるんだなって感じが伝わってきました。蘭くんのノリや尊琴さんのふわっとした返し、それにツッコむいるま先輩と捺ちゃんのテンポが自然で、聞いてるだけで笑顔になっちゃいました。天体クイズ大会から急に夕日が差し込む静寂、最後に頭の葉っぱで笑いが戻る――緩急が心地よかったです。次回、流星群の話がどう動くのかすごく気になります!