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04. ふたりだけの夜
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ひめの家は静かだった。
両親は仕事で遅くなる。だから、ねねと二人きりになれる。
「ひめちゃんの部屋、落ち着くなあ」
ねねはベッドに腰掛け、ひめのクッションを抱きしめる。
細い指がクッションの布地を撫でる様子を、ひめはただ見つめていた。
「ねね、お茶淹れてくるね」
「ううん、いいの」
ねねが、すっと手を伸ばす。
そのまま、ひめの手首を掴んだ。
「隣に来て?」
引かれるままに座ると、ねねが満足そうに微笑む。
ひめの手を包むように握りながら、ねねはぽつりと呟いた。
「ねえ、ひめちゃん……誰かと話した?」
「え?」
「今日、学校で。……誰かと、仲良くしてた?」
ひめは一瞬、息を詰まらせた。
ねねの指が、ほんの少しだけ強く絡みつく。
「……別に、そんなこと……」
「本当に?」
ねねの瞳が、じっとひめを見つめる。
その瞳の奥に、淡い狂気が滲んでいるのがわかった。
――これは、試されている。
ひめの世界には、ねねしかいないと。
ねねだけが大切で、ねねだけを見つめていると。
だから、ひめは小さく微笑んだ。
ねねが好きな、儚い笑顔をつくる。
「うん。本当だよ」
ねねが、一瞬だけ静かになる。
そして――ふわりと、ひめを抱きしめた。
「よかった……」
囁く声が震えていた。
ねねの指が、ひめの背中をぎゅっと掴む。
「ひめちゃんは、ねねだけのものだもんね?」
「……うん」
答えないと、壊れてしまうから。
この甘い檻の中で、ふたりきりで生きていく。
それがひめにとって、唯一の幸せだった。