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今は朝の五時。太陽が顔を出すにはもう少しかかるようです。えっ? なんでこんな口調なのかって? それは。
「ねえ、ナオト? 昨日の夜、どこに行ってたの?」
ミノリ(吸血鬼)に尋問されているからです。
俺は正座で、ミノリは仁王立ちをしています。俺は鬼嫁に叱られるダメ夫でしょうか?
起きた瞬間「ちょっと話があるんだけど」と言われたから相談事かと思ったのに、とんだ勘違いでした。
「で? あたしというものがありながら、どこの女とイチャついてたの?」
「ご、誤解です。俺はただミサキのところに行って」
「行って?」
「その……少し……話をしただけです」
「ふーん、そうなんだ」
「あー、あと、じゃんけんをしました」
「へえ、そうなんだ……」
「た、ただ『じゃんけん』をしたわけじゃないですよ! 俺が勝ったらミサキの正体を教えてもらうという条件でやりました!」
「ふーん。それで? あんたは勝ったの?」
「……ま、負けました」
「……は?」
「ミサキには、先読みの能力があったので勝てませんでした」
「へえ……それで?」
「……?」
「あー、だから……その……ミサキの正体は分かったの? 分からなかったの?」
「あー、その、ミサキの正体は『四聖獣』の【玄武】らしいです」
「へえ、そうなんだ……」
「リアクション薄いですね」
「その口調で話すのはやめなさい。あんたらしくないから」
「……わ、分かった」
「それで? どうしてあたしを起こさなかったの?」
俺は一瞬、自分の耳を疑った。
「え? いや、だって、お前は寝てたから……」
「……バカ」
「ん? 今なんか言ったか?」
その時、ミノリは俺の襟首を掴んだ。ミノリのその行動に俺はひどく動揺した。
しかし、ミノリの目尻には何かが溜まっていた。
「バカナオト! ちゃんとあたしに声をかけてよ! あんたが一人でどこかに行っちゃうんじゃないかって不安になるから!!」
「……ミノリ」
「うっ……ひぐっ……あたしを……一人に……しないでよ……」
「……ごめん、ミノリ。俺、自分のことしか考えてなかった。でも、どうしてお前は……いや、モンスターチルドレンはそこまで俺を好いてくれるんだ?」
「……みんながあんたを好きな理由?」
ミノリは頬を伝っている涙を拭った。
「それはね、みんな……」
「みんな?」
「みんな、あんたのことが大好きだからよ」
「……ミノリ。それは理由になってないぞ?」
「今はそれでいいでしょ?」
ミノリはそう言いながら、俺に微笑みを浮かべた。
はぁ……ミノリの笑顔には敵わないな。
俺は心の中でそう呟くと、スッと立ち上がった。
その後、朝ごはんの準備に取り掛かった。
「分かった。今はそういうことにしておく」
「うん」
「朝ごはん、一緒に作るぞ」
「うん!」
その様子をこっそり見ていたマナミたちとヒカリ。な、なんだよ、その温かい目は……。
みんなの視線に気を取られつつ、俺とミノリは朝ごはんの準備に取り掛かった。
____今日の朝ごはんは、こんがり焼いたベーコンと目玉焼きと味噌汁と白ごはん。
あと、キャベツの千切りと食べやすい大きさにちぎったレタスのサラダというバランスの良い献立になった。
さすがにちゃぶ台が小さく感じたため、ツキネに頼んで固有魔法で大きくしてもらった。これで、しばらくは大丈夫かな?
ヒカリ(小宮 光。ナオトの高校時代の同級生)がごはんのお代わり(三回目)を要求したので、俺はごはんをついだ。
朝からよく食べるのは高校時代から変わらない。ア○メとク○メの食欲ほどではないが、それでもよく食べる方だと思う。(ア○メが斬る! に出てくる姉妹)
____食事が済むと、チエミとは別の妖精型モンスターチルドレンが部屋に入ってきた。
どうやら、ヒカリに用があるらしい。俺はヒカリとその妖精の会話をこっそり聞いた。
すると、俺たちとは別の場所に行く、ということが分かった。
その直後、俺はミサキ(巨大な亀型モンスターの外装)を一旦停止させるよう、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)に頼んだ。
外装が一旦停止すると、俺はコユリとヒカリと共に地上に降りた。(俺はコユリに降ろしてもらった)
「もう少しゆっくりしていってもいいんだぞ?」
俺がそう言うと、ヒカリは首を横に振った。
「そういうわけにはいかない。それにあまり長居すると勘違いされるからな」
「勘違い?」
「あー、こっちの話だ。忘れてくれ」
「ん? あ、ああ」
「……なあ、ナオト」
「ん? なんだ?」
「私はこれからこの世界のことを調べてみる。お前が少し前に出会った黒沢と合流できるかは分からないが、自分に今できることを精一杯やろうと思う」
「そうか。まあ、道中、気をつけろよ。またイノシシに襲われるかもしれないからな」
「あ、あの時は、刀が使えなかったのだから、仕方ないだろう! それに……」
「それに?」
「結果的に、お前が助けに来てくれたから……あれはあれで嬉しかった」
「おい、ヒカリ。顔、真っ赤だぞ?」
俺がそう言うと、ヒカリは俺に背を向けた。
「お前こそ、気をつけるのだぞ? ここは日本であって日本ではないのだから」
「ああ、分かってるよ。またな、ヒカリ」
「うむ。あー、そうそう昨日の晩に食べた『イノシシ鍋』は、なかなかうまかったぞ。では、また会おう」
「おいおい、別れ際にそれを言うのか? まあ、お前なら、そう言うと思ったけどな。じゃあ、またな、ヒカリ」
俺たちは、ヒカリと蒼髪ショートヘアと蒼い瞳が特徴的な妖精型モンスターチルドレンの後ろ姿が見えなくなるまで、その場に立っていた。(コユリは俺から少し離れたところに立っていた)
*
アパートに戻ると、ミノリたちは好きなことをしていた。
マナミ(茶髪ショートの獣人)とシオリ(白髪ロングの獣人)は『お絵かき』。
シズク(ドッペルゲンガー)とチエミ(体長十五センチほどの妖精)は『おはじき』。
ツキネ(変身型スライム)は『折り紙』。
ミノリ(吸血鬼)とカオリ(ゾンビ)は新聞紙を丸めて『チャンバラごっこ』をしている。(コユリと俺は今帰って来たところだったので、何もしていない)
こいつら、いつの時代の子どもの遊びを……。まあ、自由時間に何をしようが別にいいけどな……。
俺がコユリと共に横になろうとした時、ミサキ(巨大な亀型モンスターの本体)が念話で俺に話しかけてきた。(ヒカリと別れてから数分の間、彼女の外装は前進している)
「ねえ、ご主人。人が倒れてるんだけど、どうする?」
「こんな草原しかないところに人だと? 分かった。コユリには悪いが俺は救出に向かうよ。困った時はお互い様だからな」
「分かった。それじゃあ、一旦止めるよ」
ミサキ(本体)がミサキ(外装)を一旦停止させた後、俺はコユリ(本物の天使)に頼んで、その場所まで運んでもらった。