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ギイ……ギ……ギギイ……ギ……
ベッドの軋む音は、木製のそれとは違い、酷く冷たく危うい音がした。
ガチャン……カチャ……キキ……キイ……
自分の両手首に繋がれた手錠が、鉄製のベッド柵に打たれ擦れて、硬く悲鳴のような音を立てる。
「……は……ん……ああッ……ア……」
自分の上で響く控えめな声と、目の前で揺れる白く形の良い乳房だけが、この行為が甘美に満ちていて、官能的で、自分が望んでそうしていることであると、思いこませてくれる。
美しい女の、艶やな長い赤毛が、汗で湿った自分の鎖骨にかかる。
「―――愛してるわ、パリス」
偽りの名前を聞いて、下半身に力を入れる。
「俺もだよ。ヘラ……」
返した偽りの名前は、ひときわ高く叫んだ彼女の喘ぎ声によってかき消された。
白くしなやかな裸体が自分の上にどさっと凭れ掛かる。
目を瞑り、荒い呼吸を彼女のそれと合わせた。
―――俺はこの女の本当の名を知らない。
そして自分自身の名前さえも―――。