テラーノベル
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ベッドで仰向けになり、渡辺は天井を睨んでいる。なんか、釈然としないのだ。
岩本が監視された。目黒は1本の電話で、簡単に解決してしまった。知らない人に見えた。凄く偉い人と、繋がるのは悪いことではない。
だが、実際、目の前で見せつけられると、渡辺をひたすら愛してくれる目黒とは違う、遠い存在だと思ってしまう。
目黒ー翔太くん?ご飯出来たよ?
渡辺ーいらない。
目黒ーばか、食べないなんてだめ。
渡辺ーお腹空いてない。
目黒ーどうした?
渡辺ー…。
目黒ーこの間の岩本くんのこと?
渡辺ー…。
目黒ー俺が偉いんじゃないって言ったよね。知り合いが偉いって。
渡辺ーそんな偉い人と知り合いなんだもんな。
目黒ーだから、何?
渡辺ー俺の知らない人みたいだ。
目黒ー何言ってる。
渡辺ー目黒が遠く感じた。俺なんかと一緒にいていいの?
目黒ー怒るよ。俺は俺、翔太くんに1年以上好きだって言って、念願叶って結婚して、浮かれてるただの男。
渡辺ーそんなわけあるか。俺が困っても、すぐ解決できるし、俺は目黒に何もしてやれない。一緒にいる意味あるの?
目黒ー本気で言ってる?
渡辺ーん。
目黒ースタンプ級に怒ってる。
渡辺ー…。
渡辺は起き上がり、目黒の横をすり抜け、食事をしにいく。
目黒は、ため息を吐き、後からついていく。
渡辺は、今困っている。目黒に言えば、この間のように簡単に解決するだろう。だから言わない。自分で何とかしようとしている。
TOD’Sのショーで、ミラノに行ったときから、関係者の娘から、言い寄られている。まだ高校生。
渡辺ーだから、無理です。愛梨さんも勉強あるでしょう?
愛梨ー1日くらい大丈夫よ、それに、大学は推薦で決まったし。だから出かけましょう?
渡辺ー断ります。
愛梨ーパパに言ったら、アンバサダーから下ろされるわよ。
渡辺ー…。
しつこく誘ってくる。最初の頃は、やんわりかわしていたが、あまりにしつこいので、渡辺もキツくなる。
だが、アンバサダーを下ろすと言われると、どうするのがいいか、分からないのだ。
そんなとき、岩本の件があり、目黒なら、簡単だと思ってしまう。だが、あんな目黒は知らない。権力で解決するなんて。
目黒ー何かあった?
渡辺ー何が?
目黒ーいつもと違う。
渡辺ー変わらんわ。
目黒ー隠していいことある?
渡辺ーない。何もない。
目黒ー…。
渡辺ーしばらく、1LDKにいる。
目黒ー何で?
渡辺ー気持ちの問題。
目黒ーまだ、岩本くんの件引きずってる?
渡辺ー俺はお前と違う。それだけ言っておく。
目黒ー翔太…。
目黒が食事は?と聞く。食べてくるからと言う。ブログを見ると、風磨くんとまさきくんと出かけている。目黒は携帯を眺め、ため息を吐き、車のキーを手に出かけて行った。
渡辺は、1LDKにずっといる。
ソファに横になって考えている。
愛梨と2人で会うわけにはいかない。だが、愛梨の言うこと聞かないと、アンバサダーの仕事がなくなるかもしれない。どうしたらいい?
父親に会うのはどうだろう?
困っていると言えばどうなる?
渡辺ー目黒…。
その頃、目黒は偉い人に会っている。最近、業界で渡辺翔太に何かないか、調べて欲しいと頼んでいる。軽く食事しながら、車だから、と酒は断りコーヒーを飲み、話をする。
◯◯ー大事かね、渡辺翔太が。
目黒ーメンバーですから。
◯◯ー1週間くれ、調べてみよう。
目黒ーありがとうございます。
帰ってきて、1LDKに向かう。
ソファで眠っている。
毛布を掛け、そばの床に座る。
よく見ると涙が滲んでいる。何かあるんだ、絶対。目黒はそう思うけれど、渡辺は言わない。1週間後、結果が分かる。それまで待とう。
渡辺ー…目黒?
目黒ーご飯作るから上がってきて?
渡辺ーん。
目黒ー焼肉だから、ちゃんと食べてね。
渡辺ー食べる。
エレベーターに乗り、目黒に背を向けて、ドアを見つめている。その横顔は、寂しそうで、抱きしめたくなる。
家に帰って、目黒は思う。渡辺から笑顔が消えた。
笑い声も、このところ聞いてない気がする。
目黒ーそっちで食べる?
渡辺ーん。
目黒ー何かあったけど、俺に言うのは嫌って顔してる。
渡辺ー…。
目黒ーそんなに嫌?
渡辺ー嫌に決まってる。
目黒ー何が嫌?
渡辺ーお前が偉い人に頼ること。
目黒ー早く解決するからいいじゃない。
渡辺ー弱い学生が、先生に言いつけて解決するのと一緒だ。
目黒ー…。
渡辺ーそうだ、俺は弱いからお前に言いつけて助けてもらうしかないんだ。
目黒ーそれで言わないの?
渡辺ー先生と生徒みたいって、対等じゃない。俺たちはパートナーなはずなのに、お前に守ってもらってばかり!照のときみたいに、簡単に解決するのを見ると、俺は、お前と対等じゃない!これから先も、ずっと?守ってもらって生きていくの?パートナーじゃないじゃん!
目黒ー泣かないで。
渡辺ー勝手に出てくんの!
目黒ーたまたまあの偉い人と知り合いなだけ。なんでもあの人に頼らない。2人で解決しよう?
渡辺ーしないじゃん!頼ってるじゃん!俺は、いらないの?
目黒ー翔太…。
渡辺ーいいんだよ、早く解決した方がいいんだよ。分かってる!でも…!
ポロポロ泣いてる渡辺を目黒はたまらず抱きしめる。
抗う渡辺。それでも目黒の腕の中から出れない。
渡辺は、自分が何にこだわっているのか、分からなくなってきた。ただ悔しくてたまらない。
渡辺ー悔しい。
目黒ー何で?
渡辺ー自分で何とも出来ないから。
目黒ー何を抱えてる?
渡辺ーううん。
目黒ーこの頃、笑わない、笑い声聞いたことない。
渡辺ー…。
目黒ー怒るよ、言わないと。
渡辺ー怒ればいい。スタンプしたかったらしたらいい。お前に言うことは、あの偉い人に言うってことだろ。俺は、自分でする。
目黒ー出来ないから何日も悩んで食べる量も減ったし、笑わない。
渡辺ーそれでも!自分でする!
家を飛び出して行った。目黒は、電話がかかってきたから、追いかけない。
目黒ーはい。あっお世話になります。はい、愛梨?高校生?それは困りますね、未成年を相手にすると、色々面倒ですから。はい、アンバサダーには問題ない?ありがとうございます。はい、渡辺と話し合ってきます。失礼します。
事情は分かった。渡辺は自分で何とかすると言う。黙って様子を見てようか?
いや、面白がってると言われる。目黒は1LDKに向かう。
渡辺ーだから、会わないって。
愛梨ーじゃあLINEは?
渡辺ーしない。
愛梨ーいいの?パパに言うわよ。
渡辺ー親の力を借りないと何もできない子供と、関わり合いたくない。
愛梨ー分かったわよ、もう関わらない、いいんでしょう?
渡辺ーありがたいね。
愛梨ーさよなら。
目黒は玄関で聞いていた。
渡辺に近づいて抱きしめる。
不満の残る顔をしている。
目黒ーどうした?
渡辺ー愛梨の親が、何もしてやらないからって言ったらしい。お前、頼んだな?
目黒ーでも、自分で断れたじゃない。
渡辺ーそれでも愛梨は、親の力を借りようとしたから。
目黒ー怒ったんだ?
渡辺ー呆れたんだ。
目黒ー解決した?
渡辺ー一応な。
目黒ーなら、笑って?
渡辺ー今日は無理。
それから3日して、渡辺が家に帰ってきた。
何を言っても、怒っても、目黒は嫌いになれない。大事な人。そろそろ、あの腕が恋しくなった。
目黒ーおかえり。
渡辺ーただいま。
目黒ーコーヒーでも飲む?
渡辺ー…ん。
目黒ーねぇ、愛し合うよね?
渡辺ー…ばか。
目黒ー俺たちは変わらない。でしょ?
渡辺ーん。
渡辺ー俺を置いて行かないで、知らない人にならないで。
目黒ーん。2人でいっぱい話し合っていこう。
渡辺ー大事な人…。
目黒ー翔太…。
渡辺ーそばにいて、心のそばにいて…。
目黒ーどういうこと?
渡辺ーまず、俺に話して?はぁ…はぁ…。
目黒ー放って置かない。
渡辺ーんっ…はぁはぁ…もっと…強く抱いて…。
目黒ー可愛い人…。
渡辺ーんっ…褒めてない…から…はぁはぁ…。
目黒ーもう一度言って?
渡辺ー何…?
目黒ー俺のこと。
渡辺ー大事な人…あっ…あっ…くる…まだ…だめ。
目黒ー大切な人。
渡辺ーんっ…もう…だめ…んっ…んっ。
目黒は膝枕で眠る渡辺の身体を撫でながら、話し合って話し合って、それでもだめなとき以外は人に頼らないと改めて思う。渡辺だって、頑張りたいんだ。尊重しなければならない。渡辺から、教えてもらった。
コメント
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対等な2人でいたいから、大切な人に全て頼って守られるだけの存在でいたくない。お互いを尊重し合う素敵な2人💓
大事だから大切だから、他の人には頼りたくない。ふたりで解決したい。今回のことで翔太くんから大切なこと教えられたね…