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【またたびを当てられた雌猫のような】
※ネロモニ
七賢人の一人、〈沈黙の魔女〉モニカ・エヴァレットの使い魔である黒猫のネロは今日もお気に入りの冒険小説を読みながら主人の帰りを待っていた。
なんでも今日はルイルイルンパッパこと〈結界の魔術師〉ルイス・ミラーのところに行くとか何とか…本当はネロもモニカについて行きたかったが、生憎自身の正体がバレると大変なことになるため、現在の住処である屋根裏部屋でのんびりゴロゴロにゃんにゃんしているのだ。
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これ以上読み進めてしまうとあとの楽しみが無くなるため、本を閉じようか迷っていた頃、突然窓がカタカタと小刻みに動き出した。ルイスのところのメイドが送ってきてくれたのだろうか、そう思いネロは人型になり窓を開ける。ゆるりと風が髪を撫で、ネロは無意識にスンスンと鼻を鳴らした。
……おや、何やら遠くから物凄いスピードで飛んでくる輩がいるではないか、
そこらの人間には見えなくても、ネロにはよく見えるのだ、そこにはメイド服特有のスカートを大きくなびかせながら何かを抱えて飛んでくるリンがいた。
やっぱりか、とネロは着地の巻き添えを食らわないように少し後ろに下がる。スタイリッシュ()に窓をすり抜けてくるかと思いきや、珍しくゆっくりと減速しながら枠を通った。
「よぅ、メイドの姉ちゃん。」
「〈沈黙の魔女〉殿を送り届けに来ました。」
「ごくろーさんだな………って、にゃんだこりゃっ、モニカ?!モニカ!!」
相変わらず動かぬ表情で抱えていたものをこちらに渡してきた。だがそこに抱えられていた主人はいつもと違い、顔が火照っており、息が少し上がっており苦しそうだった。抱え直すように受け取ったネロはすぐさまベットの上にモニカを優しく横たえた。
「…〈沈黙の魔女〉殿はルイス殿の飲んでいたワインを間違えて飲んでしまったのです。前回、酔った勢いで服を脱ぎ始め、そこに居合わせたルイス殿と酔った〈沈黙の魔女〉殿がいた部屋をたまたまロザリー様が見てしまい……という前科がございますので、その状況をフラッシュバックさせたルイス殿は即時帰還として送らせる役をわたくしに命じた…という訳です。」
淡々と話すリンに、ネロはため息をつきながら口をもにゅもにゅと動かしているモニカの額を撫でる。いつもとはまた別の、弱々しいモニカの姿に心臓がバクバクと跳ねていたが、酔っているだけと聞いて、心の底から安心したのだ。
そして、(オレ様に心配かけさせるとは…起きたら人型のままのしかかってやる)とも密かに決めていた。
「それでは、わたしくはここで失礼します。」
礼儀正しくお辞儀をするところだけを切り取れば、良きメイドのように見えるのだが、リンも主人のルイスに負けず劣らずで中々にクセが強いのだ。抱えるものが無くなったため、リンは美しくも可愛らしい小鳥の姿になり、颯爽と窓の外に飛び立って行った。
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リンが自身の巣へ帰って行ったあとも、ネロはベットの端に腰掛け、ふにゃふにゃに出来上がったまま眠るモニカを見下ろしていた。少し苦しそうに「ん、」や「ふぅ、」と声を漏らしていたり、突然くふくふと小さく笑いながら何かを言っていたりしたが、顔の熱は引いていないようだ。
ネロはモニカに何かがあってはいけないと人型のままモニカを見ていたが、不意にモニカが「んぅ………ねろぉ……」と寝ている間に発していた中で一番大きな声で使い魔を呼んだことに少し驚きつつもネロは耳を澄ませ、モニカに顔を近付ける。
”寝ている人間の寝言に返事をしてはいけない”とどこかで聞いた気がするが、何がダメなのかも分からないし、ましてやネロは人外なのでのーかんだろ!という結論の元「なんだ?モニカ。」と返事をした。
「ねろ、ねろぉ……にくきゅ、」
「悪いなご主人様、今は肉球はないぜ」
「うにゅ〜〜〜〜〜〜……」
あからさまに不機嫌寄りな顔になり、もぞもぞと体をぐねるモニカ、そのうちモニカは目を閉じながら両手を掲げ、ゆらゆらと何かを探るように動かし始めた。真っ暗闇の中で物を探す時のように揺れる手をネロは興味深そうに目で追っていた。すると……
ふにっ
「!」
「うぁ……にくきゅぅだぁ」
探し求めていた感触にふにゃりと蕩けた顔で笑うモニカ、だが、確かに人型のネロに肉球などは付いていない。では何を触ったか、それはネロの唇だった。
モニカは幸せそうにほのかに火照って顔で笑いながら、ぺたぺたとネロの唇を触る。いつの日か、一度キラキラ王子という名の第二王子が数字の世界に閉じこもりかけていたモニカの頬にキスをして正気を取り戻させたことがある。肉球と唇の感触は違う気がするが…
あの日からモニカは「殿下には肉球がある!」と思い込んでしまっているのだ。
だから、今モニカはネロの唇を肉球だと思って触って堪能しているのだろう。そんなことはネロでも分かった、だが、だからこそ、ネロの中に少しだけ悪戯心が芽生えてしまったのだ。
ネロは一言も発することなく、そのままグッとモニカに顔を近付け、頬に唇が触れた。雑に押し付けるようなやり方だったが、モニカはくすくすと笑った。
「ふふ、ねろくすぐったぃ…よぉ、……」
「………」
自身の使い魔にキスをされたことにも気づかないモニカは、頬を肉球で押されたかと思って、くすぐったそうに体を少しよじった。
スッと目を細めたネロは、そのままモニカの首元に顔を埋め、べろりと舐める。大袈裟なくらいに分かりやすく跳ね上がるモニカの体、ネロはそのモニカの体さえも優しくベットに押さえつけた。人型なのに猫がグルーミングをするようにペロペロと首元や、頬を舐めるそれに、モニカは熱い息を吐き、くぐもった声を漏らしていた。
やがて「ねろ、」と名を呼ばれ、少し名残惜しい気持ちを残しながら顔を上げて、主を見る。
「どうした?モニカ」
「ねろ、あつい、あついよ……」
いつの間にかこちらに帰ってきたばっかりの時よりも頬の赤みが増していて、目元には涙も浮かべている。ネロはぐるる、と喉を鳴らしてモニカの涙を舌ですくい上げたあと、制服のリボンをゆっくりと解く。シャツのボタンを慣れない手つきで外していくが、モニカは相当暑いとか全く抵抗する素振りがない。そのためネロも遠慮なく服をじっくりと脱がしていく。やがて、モニカの白い肌が見え始めた時、ふわりと甘い香りがネロの鼻を掠める、それはマタタビか、ワインか、はたまたモニカ自身のフェロモンか、ソレに刺激されたネロは、本能の導くままにモニカの美しい首筋に噛み付いた。
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むにむに、むにむに、と柔らかい何かで頬を押される感覚がした。いつもならこれですぐ目を開けるのだが、今回はなぜだか体がだるいのでうなり声だけをあげる。
すると、静かに押される感覚がなくなり、その代わりにのしっと得体の知れない何かが体を圧迫し、今度こそモニカ・ノートンは目を覚ました。
「ぐぇっ……?!」
「やっと起きたか、ネボスケめ。」
「ね、ネロぉ…?!なな、な、なんなんでっ、人型に、」
「ふんっ」
目の前に人型のネロの顔が視界いっぱいに広がっていたため、度肝を抜かしたモニカはあわあわしながら言葉を繋いで問うが、モニカが完全に起きたことを確認すると、ネロはさっさとモニカの上から退いていつもの黒猫の姿に戻ってしまった。
「えっと、ね、ネロ…?な、なんだか、怒って、る……?」
もう一度問うが、ネロはそのまま棚の上に登り、そのまま毛ずくろいし始めた。明らかに不機嫌のようだ。
モニカはネロが怒っている原因を聞くべく、とりあえず抱っこしなくては……と、ベットから体を起こす。
…………ふと、モニカは自身の体を見下ろし、体を硬直させる。
なんと、モニカが着ていた制服が中途半端に脱がされており、ほぼ下着姿になっているではないか。
「っ…………ッッ〜〜〜〜〜?!?!?!」
モニカは声にならない悲鳴をあげ、垂れた制服をぎゅっと自分の胸の前で握り込む。
ネロ目線では、モニカの表情は赤くなって、青くなって、また赤くなって、ネロを見た。
ネロはさっと視線を逸らした。
「ねね、ねねねね、ね、ネロ……これは、この格好は、なんで…?!?!…ッイ゛! 」
体と使い魔を交互に見ながら早口で捲し立てたせいか、舌を噛んだようだ。涙目で口元を押さえながらネロを見る。ある程度毛ずくろいが終わったネロは、ため息を着いてからやっとモニカに目を向けた。
「…モニカ、昨日の記憶はあるのか?」
「ふぇ?きのーの、きおく………って、えっと、確かルイスさんと話してて…えっと、えーっと…………そこから記憶…ない、です……」
ぺしょり、とモニカは俯いた。ネロはそんなモニカを見てぴょいと棚から降り、モニカのいるベットの上まで上がり、今度はモニカを見上げる。
「メイドの姉ちゃんが”また”ルイルイルンパッパのワインを飲んだんだってよ。」
「……ぇ、えぇ?!じゃ、じゃあまたわたしっ、ルイスさんにご迷惑をっ?!?!」
途端にモニカの顔が真っ青になる、そのまま両手で顔を覆ってしまった。「わわわわわたし、るるルルイスさんになんて言えば…」と涙目でへこたれている。
そんなモニカを見て、ネロは一つ
「オレ様の好みは尻尾がセクシーな雌だよな……」
モニカの首筋に密かにある噛み跡を眺めながらぽそりと言う。それはモニカに向けて問うたのものではなく、再確認の言葉だった。
「…?ネロ、何か言った?」
「うんにゃ、なんも言ってねえ」
マタタビで酔ったのはどちらか、あるいは…