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【夜のダンスの練習相手は】


再試験となった社交ダンス、だがなぜかダンスの練習だけで生徒会員の3人にたらい回しに踊ることとなっていたモニカ、その上その中の2人は会長と副会長だ。

運動音痴のモニカはふらふらとした足取りで屋根裏部屋である自室に戻り、とりあえず日課であるベットに頭からダイブをする。疲れ切っていること、3人の男と踊ったことによる胃の痛みでモニカは既に半泣きだった。

ぷるぷると震えて泣いていると、自身の使い魔である黒猫がぽてぽてとこちらに歩いて来た。


「モニカ、よぼよぼのババァみたいだぜ」


うつ伏せに倒れるモニカの上に飛び乗ったネロが、肉球でフニフニとモニカの背中を押す。どうやらマッサージをしてくれているらしい。


「うっ、うっ……全身が痛いよぅ……」


「筋肉痛が早く来るのは、体が若い証拠らしいぜ、良かったな」


ネロはモニカの脂肪も筋肉も無い棒のような足を、前足でギューッと押した。


「オレ様、窓からこっそり見てたんだけどよぉ、ダンスってのはアレか? 相手の足を沢山踏んだ方が勝ちっていう競技なのか?」


「うっ、ち、違うもん……」


「オレ様、小説の挿絵でしか知らなかったから衝撃だったぜ……まさかダンスってのがあんな過酷な競技だったなんてな… 」

小説の中で登場人物がダンスをしていた時の文面を思い出しながら、ネロはマッサージを続けている。


「あの登場人物は、心のままに互いの足を踏みあったんだな。やべぇ、この場面の解釈が変わるわ」


「だから違ってば……もぅ〜〜〜」


「…ネロ、もういいよ。ありがとう」とモニカが言ったため、ネロはマッサージを終了した。モニカはネロのおかげで少し軽くなった身を起こし、気合を入れる。


「もうちょっとだけダンスの練習しようかな」


「相手がいないのにか?」


「ステップの練習だけだよ、少しでも慣れなきゃ…」


「…」


「いてて…」と軽くよろけながらもワン、ツーとステップを踏む、慣れないダンスの上に疲れきった体で動いているのでかなり不安定なステップを描いている。ネロはそれをじっと見たあと、真っ黒な霧で体を埋めつくし、そのまま人型に変わった。


「手伝ってやろうか?ご主人様」


「ね、ネロが?でも、ネロもダンスしたことないでしょ…?」


「あんなもん見よう見まねでやればどうとでもなるもんなんだぜ!」


絵本に出てくるお月様のような瞳を持つ目をほんのり緩ませながら、モニカの手を取ってゆっくりと動き出した。

モニカのスカートがふわりと揺らぐ。シリルやフェリクスと練習した時とは違う心地良さにモニカはふっと笑みを浮かべながら身を委ねた。

………と、油断した結果ネロの足を数十回蹴り踏みしたが、無事(?)に終わり、2人はベットの縁に横並びで座っていた。


「痛ってー…モニカ、運動音痴にも程があるぞ…?」


「うぅ……ごめんね、ネロ」


「別にいいけどよー……んで、身体の調子はどうだ?」


「えっと…まだ少し筋肉痛が響いてるけど、ネロが支えてくれたから悪化はしてないよ」


モニカは「ありがとう、ネロ」と人型になっているネロの目をまっすぐ見て言った。人に「ありがとう」と一言言うだけでも壊れたロボットのようにぎこちなかった彼女は、どうやらネロが思っていたよりもずっと成長しているらしい。

ネロは「ふふん、そうだろうそうだろう、もっとオレ様にお礼を言ってもいいんだぞ〜?」と言ってみれば、モニカは「ぁ、えっと、」と目を泳がせる。まだこれはモニカには早いようだ。



それからもお喋りは続いたが、モニカは疲れもあったのか、いつもよりも早く寝てしまった。くぅくぅと静かな寝息を立てるモニカをしばらく見てから、スゥっと黒猫の姿に戻りモニカの枕元で丸くなる。

なんとなく、自身の肉球で主の頬を軽く押してみた。主は特に何かアクションを起こす訳もなく、目はずっと閉じている。

どんな夢を見ているのだろうか。自分は夢に出てきたりするのだろうか。

………少し、気になってしまった使い魔だった。


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