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俺は、護るものを持つ幸せな青年でした。
雪の結晶の髪飾りを付けた美しい女性をこよなく愛して、宝物のように大切にしていました。
師範が大切にしている素流を、まるで夢のように大切にしていました。
全てがまるで天国のようで、昔罪を重ねていた俺には桃源郷の様にも見えました。
洗濯物を干している時の笑顔も、花火の下交わした約束も、ずっと絢爛に煌めいていました。
でも。
でも…。
俺は二人とも、そして愛も夢も素流も全て守れなかった。
最低で最悪で最狂な、剣術道場の奴らにその全てをぐちゃぐちゃに、暗黒に染め上げられて、
もう自分の意味も失くしてしまった。
そんな阿鼻地獄のような、奈落のような血みどろの町を歩いていた時に。
俺は「あのお方」に出会いました。
もう、どうでもいい。全てが。
そう口にした途端に、この小娘も剣を持った弱者も全て忘れました。
全てを捨てられた、全てを無に還せた日でした。
今、俺は上弦の壱を倒すべく、『至高の領域』に達するべく毎日鍛錬を重ねています。
今、俺は何か呼びかけられている気がしますが、「猗窩座」と呼ばれる今はもうその何かもどうでもいいです。
今…俺は、最高に幸せです。
きっと…。