「 はぁー…金ねぇー…(泣) 」
数少ない所持金から購入したいちごミルクの最後の一滴を噛み締めながら俺―田中は呟いた。
何やらうちの高校では不人気な飲みもんらしいが甘党の俺にはバカ美味い。
何故こんなに美味しいのか伝わらないのか疑問を抱いているぐらいだ。
「 よーちよち、かわいそーな 田中きゅん。 」
「 … 頭なでんな 」
舐めくさった態度してるこいつは同級生の中嶋。
去年、一昨年と同じクラスで席が近かったこともありすっかり仲良くなった。
まぁ、今年は違うが。
けど、2年間の名残もありこうして毎日昼飯を共にしてる。
相談に乗ってくれるしそこそこいいヤツなんだけど …
「 ほしいものなら俺がなんでもやるから、 お前はバイトなんてしなくていーの 」
「 優馬ナンパされちゃうでしょ 」
「 なんでだよ オレ男だっての 」
過保護?っぽい
子供扱いしてきてムカつく
俺のほうが誕生日早いのにーー!!!💢
「 ただいまー … 」
「 おかー 」
誰もいないはずのリビングに向かって言葉を吐くと返事が聞こえてきた。
「 え、姉さん !? 」
「 よぉ弟。天使のキューピット―柚お姉さまだぜ 」
「 お困りの弟くんにコレをやろう 」
すると1枚のチラシが渡される。
「 『 バイト募集 年齢不問 時給¥1,500~ 』 !?? 」
「 ま、安心かどうかは … 」
「 お姉様大好き !! 面接いってきます ! 」
「 あ、ちょ … 」
優馬はこれまでにないほど嬉しそうな顔をすると、ジャケットを投げ捨てリビングを出ていった。
その数秒後には玄関の重たい扉が閉まる音が聞こえる。
「 … あは、しーらね 」
優馬はひとつ重要なことを見落としていたのだ。
その店のコンセプトを …
「 よーっし ! 頑張るぞ~ ! 」
時は流れ、ついにアルバイト初日。
面接時にアポを取らずに店に押しかけるという不合格待ったなしの行動をするポンコツっぷりを発揮したが、
寛大なオーナーさんのおかげでどうにか合格できたのだ。
ホントにオーナーのマリアナ海溝並の器の広さに感謝しきれない。
「 どんな方がいらっしゃるかな ~♪ 」
胸を膨らませ裏口ドアを開けると本来そこにはいるはずないヤツがいた。
「 優馬 !? 」
わーおびっくり中嶋です。
「 中嶋 ! ? なんでここに … 」
「 それはこっちのセリフ ッ 」
「 帰るなら今だから早く出て 」
と中嶋はオレの手を掴み、外に出るよう促す。
いつもとになく真剣で、でもどこか焦った顔つきだ。
「 ムリだっての ! 」
「オレ、今日からここで働くんだもん !! 」
こちらも簡単に引くわけにはいけまい。
声を荒げ、必死に抵抗する。
それでも中嶋の力を緩まな い。
むしろ顔が曇り、力が強まるばかりだ。
「 あー!もうなんでダメなんだよッ !!! 」
「 ッ … だってここは … ! 」
『 じゃー ! 駿くんと怜くんでほ゜っきーゲームで ! 』
『 ほら … こっち向きなよ 』
『 せ、せんぱい … はずかしいです、 』
『 へぇ、俺に楯突くなんて再教育しなきゃね ? 』
『 キッス!キッス!キッス!! 』
「 『BLカフェ』だぞ !!? 」
「 びーえる、か、ふぇ … ? 」
… えー
どうやらオレはとんでもないところに来てしまったようです。
コメント
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す き で す
好きすぎて大爆発 これはもう鼻血案件 これからまた貧血生活始まるな