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ころさな@掛け持ちえぐい
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さくら° コメントくれ
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夜中、俺はふと、誰かに起こされた。
「ますたぁ……ぐすっ、、」
耳元で聞こえた、か細く震える声。
薄く目を開けると、そこには涙を浮かべたなつが立っていた。
「ん、なぁに……? また怖い夢見た?」
眠たい体をゆっくりと起こし、俺はなつをそっと抱きしめた。 なつは、二ヶ月ほど前に俺のもとへやってきた自立型AIアンドロイドだ。
日常生活の補助から身の回りの世話まで、何でもこなしてくれる。少し甘えん坊なところもあるけれど、基本的にはとても賢くて、優しい子だった。
……ただ、夜中になると、こうして俺を起こしにくることがある。
「ぐすっ…見てないけど、怖くなって…」
「そっかぁ…怖くなっちゃったんだね」
俺はなつの頭をゆっくりと撫でた。
なつは、俺の腕の中で小さく頷く。
「……ますたぁ、いる?」
「いるよ。ここにいる」
「……ほんと?」
「ほんと」
そう答えると、なつは俺の服をぎゅっと握りしめた。 その姿を見て、俺は胸の奥が少しだけ痛くなった。 なつには、俺の前にもマスターがいたらしい。
二ヶ月前、俺がなつを見つけたのは、とあるリサイクルショップだった。
店の隅に置かれていた、古びたアンドロイド。
顔の半分は壊れていて、露出した機械部分には傷が目立っていた。足の関節も少し錆びついていて、歩くたびにぎこちない音がしていた。
それでも、なつはまだ動いていた。
店員に話を聞き、いくつか手続きを済ませて、俺はなつを家に連れて帰った。
最初は警戒されるかと思っていたけれど、なつは俺を見るなり、ぽつりと呟いた。
『……ますたぁ?』
その声が、今でも耳に残っている。
それから少しずつ、なつは以前のマスターの話をしてくれるようになった。
優しい人だったらしい。 よく頭を撫でてくれて、一緒にご飯を食べて、眠る前には必ず声をかけてくれたのだという。
なつは、その頃の話をするとき、いつも嬉しそうに笑う。 けれど、別れの話になると、決まって言葉を詰まらせた。
マスターと離れ離れになるとき、知らない人たちに乱暴に連れ出されてしまったのだそうだ。
そのときに顔を壊されてしまったのか、それとも別の理由があったのか。
詳しいことは、なつ自身もうまく説明できないらしい。
ただ、気がついたときには、もうマスターのそばにはいられなかったのだという。
……顔の修理は、まだできていない。
部品を探して、少しずつ直してあげたいとは思っているのだけれど、なかなか簡単にはいかなかった。 足の錆びも、いつかきちんと取り除いてあげたい。
もっと自由に歩けるように、 もっと安心して過ごせるように、 そう思っている。
……話が逸れたな
問題は、なつの前のマスターのことだ。
なつの話を聞く限り、どうやら、そのマスターはもう亡くなっているらしい。
けれど、なつ本人は、それに気づいていないようだった。
「マスターは、また迎えに来てくれるんだよ」
以前、なつはそう言っていた。
「だからね、おれ、いい子で待ってるの」
そう言って笑ったなつの顔を、俺は忘れられない ……もう、迎えに来ることはないのに。
なつの話を聞いていると、どうしても考えてしまう。 あの人は、もしかしたら、自ら命を絶ってしまったのではないか、と。
もちろん、確かなことは分からない。
なつの記憶も、ところどころ曖昧になっているようだった。 だから、これはあくまで俺の憶測でしかない。
それでも
なつが今も、あの人の帰りを待っていることだけは、確かなのだ。
とん、とん。
なつの背中を、ゆっくりと一定のリズムで叩いてやる。
「……安心した?」
そう尋ねると、なつは俺の腕の中でこくりと頷いた。
「そっか」
「…えへへ、ますたぁ、あったかい⸝⸝」
「ふは、そりゃよかった」
まだ少し眠たさの残る頭で、なつの髪を撫でる。 さて、困ったことに
「俺も目ぇ覚めちゃった……ココア作るか」
「!うん……!⸝⸝」
ぱっと顔を明るくしたなつに、思わず笑みがこぼれた。 さっきまであんなに不安そうにしていたのに。 …いや、こうして少しでも元気になってくれるなら、それでいい。
俺はなつの手を引いて、寝室を出た。 深夜のリビングは静まり返っていて、窓の向こうには街灯の明かりがぼんやりと浮かんでいる。
俺らはリビングに向かうと、俺は棚からなつの好きなココアを取り出した。
「ミルクでいい?」
「うんっ!」
「はいはい」
小さく返事をするなつを横目に、俺はカップをふたつ用意する。 ミルクを温めて、ココアの粉を溶かす。 甘い香りが、静かな部屋にふわりと広がった。
「…ますたぁ」
「ん?」
カップを持ったまま振り返ると、なつはソファの前で、もじもじと指先をいじっていた。
何か言いたいことがあるらしい。
「どした?」
「あのね、あのね…また…歌いたくて⸝⸝」
「……歌?」
「う、うん……!」
なつは少し恥ずかしそうに俯いた。
「だめ……かな?」
「いや、全然?」
俺はあっさりと答えた。
「ん、じゃあギター出してくる」
「う、うん待ってるね……!⸝⸝」
嬉しそうに頷くなつを見て、俺は思わず口元を緩めた。 ほんと、分かりやすい奴。
…いや、そこが可愛いんだけど。
俺らが住んでいるのは、防音性の高いアパートだ。 住人の大半は、音楽関連の仕事をしている人間や配信者。 中には、何をしているのかよく分からない、ちょっと怪しげな連中もいる。
まあ、壁が厚いおかげで、多少夜更かしして音を出しても問題ないのはありがたい。
俺自身、音楽関連の仕事をしている。
家でギターを弾くことも多いし、作曲のために夜中まで起きていることだって珍しくない。
なつは、そんな俺の姿が好きらしい。
俺がギターを弾いていると、いつの間にか隣に座っていたりする。 最初はただ聴いているだけだったのに、気づけば小さな声で歌を口ずさむようになっていた。
その歌声が、俺は結構好きだった。
機械であるはずのなつの声は、不思議なくらい柔らかい。 音程もリズムも正確なのに、どこか拙くて、あたたかい。 まるで、歌うことそのものを楽しんでいるみたいな声だった。
いや、実際に楽しいんだろうな。
なつは歌うのが好きなのだ。
普段は少し遠慮がちで、自分から何かをお願いすることもあまりない。 それなのに、ギターを弾いているときだけは違う。
「ますたぁ、もういっかい!」
なんて、目を輝かせてせがんでくることもある。 だからこそ、今日みたいに自分から歌いたいと言ってくれたのが、なんだか嬉しかった。
「……よし」
俺はギターケースを取りに行き、いつものギターを取り出した。
リビングに戻ると、なつはソファにちょこんと座って、両手でココアのカップを包んでいた。
俺に気づくと、ぱっと顔を上げる。
「ますたぁっ!」
「はいはい、お待たせ」
「えへへ……⸝⸝」
なつの隣に腰を下ろし、ギターを膝に乗せる。
弦を軽く鳴らすと、静かな部屋に、澄んだ音が響いた。 なつはその音を聞いた瞬間、嬉しそうに目を細めた。
さて… 今夜は、どんな歌を聴かせてくれるんだろうか。
「せーの……」
俺がそっとギターを弾き始めると、なつは小さく息を吸った。
「♪〜……⸝⸝」
なつの低い歌声が、静かな部屋に響き渡る。
……綺麗だ。 柔らかくて、優しくて、あったかい。 耳にすっと馴染むような声なのに、どこか胸の奥に響いてくる。
ギターの音に合わせて、なつは気持ちよさそうに目を細めながら歌っていた。
時折、ちらりと俺の顔を見ては、恥ずかしそうに頬を緩める。
そのたびに、俺もつられて笑ってしまう。
……ほんと、可愛いな。 歌っているときのなつは、いつもより少しだけ大胆になる。 普段なら俺の顔色を窺ってから口にするような言葉も、歌の中なら素直に伝えられるのだろうか。
そんなことを考えながら、俺は弦を弾き続けた。 一曲が終わると、なつは少し照れくさそうに俺を見上げる。
「…ますたぁ、どうだった?」
「ん。すっげぇよかった」
「!ほんと……?⸝⸝」
「ほんと。俺、なつの声好きだよ」
「っ、えへへ…⸝⸝」
なつは嬉しそうに笑って、両手で顔を隠した。 その仕草がおかしくて、俺は小さく吹き出す。
「なんで隠すんだよ」
「だ、だってぇ……!⸝⸝」
「ははっ、照れてんの?」
「……ますたぁの、ばか……」
拗ねたように呟く声さえ、どこか弾んでいた。 その後も、俺らは何曲か歌った。 俺がギターを弾いて、なつが歌う。 たまに音を間違えて笑い合ったり、気に入ったフレーズを何度も繰り返したり。 窓の外では、夜が静かに更けていく。 温かいココアを飲みながら、ふたりで音楽に浸る。 ただそれだけの時間。
けれど、俺にとっては、何にも代えがたい幸せな時間だった。
なつも同じ気持ちでいてくれたらいい。
そんなことを思いながら、俺は隣に座るなつをちらりと見た。 なつは、ギターを抱える俺の肩にそっと寄りかかり、幸せそうに目を細めていた。
…ああ。 もう少しだけ、この時間が続けばいいのに。 そう思うくらいには、俺らの夜は穏やかで、優しかった。
なつは、前のマスターの話をよくする。
それは、一緒にココアを飲んでいるときだったり、ギターを弾いているときだったり。何気ない日常の中で、ふと思い出したように話し始めるのだ。
「こーいう髪なんだ…ふわふわしてて、、毛先はサーモンピンクなの…んで、お目目はおっきいの、それでかっこよくて、優しくて、声がかっこよくて、おうたがじょーすで、⸝⸝」
昼頃。
リビングのソファに座ったなつは、ノートを広げて、せっせと鉛筆を動かしていた。 その隣で、俺はぼんやりとスマホを眺めている。
「……そっか、」
相槌を打ちながら、ちらりとノートを覗き込んだ。 そこに描かれていたのは、ひとりの成人男性だった。
髪の毛はふわりと柔らかそうで、毛先にはサーモンピンクの色がつけられている。大きな目に、穏やかな顔立ち。
どこか優しそうで、見ているだけで柔らかな印象を受ける人だった。
「…上手だな」
「えへへっ、でしょ…!いっぱい、いっぱい描いたの!」
なつは嬉しそうに笑いながら、ノートを俺のほうへ向けた。 ページをめくると、そこには何枚もの絵が並んでいた。
笑っている顔。 少し眠そうな顔。 ギターを持っている姿。 どれも同じ人物を描いたものだった。… 本当に、大好きなんだな。 俺はノートから目を離し、隣に座るなつを見た。
「……前のマスターのこと、すき?」
何気なく尋ねたつもりだった。 けれど、なつは少しも迷わなかった。
「うんっ、すきだよ……⸝⸝」
頬をほんのりと緩め、宝物について話すような声で答える。
その表情には、隠しきれないほどの愛情が滲んでいた。
「とーっても、すきなの!⸝⸝」
「……そっか」
俺はそれ以上、何も言わなかった。 なつが嬉しそうに話す姿を、ただ静かに眺めていた。 なつの話し方は、どこか幼い。 言葉を選ぶときも、嬉しいことがあったときも、少し拗ねたときも。 その仕草や声の調子は、まるで本物の子供と話しているような感覚にさせる。
それも、そのはずだった。
なつは、そうプログラミングされている。 精神年齢でいえば、およそ六歳ほどの幼い子供。
言葉遣いだけでなく、動作や感情表現まで、幼い子供を思わせるように設計されているのだ。
嬉しいときには素直に笑い、寂しいときには誰かのそばに寄り添う。
褒められれば照れて、好きなものの話になれば、夢中になって話し続ける。
そして、大好きな人の話をするときは、こんなにも幸せそうな顔をする。
「ますたぁ、これも見て!」
「ん、どれ?」
「これっ!ますたぁがね、ぎたー弾いてるところなの!」
差し出されたノートを、俺は受け取った。 そこに描かれた男性は、ギターを抱えて楽しそうに笑っていた。 なつは俺の隣で、得意げに胸を張る。
「えへへ…かっこいいでしょっ、⸝⸝」
「……うん。かっこいいな」
そう答えると、なつは満足そうに頷いた。 そして再び鉛筆を握り、ノートの上に視線を落とす。 昼下がりの柔らかな日差しが、リビングに差し込んでいた。
その光の中で、なつは大好きな人の姿を、丁寧に描き続けていた。
こんな感じのほんわかとした作品
コメント
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え、LOVE