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普通という唄

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普通という唄

1 - 第1章「鏡の中のちがい」

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2025年12月10日

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朝の光がカーテンの隙間から差し込んで、洗面台の鏡を白く染める。

歯ブラシをくわえたまま鏡を見ると、そこにいる“自分”が少し他人に見えた。


寝癖を手ぐしで直すたび、制服のリボンが視界に入る。

どうしてだろう。

この布切れひとつが、心の中で重たくのしかかってくる。


「結月、今日も髪かわいいじゃない」

キッチンから母の声がした。

トーストの香ばしい匂いと、テレビのワイドショーの笑い声が混ざる。

母は、いつも明るい。

芸能人の話を楽しそうにして、ドラマの俳優を見ては「この人ほんと男らしいよね」なんて言う。


「うん、そうだね」

そう言って笑うのが、もうクセになっていた。

本当は、その“男らしい”って言葉を聞くたびに、胸の奥がざわつく。

自分が“どっち”なのか、わからなくなる。


母の前では、笑っていなきゃいけない。

違和感なんて見せたら、きっと「そんなこと考えすぎよ」って言われる。

だから今日も、リボンを整えて、鏡に映る“女の子”を演じる。


――そう、演じるしかない。



学校に着くと、廊下の向こうで志織の声がした。

「ねえねえ、聞いて! 昨日ね、あの子に告白したんだ」

周りの子たちが「まじで?」「すごーい!」って笑いながら聞いてる。

志織は、自分が女の子を好きだって隠してない。

クラスの中でも、ちゃんと“志織らしさ”として受け入れられてる。


それが、少し羨ましかった。


志織が笑うたび、その笑顔がまぶしく見えた。

私は、自分の気持ちを誰にも言えないまま、

心の奥に小さな「違和感」を押し込めて、今日も過ごす。


……鏡に映る自分が、誰なのか。

その答えは、まだ見つからないまま。


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