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「しゃ、社長さん……」(ちょ、ちょっとまって! 甘い雰囲気に流されかけてた! 社長は何者なの!? 夢の中の男なの!? 淫魔ってあの淫魔!?)
急いでふわふわしていた思考回路を叩き起こした。淫魔ってあの夢とかにでてきて女の生気を食い物にするとかいう……え!? 私生気吸われて殺されるの!?
と、とにかくこの場からにげないと!
今更身の危険を感じた日和は脱がされた服を急いで拾い身だしなみを整えた。
「もう身体は大丈夫なのか?」
(や、優しく話しかけるな!)
「大丈夫です。このことはお互い忘れましょう。失礼しました!」
ペコリと頭を下げ日和は後ろにあるドアをめがけて一直線に向かう。
「忘れるってどういうことだ? 日和はもう俺の婚約者だ」
あと一歩で外に出られるところで腕を捕まれ行く手を閉ざされた。
(KONYAKUSYA? は? この男は淫魔だの、婚約者だのってもしかして嘘をついて私を馬鹿にしてるの?)
日和は怒りに満ちて力いっぱい腕を振り洸夜の腕を振り払った。
「何すんのよ! この変態スケベのヤリチン野郎!!」
「はあ!? ヤリチンなんかじゃねぇ! 俺は日和しか抱いたことねぇよ!」
「ひゃあっ」
勢いよく引き込まれ洸夜の腕の中に囚われた。
ジタバタ動こうにも男の力はやっぱり強くて抜け出せない。
「日和が提出したアンケート見た。年齢、収入、容姿、煙草も吸わないし、ギャンブルもしない。理想の結婚相手は俺だろ? 身体の相性もバッチリだし」
足の爪先から湧き狂うように怒りが込み上がる。この男何言ってんの!? 自意識過剰もいい加減にしろ!!!
「もう、決定事項だからな! っつぅ――」
日和は身体に巻きついた洸夜の腕をガブリと噛み腕から抜け出した。
「いってぇ、何すんだよ!」
「知るか! あんたなんて願い下げだよ! この変態ヤリチン野郎!!!」
捕まる前に逃げるが勝ち!
日和は全力疾走でハピフルコネクトライフを出た。
(あいつ、私しか抱いた事無いって言ってた……本当に淫魔って存在するの……?)
ちょっとドキリとしてしまったが、そんなのあり得ない。だってあんなに女の身体を知っているような抱き方をするんだから。淫魔なんかじゃなくて淫乱野郎だ。絶対そうだと自分に言い聞かせる。じゃないと信じてしまいそうだから。あの真剣な瞳に、日和と名前を呼ぶ優しい声。あり得ない話なのに夢に出てくる男と同じ抱き方、同じ髪色、同じ声、同じ指だった。