wtさんの2次創作です。
※ご本人様とは全く関係ありません
📕×🦈
暗く長い廊下に、窓から月光が差し込む。
今夜は満月。
最も美しい月が夜空高々に上る。
右手に握った斧を弄びながら、どこかで聴いたピアノのメロディを口ずさむ。
数十メートル先には、この館の主人が必死になって逃げ惑っていた。
彼の腕からはぼたぼたと垂れる血液。
あんなに出血してちゃどこまで行っても僕の索敵範囲内だ。
月明かりに照らされ明るいはずの廊下は、僕のためだけに影をかける。
彼は僕のシルエットしか捉えることはできないだろう。
ーーまぁ、そろそろ潮時か。
おじさんの悲鳴にも飽きてしまった。
彼に追いつかないよう、わざとゆっくり歩いていた歩調。
もういいか、と体の重心を前方に傾けたその時。
突然、僕と館主の間に小さな少年が入り込む。
僕は走り出そうとした寸前のところで踏み止まった。
僕の足音は誰の耳にも察知できないはず。
だからあの少年も僕のことには気づいていないはずだ。
その少年が何をするのかと不思議に思ったその瞬間。
少年の手に握られていたのは弓矢だった。
しゃんとした背筋に、狂いの無い射線。
まるで矢の道を示すかのように延びる光。
ーーあ、あたる。
狼としての本能で悟った。
刹那、
完璧な姿勢から放たれたその一射は、一本の美しい線を描くように力強くかつ優雅に
そして
確実に
主人の脳幹を貫いた。
その間、少年の周りだけは時が止まったように静かだった。
撃ち抜いた瞬間に時が、空気が動き始める。
逃げようと背後を振り返った少年と合うはずのない目が合った、気がした。
ーーしかし、まずいな、
館の兵たちが勘づき出した。
僕にしか聞こえないほどの距離からではあるが、
1、2、3、、、
ざっと20人。武装した男たちが慌ただしく騒いでいる。
影に紛れながら、少年を傍に拾いあげ階段の下へと身を潜ませた。
突然のことに驚き、抑える手から逃れようと必死に踠く少年。
僕は彼にだけ姿を現し、静かにするようにジェスチャーしてみせる。
目の前にいる存在の正体に気づいた少年は、目を見開きながらコクコクと頷いて見せた。
br 「いい子だ。」
口の動きでそう伝えれば、少しだけ頬を赤らめて目線を逸らしてしまった。
そんな姿に揶揄いたい欲を抑えながら聞き耳をたてる。
段々遠ざかっていく音を確認すれば彼の口元を解放してやった。
力加減が分からず少々抑えすぎただろうか。
少年は勢いよく酸素を取り込み息を整えようと必死になっていた。
そんな呼吸のまま彼が口を開く。
shk 「っ..はぁ、…はぁ、あ、あなたはもしかして…、」
「“人狼”様ですか、?」
br 「…うん。そういう君は…“共犯者”だよね?」
そう言って微笑んで見せれば強張っていた表情が、年相応にぱっと明るくなる。
無邪気にも頭をブンブンと縦に振る様子は、些か今の状況とはミスマッチに感じた。
br 「君の弓は綺麗だね。気配を消す能力も上々だ。……でも、僕の射線に入ってくるのは、共犯者としてはいただけないなぁ?」
意地悪するよにそう壁際に詰め寄ってみる。
すると話を聞いていたのか、そうじゃないのか彼はこう言った。
shk 「お、おれが!…この街の人間を全員、根絶やしにしてあげる。貴方のために…!」
br 「ふーん、根絶やし…ねぇ。てことは、君も死ぬことになるんじゃない?君もこの街の人間でしょ?」
大体の共犯者はこれで怖気付き、どうか己の命だけはと自らの無事を乞う。
だが少年は何故か、再び顔を赤くさせた。
shk 「貴方が、それを望むなら。おれは喜んで受け入れるよ。…あっ、でもわがままを言うなら」
「貴方に喰べられたい…なぁ。」
まるで恋をする乙女のように、赤らんだ顔を隠してしまう。
ーー面白いなぁ、この子。
久々に狩り以外で高鳴った鼓動。
これからを想像するだけでこんなにもワクワクするのはいつ振りだろうか。
br 「そんなこと言う子初めてだ。…ねぇ、」
shk 「…?」
br 「…名前、なんて言うの?」
shk 「、!シ、シャークん‼︎です‼︎」
br 「シャークん。…シャークんかぁ。僕はブルーク。」
shk 「ぶるーく、さま…?」
br 「ぶるーくでいいよん。これからよろしくね、シャークん。」
これからこの子とどんな狩りが出来るだろうか。
彼とならなんだって、
ゲームのように楽しめそうだ。
あとがき
初めまして、礼碧と申します。
はい、短編集ですね。
この人長編の息抜きとほざきながら、短編集というおサボり場所をついに作りましたよ。
びっくりですね、ほんと。
まぁそんな話は置いといて。
こちら短編集一作目
📕×🦈 人狼×共犯者
の解説をさせて頂ければなと。
最近人狼RPGを見返して思いついたものです。
設定としましては、
この世界は、人間や人狼、その他の種族も入り混じるファンタジー世界線だと思ってください。
で、ですね。
この世界の人狼は満月の夜が特に他種族を狩りたい、喰べたいという欲が強くなるんです。
これは狼人間の特徴から引っ張ってますね。
(個人的に人狼と狼人間は別物だと認識しているのですが、今回は例外ということで。)
人狼は月が満ちるまでのおおよそ30日間のらりくらりしながら、満月の夜に襲撃するターゲットを探します。
このお話のbrさんはまさに人狼としての欲発散中と言ったところでしょうか。
そしてshkさんのような共犯者についてですね。
共犯者は必ず、いつか人狼が襲う村や街に生まれるとされています。
生まれたからと言って、いつ襲われるかは分かりません。
さらに人狼RPGの設定に則って、周りの人間が共犯者を共犯者だと認識することはできません。
では、何が共犯者を共犯者たらしめるのかというと。
共犯者として生まれてきた子は、生まれつき狼や月に特別な感情を抱きます。
まぁ生まれながらにして人狼の眷属的な、信徒的なものだと思ってください。
この、共犯者が抱く人狼に対する“想いの強さ”みたいなのはですね、その子の生い立ちが関わってきます。
共犯者という役を授かった子供は、皆等しく何らかの耐え難い境遇に晒されてしまいます。
この境遇に抗おうとすることがトリガーになり、共犯者としての使命に結びつくという感じです。
shkさんの人狼への心酔具合を見ると、それは酷い扱いを受けていたのでしょうね(他人事)。
それほど心酔することは稀なのでbrさんの興味も惹きつけられるといった感じ。
それと文章中の補足点で言うと、館主やshkさんが中々brさんの正体、実体を認識、観測できなかったのは透明感ポーションを表現したかったからですね。
ここでは人狼特有の固有スキルのように思って頂ければ飲み込みやすいかなと思います。
shkさんといえば素晴らしい弓の使い手でございますので、初対面のshkさんの射に見惚れるbrさんの構図は容易に想像ができますね。
あとは何でしょう、単純にshkさんに「貴方に喰べられたい」といったニュアンスの発言をさせたかったみたいなところはありますね。
この物語の続きを考えるなら、館を後にした2人が生活を共にするんですよね。
その時点でbrさんはshkさんを喰べる気なんて毛頭なくてしっかりお世話するんだけど、
shkさんはいつ喰べてもらえるんだろうってしばらく考えてたりして。
耐えきれずに聞くんです。
shk 「あの…、」
br 「んー…?」
shk 「いつ、おれは喰べられるの…?」
br 「んー、…君が大きくなったら、かなぁ〜。
ほら!そしたら喰べられるところが増えるでしょ?」
shk 「たしかに、!おれ、大っきくなって美味しくなるね!」
br 「うんー、楽しみにしてる😊」
数年後…
br 「シャークん〜?いつまで経っても小さいから僕、味見しかできないよ〜?w」
shk 「っ…うっせ..ぇ、///♡」
といった感じで、違う意味で食べられちゃうみたいな未来があったりなかったり。
(因みに人狼は長寿なのでちびっ子shk少年が青年になることぐらい余裕で待てちゃうんですよね。)
こんな感じでしょうか。
あとがきになってよく回る口ですね。
ほんとに長々と…
吐き出したいだけ吐き出した感のある、
まとまりの無いあとがきにはなってしまいましたが
ここまで読んでいただきありがとうございました。
解説の方で世界観を掴んでからもう一度読むと
更にイメージしやすいかなと思いますので
何度も楽しんでいただけると嬉しいでございます。
あの、…長編の方も頑張りますので、
何卒見守って頂ければ幸いです。
それではまた🙇
追伸
フォロワー様100人ありがとうございます🙇
たくさんの方に自分の想像したものを見てもらえるということが、これほど嬉しいものとは思いませんでした。
これからもどうぞよろしくお願いします😊
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