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白玉くん
67
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ことみ
74
7月7日(火)
目覚ましの音で、こさめは目を覚ました。
こさめ「ふわぁ……」
まだ完全に開かない目で天井を見つめる。
朝は来ているのに、体だけが置いていかれているような感覚だった。
こさめ「学校行きたくないなぁ……」
そう思った瞬間、自分で少し驚いた。
いつもなら、そんなことは思わない。
(大丈夫、大丈夫)
すぐに元に戻るはずだった。
ちょっと昨日、変なことがあっただけ。
なつくんがちょっと怒っただけ。
それだけのはず。
そう考えたら、お腹が鳴った。
現実はいつも通りだった。
階段を降りると、台所の音が聞こえる。
こさめ「おはよう」
「こさめ、おはよう。今日も元気ね」
こさめ「えへへ、まぁね!」
その声に、少しだけ安心する。
まだ“普通の朝”はここにあった。
「今日の朝ごはんはフレンチトーストよ」
こさめ「やったー!こさ、お母さんのフレンチトースト大好き!」
「よかったわね」
パンの甘い匂いが広がる。
スプーンの音と一緒に、朝がゆっくり進んでいく。
こさめ「ごちそうさまでした!」
「もうこんな時間!行ってきます!!」
玄関のドアが開く。
「いってらっしゃい」
外の空気は少し冷たかった。
でも、それもいつも通りだった。
こさめ「あ」
視線の先に、捺がいた。
一瞬だけ目が合う。
すぐに逸らされる。
(まあ、そうだよね)
さすがに一昨日のことだしね
それくらいは分かる。
こさめ「気にしない、気にしない!」
小さく口の中で繰り返す。
走って教室へ向かう。
◇◇◇
こさめ「危なっ!遅刻ギリギリ!!」
教室に入った瞬間、空気が変わる。
音が一瞬だけ落ちる。
会話が途切れる。
(__あれ?)
何も言われていないのに、何かが違う。
こさめは気づかないふりをして席へ向かう。
捺といるまは、いつも通り隣にいる。
(みんな、いつも通り)
そう思おうとする。
でも“こさめ以外”がいつも通りだった。
◇◇◇
気づけば授業は終わっていた。
時間が飛んでいたような感覚。
こさめ「もう終わり?」
そんな軽さでこさめは立ち上がる
そのときだった。
背後から声が落ちる。
いるま「おい」
空気が一気に変わる。
教室のざわめきが止まる。
捺といるまが、こさめの方へ来る。
捺の声は低かった。
捺「今日、放課後話あるんだけど」
「このあと時間あるか?」
こさめは少しだけ笑う。
こさめ「別に暇だけど、なに~?どしたの?」
できるだけ軽く、いつも通りに。
その“いつも通り”が、捺の中の何かを刺激した。
捺「お前さ」
声が少し上がる。
捺「マジで調子乗んなよ」
教室が少しざわめく。
誰も目をそらせない。
捺「そういうとこがムカつくんだよ」
こさめは、まだ理解していない。
ただ驚いているだけ。
いるま「なつ、落ち着け」
いるまが間に入る。
そしてこさめにしか聞こえない声で言う。
いるま「とりあえず、今日放課後××公園な」
こさめ「う、うん……わかった」
こさめはうなずく。
教室の誰もが見ているのに、誰も止めない。
ただ見ているだけ。
(なんか、不安だな)
こさめの胸の奥に、初めて小さな違和感が落ちた。
◇◇◇
夕方の公園は、やけに静かだった。
教室のざわめきとは違う、音のない空間。
風の音だけが、妙に大きく感じる。
こさめはその場に立っていた。
捺といるまも、少し離れて立っている。
いるま「ここでいいよな」
いるまが言う。
なつは何も答えない。
ただ、こさめを見ている。
その視線が、朝までのものとは違っていた。
こさめ「ねえ、話ってなに?」
こさめが少し笑う。
不安を隠すための笑顔だった。
一瞬の沈黙。
次の瞬間だった。
捺が一歩踏み出す。
言葉より先に、距離が詰まる。
捺「お前さ」
低い声。
捺「ほんとムカつくんだよ」
こさめの表情が固まる。
こさめ「え……?」
答えは返ってこない。
いるまが横で一瞬だけ止まる。
けど、止めない。
こさめは後ずさろうとする。
けれど、逃げる前に距離がなくなる。
そのあと起きたことは、はっきりとした“言葉”にはならなかった。
ただ、繰り返されるのは一方的な動きと、止める声のない時間だった。
こさめは何度も息を詰まる。
呼吸がうまくできない瞬間が増えていく。
押される。
地面が近づく。
息が詰まる。
視界が揺れる。
こさめ「やめて……」
ようやく出た声は、小さすぎた。
でも、それすら届かない。
いるまの声が途中で一度だけ入る。
いるま「なつ、もうやめろ」
けれど、その声には“止める力”が足りなかった。
なつは止まらない。
捺「どうせまた被害者ぶるんだろ」
「お前は普通があるからいいよな」
感情のままではなく、何かが壊れて動いているようだった。
こさめは地面に崩れる。
痛みよりも先に、理解が追いつかない。
(なんで?)
(なんでこんなことに?)
答えは返ってこない。
しばらくして、空気だけが戻る。
まるで何事もなかったように。
捺は立ったまま、息を吐く。
いるまは視線を落としている。
こさめだけが、その場に残される。
こさめ「……なんで」
小さすぎる声。
誰にも届かない。
蝉の声だけが公園を揺らす
そして、いるまが静かに言う。
いるま「……もう行くぞ」
その一言で、終わっていない時間が無理やり切り取られる。
こさめは動けないまま、二人の背中を見ている。
その背中は、もう“友達”ではなかった。
next→♥200
コメント
3件
♡200にしといたー! どっちも悪い訳じゃない。でも、確実に傷つけてる。友情って脆いからね。何かあればすぐ壊れる。これまでがなかった事のようになる。 ここでは、あんまならないでほしい。 でも、それぞれの想いがすれ違ってる。 辛いねぇ
うわ……すごく重い空気の話だったね。 タイトルの「今日も」がもう切ない。朝はフレンチトーストの匂いで始まったのに、学校では周りの空気が変わってて、放課後にはあそこまで行っちゃう。なつくんの「調子乗んなよ」は、前回からの積み重ねが爆発した感じがした。こさめが「気にしない」って自分に言い聞かせてるのが余計に胸にくるよ。 いるまが止めようとしたけど、その力が足りなかったのもリアルだった。最後の「もう“友達”ではなかった」って一文が重すぎる。ただの言葉にできない暴力が描かれてて、読んでるこっちの息も詰まった。こさめの「なんで?」が誰にも届かないまま終わるのが辛いな……。