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次の日も、私は教室の一番後ろの席にいた。
ノートの隅に小さく、”す”の文字だけを書いて、ペンを止める。
その瞬間、
「おーい、るな」
あの声が背中から降ってきた。
五条先生だった。
いつもの軽い調子。
けれど、その笑顔の奥に少しだけ、疲れたような影が見えた。
「最近、静かだね。 ちゃんと寝てる?」
「……はい」
小さく答える。目を合わせるのが怖い。
「そっか、偉いね。」
そう言って、先生は笑った。
その笑顔が、まるで太陽みたいで、
私は一瞬だけ、目を細めた。
この距離が、永遠に続けばいいのに。
けれど、チャイムの音がそれを壊す。
五条先生は手を振って教室を出ていった。
白いシャツの袖が、光の中で揺れる。
残された私は、
机に顔を伏せて、微かに微笑んだ。
「……ありがとう」
誰にも聞こえない声。
届かない言葉。