テラーノベル
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諸々の説明を聞き、少女は主としてパレスに留まることを決めた。
少女は天涯孤独で引き取ってくれた家では厄介者扱いされていたため、彼女を必要としてくれている執事達の役に立てるなら喜んで自分のの世界を捨てることにしたのだ。
少女は一旦自分の荷物を纏めて遺書を書くために自分に世界に戻った。
狭くて暗い部屋とも今日限りでお別れだ。
ガタつく折りたたみのテーブルに座ってノートを破いたものに遺書を書いていく。
簡単にこの家の人達に迷惑をかけるのが心苦しくなった、もう両親のもとに行きたい、ということを書いて畳んで置いておいた。
殆ど無い私物をカバンに詰め、両親の形見だけは大切に服にくるんで入れた。
もうこの世界に思い残すことはない。
さようなら、と小さく呟いて荷物を持ったまま指輪を嵌めた。
「おかえりなさいませ、主様」
『ただいま、ベリアン』
ベリアンに荷物を渡し、主は食堂で待ってもらっていた執事達のもとに向かった。
『今日からここにお世話になります。主として精一杯頑張るのでよろしくお願いします』
そう言って頭を下げると拍手と歓声が上がり、ラトとラムリが飛びついてきた。
「主様!ずっとここにいてくれるの!?」
「あちらの世界に戻らないのですか?」
『うん、ずっとここに居るよ。もうあっちの世界には戻らないよ』
2人を撫でながらそう言うと、他の執事たちが心配そうに声を掛けてきた。
「よろしいのですか?主様の負担にならない程度に二重生活をして頂いても大丈夫ですよ?」
『ううん、あっちに世界にはもう思い残しは無いから・・・戻りません』
「・・・分かりました、主様がそう仰るなら・・・」
執事たちはきっと事情があるのだろう、とあれこれ聞きたい気持ちを抑えてそう言うだけに留めた。
新しい主が現れたが少々特殊なケースであるため、フィンレイにどうするか一度挨拶ついでに聞きに行くことになった。
主はグロバナー家用のローブを急遽作ってもらい、室内でも脱がないよう厳命された。
馬車に揺られながら交渉係だというルカスとナックがグロバナー家について教えてくれた。
今から会いに行くのはこの国で最も力のある貴族でこの世界の4大貴族と呼ばれていること、当主であるフィンレイは悪魔執事に良くしてくれているということ、貴族の中にはグロバナー家をよく思っていない者や悪魔執事を嫌っている者も居ること、などなど・・・
主はそういった権力などにはまったく馴染みがなかったためイマイチその話を理解できていなかったが、グロバナー家に到着して何となく理解できた。
豪華ですごいと思っていたデビルズパレスの何倍も大きな屋敷と庭、通された会議室だけでパレスの1フロア分位ある。
ただただ圧倒されている主にフィンレイは面白そうに声を掛けた。
「どうかね?我が屋敷は」
『あ、その・・・すごいです、全部が大きくて立派で。びっくりしました』
「そうかそうか・・・新しい主は随分庶民的な方だね?」
『・・・はぁ・・・』
馬鹿にされた気もするが、とりあえず悪印象を抱かれた訳では無いようなので安心した。
「・・・それで、新しい主はどう特殊なのかな?」
フィンレイはルカスに早速本題を切り込んだ。
「はい、実際に見ていただいたほうが早いと思われますので・・・
主様、ローブを脱いでいただけますか?」
『は、はい・・・』
主はローブを脱いでルカスに渡した。
「・・・!まさか・・・」
「はい、主様は人間でございます」
「人間!?まさかこんな間近で見ることができるとは・・・
なるほど、これは異例中の異例だな」
「はい、そのとおりでございます。いかが致しましょうか?」
「・・・そうだな、主が人間だと知られれば誘拐されかねん・・・
そうだ、主よ。私のペットになる気はないか?」
『ペットぉ!?私がですか!?』
「ああ、貴族の中には人間を飼っている者も少しだが居る。
もしペットになるのであれば君には私という後ろ盾ができるし、私は人間を飼っている珍しい貴族として名も知れる・・・悪いことは無いと思うが」
『でも、そしたら執事たちはどうなるのでしょうか?
ペットに従えられている従者なんて・・・』
主は自分はどう扱われても文句はなかった。しかし、自分を必要として主と慕ってくれている執事たちへの風当たりが強くなるのは避けたいのだ。
「主様・・・どうか私達のことはお気になさらず」
「どうか、主様の安全を優先してください」
『でも・・・』
主はナックとルカスにそう言われても、どうしても自分のせいで執事達に迷惑をかけてしまうことが嫌だった。
「それは問題ない。執事達は私のペットの世話をさせていることにする。
勿論、主がペットになってくれると言うなら主人として食費や生活費も出す」
『・・・わかりました。貴方のペットになります・・・』
主はぎゅっと拳を握りしめてそう言った。
「そうか!ではフルーレに採寸をしてもらって、私の所有物という印の首輪を贈らせてもらおう。
よろしく頼むよ、おっと、君の名前を聞いていなかったね?」
『・・・🌸と申します』
「そうか、では🌸。これからよろしく頼むよ」
『はい、フィンレイ様・・・』
帰りの馬車の中で主はローブの裾を握りしめてルカスとナックに謝った。
『ごめんね、私がもっとちゃんと出来てたら・・・』
「いいえ!主様が謝ることなんて何一つありません!」
『でも、私がペットくらいの価値しか無いから・・・ペットの世話係だなんて言われてまた酷い目に遭ったりするかも知れないんでしょ・・・?』
ルカスは悪魔執事が街人や貴族たちにもよく思われていないことを教えすぎたと後悔した。
主がこんなに気に病むとは思っていなかったのだ。
「主様、主様はどうか何も気にせず堂々としていてください。フィンレイ様のペットであれば、そのへんの貴族たちより立場は上なのですよ?」
ナックが自慢のナック節で主を褒め称え、貴族たちより立場が上なことを教えて安心させた。
『・・・ありがとう、ナック』
主は恥ずかしそうにそう言うと、横に座っているナックの手を取ってきゅっと握った。
『・・・肉球・・・ぷにぷに・・・』
「・・・主様、程々にしてくださると・・・」
『んー・・・』
主はパレスに到着するまでナックの肉球を堪能したのだった。
コメント
1件
よかった…!「もうあっちの世界には戻らない」って決めた主様が、自分のことより執事たちを心配するところ、すごく胸にきました。ペットになる選択も、彼女なりに納得した上での決断で、フィンレイ様の思惑と交差する感じが面白い。ナックの肉球ぷにぷにで締める緩急も好きです。続きが気になる!