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そのころフェリックスは劇場の2階席にいた。2階にはトイレ、音響の部屋、
そしていくつかの照明器具が配置されている。ふと壁を確認すると、
不自然な傷跡を発見した。まるで何か鋭利なものが刺さったような痕跡だ。
「この傷は一体何だろう?」フェリックスは首をかしげた。
その後、リハーサル中にロイズが使用したトイレを調査することにした。
特に変わった様子はないが、一番奥の清掃用具入れを開けると、
そこには布に隠されたボウガンが置いてあった。
「これでロープを狙って切り落としたのか?」フェリックスは驚きの表情を浮かべた。
ちょうどその時、2階にゲンが入ってきた。「何かあったのか?」とゲンが問いかける。
フェリックスは布をめくりながら答えた。「はい、ここにボウガンが隠されていました。」
ゲンの顔色が変わった。「何?ボウガンだと?」
フェリックスは眉をひそめた。「サーカスで使用する物ですか?」
ゲンは頷きながら答えた。
「そうだ、このボウガンはロイズが使用するものだ。まさか本当にロイズが...」
フェリックスは考えこむ。
「しかし、セリアさんが転落した時は、ロイズは1階にいました。
どのように狙ったのでしょうか?」
ゲンは困惑した表情を浮かべた。
「それは...わからない。」
フェリックスはボーガンをじっくりと観察しながらさらに尋ねた。
「このボウガンはロイズ以外は使えないんでしょうか?」
ゲンは少し考え込んでから答えた。
「いや...他の団員も使えるはずだ。」
フェリックスはボウガンを手に取り、細かい部分まで注意深く見つめた。その時、
あることに気づいた。ボウガンには微細な傷と、ベタベタした液体がついていた
それが何かを示しているように見えた。
フェリックスは再びあの壁の前に立った。その傷の形状と位置から
何か重要な手がかりが隠されているに違いないと感じていた。
「この傷…」と、彼は傷の対角線を目で追い、
その延長線上を見る。あそこから、ロープを狙うことができるかもしれない
「ボウガンであの場所からロープを狙ったのか?」
フェリックスは鋭い目つきで壁の傷を観察していた。
その傷は一見ボーガンの矢でできたものに見えたが、
何かがおかしい。ゲンはフェリックスの様子を見て
「何か気になるのか?」
フェリックスは傷を見ながら
「これはボーガンの矢でできたものではなく、ナイフでできた傷ですね。」
ゲンが驚いた表情で問いかける。
「どういうことだ?」
フェリックスは傷の形状と深さを指差しながら説明を始めた。
「おそらく、誰かがボウガンを改造してナイフを撃てるようにしたのかもしれません。」
ゲンは納得したように「それでロープを切ったんだな。」
フェリックスは静かに頷いた。
「状況から判断するとそうなります。」
「しかし、みんなにはアリバイがあるぞ。」
フェリックスは一瞬の沈黙の後、鋭い眼差しで言葉を続けた。
「いいえ、アリバイのない猫がいます。この劇場内にいて、誰にも見られていない猫が。」
ゲンの顔色が変わる。「それは...」
フェリックスはじっとゲンを見つめ、
「それは、あなたと、エマさんです」と告げた。
「まさか俺が疑われているのか?」
「これはただの可能性です。まだ確証はありません。」
フェリックスはボウガンを指差し、
「この矢を引っ張るところ、何かべたべたした液体のようなものがついています」と言った。
ゲンが興味深げに覗き込む。「それは何だ?」
「まだわかりませんが、これが引き金の役割をして、
時間差でナイフが撃てる仕組みになっていたかもしれません。」
ゲンは考え込みながら言った。「ということは…」
フェリックスは深く息を吸い込み、結論を述べた。
「犯猫は罠を仕掛け、
あたかも自分にはアリバイがあるように装うことができたのです。」
劇場内の静けさが一層深まり、二匹の間に緊張が走った。
ゲンはボウガンを見ながら、「つまり、まだここにいた全員が疑わしいということか...」
フェリックス「はい」
真実はまだ霧の中に隠れていたが、フェリックスはその霧を晴らすための
新たな手がかりを掴んだのだった。
2階に上がってきたジョセフは、少し緊張した様子でフェリックスの元に近づいた。
フェリックスは彼に向かってボーガンを差し出し、
「これでロープを狙ったと思われますが、このボーガンを鑑識に出してもらえませんか?」と頼んだ。
ジョセフは困惑した表情を浮かべ、「あ、あぁ...」とうなずいた。
彼の反応に何かを感じ取ったフェリックスは、鋭い目で彼を見つめた。「何か団長に言われましたね」
「何を言っているんだ、何も取引などしていないぞ!」
フェリックスは一歩も引かずに問い詰めた。「何と取引したのですか?」
ジョセフは目を泳がせながら「な、何もないって!!」と嘘をつき、
しぶしぶボーガンを手に取った。その様子は明らかに怪しげで、
フェリックスの疑念をさらに深めるものだった。
フェリックスは冷静に「私はもう少し調べたいのでこれで」と言い、その場を後にした。
しかし、去り際に振り返り、「これは猫殺事件です。
猫の命が奪われているということを忘れないでください」と静かに言い放った。
ジョセフはその言葉に動揺しながら、「わ、わかってる!」と答えたが、
その声には確信が欠けていた。