コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
フェリックスは音響の部屋へと向かった。
部屋の中は暗く、様々な機器が並んでいる。
フェリックスはゲンに近づき、「音響の他に、ここでは何を行っていますか?」と尋ねた。
ゲンは一瞬考え、「ここは幕や滑車を上げ下げできるんだ」と答えた。
フェリックスはうなずきながら、「確か、ロープは滑車に取り付けていましたね」と確認する。
滑車を動かすスイッチを探すフェリックスを見て、ゲンは制止するように手を挙げた。
「ああ、触らないでくれ。本番前で安全確認中だ。」
フェリックスは若干の驚きを見せつつも微笑み、「そうですか。」と返事をした。
そして、少し和やかな表情を浮かべて続けた。「すみません。どう動かすのか興味が湧いてしまって、
サーカスの舞台の裏側なんて見る機会がありませんから」
その言葉にゲンは微笑み返し、「これも皆がスムーズに進むためさ。問題なく進行できるように、
最善を尽くしているんだ。」と答える
「なるほど、では照明もここで操作できるんですか?」とフェリックスは続けて聞いた。
ゲンは照明用のボタンを指さし、「小さい照明は調整できるが、大きいのはエマが担当している」と答えた。
フェリックスは納得したようにうなずき、「そうですか」と短く返事をした。
ゲンは疑念の表情を浮かべ、「なあ、オレとエマを疑っているのか?
確かに2階には俺とエマだけだったが、時間差でボウガンが発射するなら、他の猫でもできるだろ。
それに、俺はエマが照明を操作しているのをちゃんと見ているんだぞ」と言い返した。
「エマさんが照明を操作しているのを見たんですね。」フェリックスは静かに尋ねた。
ゲンは窓の外を見つめたまま答えた。「ああ、あそこからエマが照明を操作していた。」
フェリックスは歩み寄り、ゲンの隣に立って窓の外を見た。外には舞台が広がり、照明の位置がはっきりと見える。
「なるほど、ここから照明が見えますね。」フェリックスは納得したように頷いた。
フェリックスは冷静に、「ではエマさんとトイレに来たロイズに、何か変わった動きはありませんでした?」と尋ねた。
ゲンは首を振り、「何もないさ、いつもの通りのリハーサルだった」と答えた。
フェリックスは再度うなずき、「そうですか」とだけ言い残し、部屋を後にした。
フェリックスは猛獣小屋にやってきた。そこではポテトとワトリーが猫じゃらし的なもので必死に遊んでいる様子を見て
フェリックスは少しあきれたように言った。「ワトリー、そろそろ...」
「あ、フェリックス、何かわかったのか?」
「はい、犯人はボウガンを改造してロープを狙ったようです」
ワトリーは驚いて、「ボウガンで!?」と声を上げた。
「それは興味深い話です!」
「ポテト、ジョセフにボウガンの鑑識を頼んだので、
何かあれば教えてください」
「わかりました!」
フェリックスはエマに向き直り、「ところで、エマさん、ちょっとお話を聞きたいのですが」
「はい、どうぞ」
「事件のあった時間、照明を操作していたあなたの位置からゲンさんは見えましたか?」
「はい、見えました」
「そうですか...」
エマは不思議そうに、「それが何か?」と尋ねた。
「はい、ゲンさんもあなたを見たと言っていますが、
大きな照明を扱っているあなたを、正面にいるゲンさんがはっきり確認できたでしょうか?
光の反射によってあなたがそこにいると勘違いした可能性があります」
「つまり、光の反射を利用していつも通りそこにいると見せかけ、私がボウガンでロープを切ったと?」
「いいえ、ボウガンには細工がされていました。
ロープを狙える位置にセットし、その後、ご自身の仕事に戻れば、それで準備が整うというわけです。」
「だったら、2階のトイレに来たロイズも可能のはずです」
「しかし、ロイズの可能性は低いと考えています。もしロイズがボウガンを犯行に使ったなら、
トイレに行く振りをして、ロープを狙える位置にセットし、その後、1階へ下りました。
その直後、セリアさんが転落、では、ロイズはいつ、ボウガンをトイレに隠したのでしょうか。
そして、まだロープを切ったナイフも見つかっていません」
エマは目を細めてフェリックスを見つめた。「そう、だから私が疑われているんですね?」
フェリックスは冷静に「いいえ、まだ確証はありません。
犯行にボウガンを使うという点が少し引っかかるのです。」
「引っかかる?」エマは首をかしげた。
「はい。1階のトイレは使用中止でした。そして2階のトイレにはボウガンが隠されていて
しかもそれはロイズのものでした。犯人はロイズに罪をかぶせようとしたのではないでしょうか?
トイレにボウガンを隠すのはリスクが高く、すぐにばれてしまいます。」
「隠す時間がなかったのでは?」
フェリックスは考え込むように頷いた。「確かに、慌てて隠したのかもしれません。
しかし、ナイフはどうでしょうか?劇場内の暗い中で撃ったナイフを探す時間はなかったはずですが
犯人はナイフを見つけ、隠したか持って逃げています」
エマはため息をつき、小さく首を振った。「私にはわからないわ。」
「そうですか...」
「ところで、亡くなったセリアさんですが、どういう方でした?」
エマは一瞬目を伏せ、思い出すように口を開いた。
「演技や技術はとても素晴らしいパフォーマーでした。
見た目も美しく、観客は彼女を見て熱狂していました。その才能は誰もが憧れる、
まさにスターそのものでした。」
フェリックスはその言葉にうなずきながら、
「あなたににとってはどうですか?」
「私に?そうですね。とてもプライドが高い方で、
ほとんど私やカオリには話しかけることはありませんでしたが
動物が好きでよくここに来ていました。本当はやさしい方なんです。」
「そうですか、マリーナさんが言っていたロイズを束縛していた、というのはどう思われますか?」
エマはため息をつき、
「プライドが高い方ですから、他のメスに取られるなんて許せなかったと思います。
ロイズはかなりモテますから。」
フェリックスは少し考え込んだ後、
「同じ団員に手を出したことはありますか?たとえば、マリーナさんやあなたに。」
エマは即座に首を振った。「ロイズが私を口説くなんてありえないわ。
私のことを雑用係としか見てませんから。実はマリーナは以前、ロイズと恋猫関係でした。
ロイズがセリアに気が向くとあっさり別れたようですが、内心はどうだったのか分かりません。」
フェリックスはエマの答えに納得し、「わかりました。」
「もういいかしら?調教の時間なの」
フェリックスは「はい」と答えたが、エマが行こうとした時に再び声をかけた。「あともう一つ、」
エマは振り返り、「なにかしら?」と尋ねた。
「あなたの場所からロイズが見えた時、何か変わった様子はありませんでした?」
エマは少し考えた後、「変わった様子?...そうね、トイレから出てきて
走って1階席に降りていったわ」
フェリックスは驚き、「走っていた?慌てていたということですか?」
「さあ、その後は見てないのでわかりません」
フェリックスは納得し、「わかりました。ありがとうございます」と言ってエマを見送る。
ロイズの行動が気になる。次の手がかりを探るため、ロイズを訪ねることにした。