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ざわ ざわ
ゴー……ン ゴー……ン
木々がざわめいている。遠く、遠くのどこかで正午の鐘がなっている
早く行かなきゃ。鐘がなったということは、そろそろあいつがやってくる。俺が迎えに行ってやらなきゃな。
ジワ ジワ ザワザワ ガサ、ガサ
「はっ、は」
雨はとうに止んでいて、薄暗いこの森の中まで陽の光が届いていた。木漏れ日が体を突き刺しているのに、雨が降ったあと特有のまとわりつくような気持ち悪さは残っていた。 風が吹いているのに、俺は暑いままだった。それでも、早く行かなきゃ
急げ 急げ
「ねぇ、遊ぼうよ」
「…っは?」
「今、今ね、兄弟ごっこやってるの」
「でも誰が弟なのかとか、何も決まらないの 」
「だから鬼ごっこできめたいんだけど、いつもと同じはつまらないから」
「「一緒にやろうよ」」
「……なんなんだ、いきなり」
「俺は今急いでいるんだ。だから今は無理なんだよ。」
「でもでも、少しならいいでしょう?」
「遊ぼ、遊ぼっ」
ヒュー 、 ヒュッ
「うるさいな、後でやればいいだろ」
「じゃああとならやってくれるんだ!」
「えっ」
「、いや あとでもダメだ」
「なんで」「なんで」
「言ったろ、俺には用事があるし、このとおり急いでるんだよ」
「じゃあじゃあっ用事が終わったあとならいいでしょっ?」
「だからダメなんだって」
「なんで、暇になってるなら何やってもいいじゃん!」
ビュー 、ヒュッ ヒュー、
ざわ ざわ
「俺は、ちゃんとした用事は無いけどやりたいことはあんだよ」
「ケチ!」
「いいじゃんやっても!1回だけだよ!」
「それでも、だ」
「やろうよ!!」
「ねぇっやろうよ!」「ねぇ!」
「ねぇっ、ねッ別にいいじゃん!」
ビュオッ!!!!
「ッ、おっと」
ヒュー、ヒューとだけ吹いていると思えば、随分と強い風がいきなり吹き荒れた
つい目を瞑り、風が治まった頃に目を開けてみれば先程までの風が嘘のように静まっていた。ふと周りを見れば、足元の近くに何かある
「…?」
見れば、随分と綺麗な花だった。先程の強風でここまで来たのだろうか。にしては見覚えがない
まじまじと見ようと手を伸ばす
ゴーー…ン ゴー…ン
近くで正午の鐘がなる
「!」
そうだった、俺は急いでいるんだ。
この正午の鐘がなった後に、フランスは来るんだから。早く、行かなきゃ
ザッ、ザッ、ザッ
出来るだけ早く、でも疲れないように、道を違わないように
ヒュー ヒュー チカッ、チカ
背後で風の音がした。光がずっと俺を照らしている。目が眩みそうだ。
ジメ 、ジメ
森は薄暗く、ただ雨の匂いが体の中を突き抜ける。雨上がりの気持ち悪さは残っていなかった。
サワ、サワ
風は、頬を掠め体全体を優しく触る
ヒュー
俺はそれなりに走った頃、ふと後ろが気になり立ち止まった。森は薄暗く、こんなに明るい陽ですらも森を照らすランタン足り得なかったのか、木漏れ日のひとつもなかった。ただ、ここが入口近くだからか、足元は随分と明るいままだった。
「…ふぅー…よし」
さぁ、あともう少しだ。早くフランスの元に迎えに行ってやろう。まだまだ紹介できてところがこの土地にはあるんだから。
俺は街の方を見据え、走り出して駆けて行った
ヒュー
ヒュー
木々は、足を踏み入れたその時から静かなままだった