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警察署を出た帰り道、俺は傘も差さずに歩いた。
頭の中で、妹の言葉が何度も繰り返される。
――「彼の部屋に行ったけど、殺してない。」
妹が通っていた大学のキャンパスに向かい、被害者・高城涼について調べ始めた。
彼は文学部の学生で、サークルでは中心的存在だったという。成績も優秀で、誰にでも愛想がよかった。
だが、話を聞いた数人の学生が同じように口を濁した。
「高城さん、最近トラブルあったみたいで……」
「誰と?」
「白石さんと……それに、もう一人」
その“もう一人”の名を誰も言わなかった。だが、一様に視線を逸らす。
俺はその空気の中に、確かな“何か”を感じ取っていた。